北朝鮮の15歳3人組「禁断の行為」発覚で生殺しの刑
北朝鮮の経済システムが崩壊した1990年代後半の「苦難の行軍」のころ、人々は勤め先から備品や機械などを盗み出して売払い、そのカネで食べ物を買って餓死を免れた。それを元手にして商売を始め、トンジュ(金主、ニューリッチ)となった人もいる。
だが、当然のことながらこれは犯罪だ。それも単なる窃盗ではなく、刑法91条から100条で定められている国家財産を盗んだ罪に問われる。北朝鮮では最も重い罪のひとつであり、死刑もありうる。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
北部の慈江道(チャガンド)の炭鉱で先月、電線が盗まれる事件が起きた。犯人を捕まえてみると、親孝行の高校生だった。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
逮捕されたのは、前川(チョンチョン)郡にある高級中学校(高校)2年生の生徒3人だ。彼らは夜中の人気のない時間を狙って、地域に複数ある炭鉱に忍び込み、銅製の電線を盗んでいた。しかし8日の深夜、犯行の途中で安全部(警察署)に逮捕された。
3人は炭鉱労働者の子供で、坑道内部の状況をよく知っていた。炭鉱で使われる銅線は厚みがあり、わずか50センチで2万北朝鮮ウォン(約200円)で買い取ってもらえる。
3人は取り調べに対して、次のように供述した。
「電線を売ってかなりの量の食べ物を買った。一部は現金のまま、両親に渡した」
慈江道は7月末の大雨と洪水で大きな被害を受けた。地元当局は8月から、1世帯当たり毎月、1万北朝鮮ウォン(約100円)ずつ災害復旧の費用として徴収している。だが経済難と食糧難に加え、物価も高騰し、庶民の暮らしは非常に苦しくなっている。毎月1万北朝鮮ウォンの負担は非常に重いものだ。
家計のやりくりに苦しむ両親の姿を見た3人は、何とかして助けたいと思って犯行に及んだ。しかし、親を思う心は、炭鉱の操業に大きな悪影響を与えた。一部の作業場では数日間、作業を停止せざるを得なかった。
当局は炭鉱を重要施設として、優先的に電力を供給しているが、電線の切断により電気が止まってしまったのだ。これは重罪に当たる。
「以前にも生活が苦しくて炭鉱の電線を売り払う人がしばしばいて、犯人が銃殺されたこともあった」(情報筋)
3人は15年の労働教化刑の判決が下され、死刑や終身刑は免れた。「まだ15歳で、腹をすかせて犯行に及んだ」(情報筋)という点が酌量されてのことだ。
ただ、北朝鮮の教化所は環境が極めて悪い。看守から暴力を受けたり、充分な栄養が取れなかったりして亡くなる人も少なくない。受刑者は、家族からの食べ物を差し入れてもらい、壁の中での暮らしに耐える。
(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為)
コメ1キロちょっと分の現金が払えないほど追い詰められていた3人の家族に、遠く離れた教化所に通って看守にワイロを渡し、食べ物を差し入れるほどの経済的余裕はないだろう。よほど運がよくなければ、五体満足で出所することは難しい。まさに「生殺しの刑」と言える。
親思いの息子が徐々に死に追いやられるのを、止めることすらできない3人の親の悲しみは計り知れない。