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本塁打トップ10には、かつてのチームメイトが3人並ぶ。イェリッチとオズーナに……スタントンではなく

宇根夏樹ベースボール・ライター
デレク・ディートリック(シンシナティ・レッズ)May 28, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月末までに15本以上のホームランを打った選手は、ア・リーグに8人いて、ナ・リーグは13人に上る。ナ・リーグの上位8人中3人は、2年前までマイアミ・マーリンズでチームメイトだった。

筆者作成
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 1位のクリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)と7位タイのマーセル・オズーナ(セントルイス・カーディナルス)については、先日、「3匹の子豚や「死の秘宝」を手にした3兄弟と同じ!? 外野トリオだった3人の明暗」で書いた。だが、本塁打トップ10に名を連ねる、もう一人の前チームメイトは、ジャンカルロ・スタントン(ニューヨーク・ヤンキース)ではない。ヤンキースはア・リーグの球団だ。しかも、スタントンは3試合しか出場しておらず、シーズン最初のホームランすら打っていない。

 残る一人も、イェリッチとオズーナと同じく、ナ・リーグ中地区の球団でプレーしている。5位タイのデレク・ディートリック(シンシナティ・レッズ)がそうだ。

 スタントンを含む3人は、2017年のオフにマーリンズを去ったが、ディートリックは昨シーズンもマーリンズでプレーした。移籍の経緯も、ディートリックは彼らと異なる。トレードではなく、2018年のオフに40人ロースターから外された(DFA)。ウェーバーの期間中に獲得を申し出る球団はなく、マイナーリーグ降格とFAのうち、ディートリックは後者を選んだ。そして、今年2月にレッズとマイナーリーグ契約を交わした。

 マーリンズを去った直後のホームラン増加という点で、ディートリックはイェリッチと共通する。昨シーズンのイェリッチは36本。これは前年のちょうど倍で、それまでのキャリアハイだった2016年の21本と比べても、15本も多い。今シーズンのディートリックは、前年に記録したキャリアハイの16本をすでに上回る。

 マーリンズ・パークは、ホームランが出にくい球場だ。対照的に、今シーズンからディートリックがホームとしているグレートアメリカン・ボールパークは、ホームランが出やすい。イェリッチがホームとするミラー・パークもそうだが、グレートアメリカン・ボールパークには及ばない。昨シーズン、ディートリックはアウェーで12本のホームランを打ったが、ホーム(マーリンズ・パーク)では4本にとどまった。今シーズンは、ホーム(グレートアメリカン・ボールパーク)で11本、アウェーで6本だ。

 この点からすると、ディートリックのパワーアップは、割り引いて考える必要がある。ただ、今シーズンのディートリックは、打撃のアプローチを変えている。スタットキャストによると、打球の平均角度は前年の15.7度から20.4度へ上がり、フライの割合は24.1%から30.1%に増えた。また、引っ張った打球の割合も39.9→44.1%と推移している。

 どの球団も獲得に動かなかったオフから一転し、この夏はディートリックを欲しがる球団がいくつか現れても、不思議はない。ディートリックの売りは、新たに加わったパワーだけではない。レッズでは、スクーター・ジネットが欠場しているため、二塁手としての出場が多いが、ディートリックは遊撃以外の内野3ポジションと外野両コーナーをこなす。FAになるのは、来シーズンのオフだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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