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「闇営業」とは? 営業コンサルタントが「闇営業」を解説する

横山信弘経営コラムニスト
会社を通さず、裏で仕事を受けることを「闇営業」と呼ぶが(写真:アフロ)

■ 闇営業って何?

「闇営業って何? そんな営業あるんですか?」

あるクライアント企業の営業部長から、こんな質問をいただきました。10名を超えるお笑い芸人が「闇営業」問題で謹慎処分になったというニュースを見たのでしょう。

今年4月、営業職の定義や、「B2B営業」「B2C営業」「案件型営業」「ルート型営業」……など、営業の分類を記した書籍『営業の基本』を出版していますから、私に素朴な質問をぶつけたくなったのだと言います。

私は返答に窮しました。

「闇」が頭にくる言葉は、他にもいくつかあります。

すぐに思い浮かぶのが「闇市場」。非合法的に、商品を取引する市場を指します。

「闇米」という言葉もあります。違法に流通する米のことです。「闇金融」は、出資法に違反するほどの高金利を取る業者のこと。「闇金」とも言われます。

あまり認知されていませんが「闇ビジネス」という言葉もあるようです。闇金融を含め、振り込め詐欺や美人局、悪徳弁護士、キャッチセールスなど、社会的弱者などへの非合法的ビジネスの総称といった感じの言葉でしょうか。

「闇営業って、そんなに悪いことなんですか」

「そうですねえ、よくないでしょう」

今回は、人気のお笑い芸人が関わっていることもあり、同情する声もあがっています。

しかし、言葉だけをとらえると、「闇」が頭にくる言葉はすべて違法なもの。健全な感覚を持っている人なら、生理的に受け付けないビジネスばかりです。

「雇用契約がどうなっていたのか。個別事情はわかりませんが、会社を通さずに商取引を行うのは、よくないでしょうね。ただ、一般的な企業がおこなう『営業』とは、意味合いが違います」

「詳しく説明してもらえませんか」

■ 一般的な「営業」の意味

私は、自著で「営業」という言葉を次のように定義しています。

営業とは、「お客様」の「利益」を支援し、その「正当な対価」をいただく仕事のこと。

したがって営業という仕事は、「(1)お客様」「(2)利益」「(3)正当な対価」の3つの要素に分解できる。

と。

一般企業における「営業」は、誰がお客様で、そのお客様がどこにいて、どのようにお客様と信頼関係を作り、お客様の利益を知って、その利益を支援できる商材を提案し、そして正当な対価をいただくのか――。

この、すべてのプロセスを担っているのが営業職です。

もちろん、お客様の要らないような商品を売りつける行為を「営業」とは呼びません。(そういうことをする営業もいるでしょうが)

■ お笑い芸人の「営業」とは?

いっぽう、お笑い芸人が、お祭りや学校の文化祭、デパートの催し物などに登場し、司会をしたり、芸を見せたりすることも「営業」と呼びます。

テレビや舞台以外の仕事を指します。

ですから、言葉は同じでも、一般企業における「営業」とは、毛色がかなり異なります。ご自身の認知度を高める地道な活動といえば、営業っぽい要素もあるでしょう。しかしギャラが発生するわけですし、一般的な「営業」の仕事とは、ニュアンスが異なります。

「当社には営業が50人いますが、彼らが『闇営業』をすることはない、と考えていいですか」

「はい。今メディアで使われている『闇営業』はできないでしょうね。特殊な人だけができる仕事ですから」

とはいえ、これはお笑い芸人だけが直面することではない、とも言えます。ありがたいことに、私のような人間にも、いろいろなオファーが来ます。取材や出版はもちろん、講演の依頼も多数あります。

「報酬は、会社ですか、個人口座に入れたらいいですか?」

と尋ねられることも多々あります。会社を通さず、私が直接いただいたら「闇営業」したと言われてしまうでしょう。会社に所属している身ですから、当然100%会社を通しています。

■ ビジネスの原理原則

お客様になってくれそうな人や会社を探し、地道にコツコツ接触をつづけることが営業の基本です。しかし、多くの人に知られる存在になると、それほど努力しなくとも、思わぬところから誘惑が舞い込んできます。

とくに今回は、依頼主が「反社会的集団」であったことが問題を大きくしています。

反社会的集団と接点を持ったことが問題なのか。会社を通さずにギャラをもらったことが問題なのか。虚偽の釈明をしたことが問題なのか。脱税を疑われるようなことをしたことが問題なのか。

どの論点を扱うかによって、議論が分かれます。とても複雑な事案です。

いずれにしても、本件を通して我々が学ぶことはひとつ。ラクして儲かることはない、ということでしょう。ビジネスにおける原理原則ですから、気を引き締めていきたいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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