世界唯一の皇帝・天皇陛下と世界のネット通販王・アマゾンCEO、求めるものは同じ(陛下の貴重映像あり)
まずは、下記のURLの映像をご覧になってほしい。
今日「即位の礼」の中心儀式「即位礼正殿の儀」に臨まれる天皇陛下が、2015年11月に行われた、国連の「水と衛生に関する諮問委員会(UNSGAB)」でスピーチされた時の映像だ。当時、日本のテレビニュースでは一部しか流されなかったが、ここでは、陛下の全スピーチをきくことができる。貴重な映像ではないだろうか。
同委員会の名誉総裁として、陛下は、ゆっくりと、はっきりとした口調でスピーチされ、
「UNSGABが2004年に創設されて以来、14億人の人々が改善された飲料水にアクセスできるようになり、12億人の人々が改善された衛生施設にアクセスできるようになりました」
と同委員会の活動成果を報告された。このスピーチの邦訳は宮内庁のサイトで読むことができる。
また、第5回世界水フォーラム(世界の水問題を扱う国際会議)でも、安全な飲料水と基本的な衛生施設を持続的に利用できる環境づくりの重要性を訴えられた。
水問題の研究で世界が注目
この貴重映像が示しているように、天皇陛下は長い間、水問題の研究で世界で注目されている存在だった。
1990年、東京で行われた学会で、当時皇太子だった陛下に会う機会があったという米メリーランド大学歴史学教授のコンスタティン・ノミコス・ヴァポリス氏は、陛下をエンヴァイロメンタリスト(環境問題研究家)と呼び、「クリーン・ウォーターの提唱者」として、長きにわたり、環境問題を追及し続けていることを評価している。
天皇陛下はなぜクリーン・ウォーターに関心を深めていったのか?
その答えは、陛下が第1回アジア・太平洋水サミット開会式の際に行った講演の中の以下の発言に見出すことができそうだ。
「地球温暖化問題の多くが、水循環への影響を通じて生態系や人間社会に多大な影響を及ぼすことも知りました。このようにして、私は、水が、従来自分が研究してきた水運だけでなく、水供給や洪水対策、更には環境、衛生、教育など様々な面で人間の社会や生活と密接につながっているのだという認識を持ち、関心を深めていったのです」
さらに陛下は、
「水にかかわる病気のために約10秒から20秒に1人、子どもの命が失われているという事実には胸が痛みます」
と非衛生的な水がコレラや腸チフスなどの病気を引き起こす問題も憂慮されている。
エンペラーとキングが重視する“万人の利益”
クリーン・ウォーターの必要性を感じているのは、世界で唯一「エンペラー(皇帝)」と呼ばれている日本の天皇陛下だけではない。世界のキングもまた然りだ。キングといっても、「ネット通販(eコマース)王」と呼ばれている、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏のことである。
14兆4100億円という純資産で、今年も世界一の富豪となったベゾス氏は、2017年1月のこと、ツイッターで、フォロワーにこんな呼びかけをして注目された。
「人助けするために、どんな慈善活動に資産を使ったらいいか、ツイートで提案してほしい」
アメリカ人フォロワーたちはベゾス氏に様々な使い方を提案した。みな自分個人の身近にある問題を解決してほしいと考えたのだろう、医療の無料化や税金の低減化などの使い方を提案した。
数ある提案の中から、最善の使い方を導き出したAIがある。“スワームAI”と呼ばれる、今、アメリカで注目されているAIだ。詳しくは、筆者が寄稿したForbes JAPANの記事を読んでいただけたらと思う。
スワームAIは、ビッグデータをベースにアルゴリズムが予測や判断を行う既存のAIとは全く異なり、複数の人々が参加し、参加者の直感や経験、見識などの人知を取り込んで、AIが最善の解決法を導き出す。
そして、このスワームAIが導き出した、ベゾス氏の資産の最善の使い方はクリーン・ウォーターに対して使うことだった。つまり、アメリカ人が参加したスワームAIは、アメリカ人が求める、いわば“個人の利益”より、世界の人々が必要としている“万人の利益”=クリーン・ウォーターのために使うことが最善であると判断したのだ。
この結果を考慮したのだろうか。ベゾス氏は、今年1月、ビル・ゲイツ氏らと太陽光パネルを使って、空気中から水を取り出し、濾過する技術に1ビリオンドル投資している。
世界唯一の皇帝は水問題の研究を通して、世界のネット通販王は資産を投じることで、“万人の利益”となるクリーン・ウォーターのために貢献したいと考えていると言えるだろう。
地球温暖化の備え意識が最低の東京
今、世界は水危機へと確実に向かっている。WHOによると、世界でクリーン・ウォーターにアクセスできる人々は10人に3人。
世界資源協会が8月に更新した世界水リスクアトラスによると、17カ国(世界人口の4分の1に当たる)が20年以内に「非常に高い水ストレス」に直面するという。水ストレスとは、再生可能な水供給量に対する取水量の割合で、取水量が再生可能な水供給量の80%を超えると「非常に高い水ストレス」を受けている状態になる。
都市部でも水不足は深刻化し、世界銀行は、都市で利用可能な水は、2050年までに3分の2減少する可能性があると予測している。
「世界の水危機」の大きな要因は人口の増加であるが、それを加速させているのは地球温暖化による気候変動だ。しかし、残念ながら、日本の首都は地球温暖化に対する意識が他の大都市と比べると低い。
みずほ情報総研が、2014年10月、東京、ニューヨーク、ロンドン、上海、ムンバイの5都市で行った、地球温暖化に関する意識調査によると、地球温暖化の影響に備えている人の割合は、東京が最低だった。
また、気候変動やその影響について情報収集し、評価を行う政府間機関として「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」があり、天皇陛下もご講演の中でこの機関について言及されているが、同じみずほ情報総研の調査では、IPCCの第5次評価報告書の認知度は、東京での認知度が16%と最も低く、ニューヨーク、ロンドン、上海では29~35%、ムンバイでの認知度は85%と最も高かった。
総じて、東京に住む人々は、温暖化に対する危機感をあまり強く抱いていないことが、この調査で浮き彫りになったと言えるだろう。東京での危機意識が低いことは、ひいては、日本における危機意識の低さにも繋がるのではないか。
温暖化は「世界の水危機」を加速するだけではなく、今後、台風を台風19号のように大型化させ、発生を頻発化させることで日本にまた大きな被害をもたらす恐れもある。
天皇陛下が、温暖化に対する日本人の低い危機意識を高める牽引者となって下さったら。
「即位の礼」の日、そんな期待を抱いた。