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#ブギウギ 「行きます」と出征する六郎が悲しすぎる

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」第8週では、スズ子(趣里)の母ツヤ(水川あさみ)の病気が心配なうえに、弟の六郎(黒崎煌代)に赤紙が来て……。あんなに幸せだった花田家に暗い影が差す。でも六郎は、この切迫した状況がわかっているのか、いないのか、無邪気に喜んでいるように見える。それが逆に悲しくて、切なくて。

六郎を、周囲の空気を読まない、独特の反応をする人物に描いてきたことで、戦争に対する彼の思いに、見る者はいろいろな感情を湧かせ、心が強く締め付けられる。この展開について、制作統括の福岡利武チーフプロデューサーに聞いた。

「戦争に行くことを誰もが内心、不安に思っているなかで、六郎だけはピュアさゆえに肯定的に捉える……というエピソードは、逆算したわけではないと思いますが、脚本の足立紳さんがすごく思いを込めたものだと感じます。六郎は、足立さんの思い入れが強い人物です(足立紳インタビュー)。ピュアで、時代が時代なら周りの人を幸せにするような、気持ちのいい大人に成長したであろう六郎が、時代が戦争に突入して行くなかで、徴兵されてしまう。ようやく認められたと喜ぶ彼を、周囲は複雑な気持ちで見守っている。当時は出征することに『おめでとうございます』と言うんですよね。切ないですよね。戦争に対する六郎の思いは、表現がとても難しいところです。が、足立さんの練った脚本と、黒崎さんが持ち前のピュアなところを非常に役にうまく発揮して演じてくれました。ここで、お芝居の狙いが立ち過ぎると、いかにも作り物になってしまうところを、黒崎さんがほんとうにまっすぐな思いでやってくれました」

「ブギウギ」より  写真提供:NHK
「ブギウギ」より  写真提供:NHK

第37回、病床のツヤの布団に丸刈りの頭をこすらせる仕草と、それをやさしく見守るツヤの場面が胸を打った。

「台本をそのままストレートに演じていただいた場面でした。水川さんは子役の六郎からの積み重ねで、六郎への思いができてましたし、黒崎さんは子役の場面のスタジオを見学していた積み重ねがあって、どーんと自然にあのお芝居になりました。水川さんもスタジオでいつも『六郎、六郎』と声をかけていましたし、黒崎さんもお芝居で必死に水川さんにぶつかっていこうとしていて、ほんとうに親子に見えましたし、複雑な親子の感情も垣間見えてすばらしかったですね」

第38回では、六郎は東京へ。スズ子(趣里)に会いに行く。六郎とスズ子の姉弟はどんな会話を交わすのかーー。

連続テレビ小説 ブギウギ

【放送】

総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間を振り返ります

BSプレミアム【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分

BS4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分

【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>

【音楽】服部隆之

【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里

【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか

【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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