なぜバルサはシャビを“解任”しないのか?大型補強の夏と指揮官に必要な時間。
厳しい現実を、突き付けられた。
バルセロナはチャンピオンズリーグ・グループステージ第5節でバイエルン・ミュンヘンに0−3と敗れた。この結果、最終節を前にバルセロナのグループ敗退が決定している。
「(インテルの試合結果を知っていたため)同じモチベーションでプレーするのは難しかった。サポーターに勝利を届けたかったけれど、できなかった。彼らには、大きな借りがある。いつも僕たちを支えてくれた。彼らに勝利とタイトルを届けたい。今後、それができたらと思っている」
「失敗かどうと聞かれたら、失敗だと思う。僕たちは若いチームだ。新加入の選手が多くいて、まだお互いを分かり合えていないところがある。時間が必要だ。でも、グループ突破はしなければいけなかった」
これはペドリ・ゴンサレスの言葉だ。
■バルセロナのグループ敗退
2シーズン連続、チャンピオンズリーグでグループ敗退に終わった。バルセロナにとって、それはおよそ24年ぶりの出来事だ。
1997−98シーズン(グループ4位で敗退)、98−99シーズン(グループ3位で敗退)、バルセロナは苦境に立たされていた。当時、チームを率いていたのはルイ・ファン・ハール監督だ。その中心には、リバウドがいた。
バルセロナは欧州の舞台で勝てずにいた。だが、国内では強さを維持していた。その2シーズン、いずれもリーガでは優勝を飾っている。そこが、過去と現在の大きな違いだ。
また、大きな要因として挙げられるのは、リオネル・メッシの不在だ。
バルセロナは昨年夏、メッシが退団した。サラリーキャップの問題を抱えていたバルセロナは、高年俸のメッシを抱えきれなかった。契約満了を迎えようとしていたメッシが、年俸50%減を受け入れていたにもかかわらず、史上最高級の選手を放出せざるを得なかった。
■メッシの退団と監督交代
メッシ、そしてアントワーヌ・グリーズマンが抜けたチームを立て直す力は、ロナルド・クーマン前監督にはなかった。なお、クーマンは昨季、チャンピオンズリーグでグループ敗退が決定する前にクビを切られている。そこで就任したのがシャビ・エルナンデス監督だった。
シャビ監督は「再建」を託された。2022年1月の移籍市場で、フェラン・トーレス(移籍金5500万ユーロ/約77億円)、ダニ・アウベス、アダマ・トラオレ、ピエール・エメリク・オーバメヤンの獲得を要望した。補強は実現したが、ヨーロッパリーグでもベスト8敗退という結果に終わった。
そして、この夏、バルセロナは大型補強を敢行した。1億5300万ユーロ(約214億円)を投じて、ロベルト・レヴァンドフスキ、ハフィーニャ、ジュール・クンデ、マルコス・アロンソ、フランク・ケシエ、アンドレアス・クリステンセン、エクトル・ベジェリンを獲得。新たなシーズンに向けて戦力を整えた。
一方、大型補強には犠牲が伴った。今夏、バルセロナはテレビ放映権の25%を譲渡して、かつ『バルサ・スタディオス』の49%を売却した。資産の一部を換金する形で、シャビ監督が望むスカッドが形成された。
だが結果は変わらなかった。チャンピオンズリーグでグループ敗退。この大会での上位進出、そこで得る収入が予算として計上されていたクラブとしては、それは大きなダメージになっている。
■最後のビッグイヤー
バルセロナが最後にビッグイヤーを獲得したのは、2014−15シーズンだ。
メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3トップが欧州で躍動していた「MSN」と呼ばれた3選手は、ピッチ内外で良い関係を築き、抜群のコンビネーションでゴールを量産した。ただ、ネイマール(2013年夏加入)、スアレス(2014年夏加入)でさえ、メッシとの連携力を上げるには時間を要した。
無論、バルセロナが過度に悲観的になる必要はない。ガビ、アンス・ファティ、アレッハンドロ・バルデと優秀なカンテラーノが出てきている。ペドリという有望な若手選手がいて、未来は明るいと言える。
シャビ監督には、時間が必要だ。だが、現在、欧州のフットボールシーンにおいて、トップレベルで時間の猶予はない。バルセロナと指揮官が、ジレンマに襲われている。