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尾川堅一(帝拳)とIBF世界Sフェザー級王座を争う技巧派サウスポー、テビン・ファーマー(アメリカ)

杉浦大介スポーツライター
Photo By Ed Diller/DiBella Entertainment

12月9日 ラスベガス マンダレイベイ・イベンツセンター

IBF世界スーパーフェザー級王座決定戦

尾川堅一(帝拳/29歳/22勝(17KO)1敗)

テビン・ファーマー(アメリカ/27歳/25勝(5KO)4敗1分)

テビン・ファーマー

 12勝4敗という短いアマキャリアを経て2011年にプロデビュー。最初の12戦では7勝(1KO)4敗1分という見栄えのしない成績だったが、以降18連勝でスーパーフェザー級のトップ戦線に躍り出た。地味ながら、スキルに秀でた技巧派サウスポー。4月に右腕二頭筋をケガし、7月に銃撃事件に巻き込まれて右手を撃たれるなど、2017年はアクシデント続き。それでも12月9日、ジャーボンタ・デイビス(アメリカ)が体重超過で剥奪されたタイトルを尾川との決定戦で争うことが決まった。

*インタヴューは11月30日に電話で行われた

パーネル・ウィテカーに似たスタイル

ーー尾川とのタイトルマッチが10日後に迫りましたが、調整はいかがですか?

TF : 順調だよ。もうファイトの準備はできている。残りの10日間でゆっくりと整えていくだけだ。ウェイトもまったく問題ない。

ーープロキャリアを7勝4敗1分という成績でスタートさせながら、その後に急上昇できた理由を教えて頂けますか?

TF : デヴュー直後はボクシングを真剣に捉えていなかった。以降は気持ちを切り替え、違う姿勢で臨むようになったんだ。より規律正しく過ごし、適切な人間を周囲に置き、食事も改善した。あの4敗があったからこそ、今の自分があるんだ。

ーースキルフルなボクシングに定評がありますが、自分の能力の中でどこに誇りを持っていますか?

TF : ディフェンスだね。相手のパンチをもらわない防御技術に関しては自信を持っている。

ーーディフェンスの巧さゆえに、パーネル・ウィテカー(アメリカ)に似ていると言われていますね。

TF : そう言われることがあるのは知っている。ただ、俺はボクシングは見なかったから、周囲に言われるまではそんなことは考えたこともなかった。実際にウィテカーの映像を見て、似ているなと思ったのは確かだ。俺はボクシングファンではなかったから、特に好きな選手はいなかった。だからウィテカーがフェイバリット・ファイターだったというわけではないよ。

ーー来月9日に対戦する尾川選手の印象は?

TF : 前に出てくる好戦的な選手だ。スタイルを表現するなら、ボクサーパンチャーかな。パワーを備えているし、技術もある。俺は常に自信はあるけど、彼も良い選手だ。

ーーKOは狙いに行きますか?

TF : 自分のボクシングをするだけで、俺の仕事は勝つことだ。自分らしいボクシングができれば、結果はついてくると思っている。もちろん展開次第でノックアウトもあり得るだろうが、それにこだわったり、狙いに行ったりすることはない。

波乱万丈の2017年にタイトル獲得なるか

ーー4月に右腕をケガし、7月に銃撃事件に巻き込まれるなど波乱の1年でしたが、コンディションに影響はなかったですか?

TF : 大丈夫だよ。ケガの影響はまったくなく、完調だ。ケガの2ヶ月後には手を撃たれて、大変な1年だったけど、それもモチベーションになった。1年間で2度も大きなケガをして、同じ年に初めてのタイトルを取ればそれは凄いことだろう。

ーーワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)のスパーリング・パートナーを務めてきたことでも話題になりましたね。

TF : 自分にとってとても良い経験になったのは確かだ。ロマチェンコはスキルがあって、パンチもある。ガードを下げるけど、それも問題になっていない。本当に素晴らしい選手だ。

ーーロマチェンコはこれまで拳を交えた中で最高の選手だと思いますか?

TF : そうだと思う。それは間違いないな。

ーー尾川戦後に戦いたい選手は?

TF : 今この場所にたどり着いて、もう自分から相手を探し求めるようなことはしない。もうすぐチャンピオンになって、これからは追いかける必要はない。俺と対戦したい選手が、追いかけてくるべきなんだ。

ーー4月に公の場所で舌戦を繰り広げたデイビスとのライバル関係(注・映像下)が取りざたされてきましたが、将来的に対戦はあり得るのでしょうか?

TF : 彼のことなんかまったく考えていない。興味もないね。(自分との対戦うんぬんを話す前に、)彼はもっと規律正しくなって、ウェイトを守り、タイトルを取り戻す必要がある。

ーー最後に今後の目標を聴かせてください。

TF : 少なくとも3度はチャンピオンになりたい。複数階級を制覇したい。そして金も稼げたら良いだろうな。ただ、まずは何度も王者になってその名誉を勝ち取りたい。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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