Yahoo!ニュース

8月1日は生誕60周年を迎える「バイキングの日」 あなたのブッフェは時代遅れではないか?

東龍グルメジャーナリスト
ブッフェ台/左から新館料理長村上信夫氏、本館料理長一柳一雄氏@帝国ホテル提供

8月1日はバイキングの日

8月1日は何の日でしょうか。

昨年も<ブッフェはどこへ向かうのか? 8月1日「バイキングの日」に「日本ブッフェ協会」を設立する背景と全容>で紹介しましたが、8月1日は一般社団法人 日本記念日協会にも認定されている「バイキング日」です。

バイキングの日

1958年(昭和33年)の8月1日、日本を代表するホテルである帝国ホテルが新しいレストラン「インペリアルバイキング」をオープンさせたことにちなみ、2008年4月に株式会社帝国ホテルが制定した日。その店名は当時上映中だった映画「バイキング」が新しいレストランの食のスタイルのイメージにふさわしいことから名付けられたという。帝国ホテルが後の総料理長の村上信夫氏らの手により誕生させたバイキング形式は2008年で50周年となる。

出典:日本記念日協会

バイキングは、帝国ホテルが1958年にオープンした「インペリアルバイキング」(2004年のリニューアルから「インペリアルバイキング サール」)から作られた造語で和製英語です。ブッフェとビュッフェは日本語での発音表記が違うだけで、どちらとも buffet を指しています。

現在、多くのホテルには、客が自由に取って食べるブッフェスタイルのレストランがありますが、このブッフェはバイキングとほぼ同義です。

2018年8月1日の「バイキングの日」をもって、バイキングは生誕60周年を迎えることになり、朝日新聞やリビング新聞などにも取り上げられ、耳目を集めています。

帝国ホテル 東京「インペリアルバイキング サール」でも記念セレモニーが行われ、今後ますます、バイキング=ブッフェは日本の食文化の中で重要性を増していき、次の段階へと進もうとしています。

観光産業の発展

トラベルボイス訪日ラボによると、国連世界観光機関(UNWTO)が年間の海外旅行者数を2016年は12億3500億人、2017年は13億2200万と発表し、2020年は14億人、2030年は18億人にまで拡大すると予測しています。

日本への海外旅行者数も順調に伸びており、<訪日客、20年に4000万人「視野に」>によると、政府目標となっている2020年の訪日外国人4000万人も現実的となっています。SPEEDAの記事では、宿泊施設はまだ不足しており、ホテルの稼働率も非常に高い状況であると述べられています。

ホテルの宿泊客は、昼や夜は外で食事をとることが多いですが、朝食だけはホテルでとることがほとんどです。訪日外国人の増加とホテルの高稼働によって、ホテルの朝食は利用者が極めて多くなっています。

朝食では短い時間帯に宿泊客が殺到するために、個々にサービスしていたのでは間に合いません。そのため、ほとんどのホテルが朝食をブッフェで提供しているのです。

訪日外国人の立場からすると、朝食はホテルでとるのであれば、より素晴らしい朝食ブッフェを提供しているホテルを選びたくなるでしょう。

ブッフェレストランを擁している場合にはもちろん、ブッフェレストランを擁していない場合であっても、ホテルにおけるブッフェは重要性を増してきているのです。

自分らしい食のスタイル

インターネットの発展によって、個人がSNSやブログなどを通して情報を発信し、大きな影響力をもつようになりました。グルメ情報が、テレビや雑誌といった一部のメディアからだけではなく、こういったインフルエンサーやインターネットの媒体からも発信されるようになり、食のトレンドのあり方も多様になってきています。

マグロなどの水産物を中心とした食の持続可能性(サステナビリティ)が問題として取り上げられたり、無駄に食を廃棄してしまう食品ロスを削減しようと国も動き始めたりと、食に対する意識もだいぶ高まってきました。

食の多様性が広がってきたこと、そして、食を大切にする雰囲気になってきたことを鑑みれば、自分でバランスを考えて料理を取り、適量な分量だけを食べられ、自然体で過ごせるブッフェは、今の時代に相応しく、他にはない唯一の食のスタイルということができるでしょう。

少食の人であれば、少しずつ色々な品目を食べられるので健康バランスに優れますし、体を鍛えている人はタンパク質をたくさんとることができます。苦手だと思っていた食材や未知の料理に対しても、味見程度に食べてみることができるので、食の体験を広げることができるのです。

自分で考えて取って食べるという特性から、中学や高校では食育のために「バイキング給食」が実施されています。食に対して能動的に行動するブッフェを通して、料理やデザートなどがどのように作られたのか、料理やデザートを構成するための食材がどのようにして生産されてきたのかと、考え方も能動的になっていき、様々な食の問題にも関心を寄せるようになるのです。

地球に寄り添っていかなければならない時代であるからこそ、かつ、個を大切にしていく時代であるからこそ、ブッフェはより注目されるべきであると考えています。

文化の向上

ブッフェは、観光産業の発展によってホテルで重要性を増しており、食のあり方を考え、自分らしく振る舞える、今の時代に相応しい食のスタイルです。私が代表理事を務める一般社団法人 日本ブッフェ協会でも「ちょうどいいが いちばんおいしい」を提案しています。

しかし、文化が未熟であるため、ブッフェは誤解されたり、勘違いされたりしています。

例えば、ブッフェはあくまでも地球や個人に寄り添った食のスタイルであるにもかかわらず、食べ放題という言葉によって大食いしなければならないものと連想されたり、飲食店による経済的活動という観点が欠落して、元を取らなければならないという不毛な強迫観念が植え付けられたりしているのです。

メディアがブッフェを取り上げる際に、大食いすることや元を取ることを全面に押し出すことも多く、受け手に誤った価値観を浸透させているように思います。

そのため、<知らないと恥ずかしい、この時代における新しいブッフェのマナー8か条>でも述べたように、ブッフェにおけるマナーを周知し、本来の楽しみ方や食べ方を伝える必要があるのです。

バイキング生誕60周年を新たな節目として、自由に選んで食べるというブッフェの存在が、大食いや元をとるための手段であると捉えられるのではなく、自分らしく楽しむためのスタイルであると認識され、そして、バイキング生誕65周年くらいの頃には「ちょうどいいが いちばんおいしい」が当たり前となっていることを切に願います。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

東龍の最近の記事