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学生たちがVR作品を企画・制作するイベント「IVRC」オンライン作品講評会の工夫

五十嵐悠紀お茶の水女子大学 理学部 准教授
IVRC2021(画像提供:IVRC実行委員会)

学生を中心としたチームでインタラクティブ作品を企画・制作するチャレンジ「IVRC」が今年も開催されている。コロナの影響で実際に集まって開催できない状況であるが、どのように企画・運営されているのか様子をお伝えする。

Interverse Virtual Reality Challenge とは

IVRC自体は1993年から続く、バーチャルリアリティのイベントである。1993年というと、今回の参加者のほとんどがまだ生まれていない頃。2020年に2代目の実行委員長として東京大学・稲見昌彦教授が就任し、このように、IVRCの「I」は、InternationalからInterverseへと変化し、「Interverse Virtual Reality Challenge」として開催されている。

Interverse(融合)」という言葉を使う理由とは何だろうか。

― 私たちにとってのリアルとは、もはや物理世界(universe)と情報世界(metaverse)という対比を超えて、あらゆる世界が融合(interverse)した概念となっています。このような時代にVRはどう進化していくのか? 旧来のVRの概念を超えたチャレンジを募集します。

(https://ivrc.net/2021/ より)

「『リアルとバーチャル』という言い方をみなさんもよく使っているかもしれません。これまでは、現実世界と仮想的な世界の2つを対比させることによって、我々は仮想的な世界をどう作っていくかみたいなことがVRのイメージだったかもしれません。

今は、『バーチャルリアリティ』という日本語でも通じるようになってきただけでなく、複数のリアリティを感じることのできる世界を『フィジカルワールド(現実の世界)』の他に持っている人も多いかもしれません。そういった世界を、いわゆる『バーチャル(仮想世界)』と対比させてもしょうがない。みんなリアルです。」

と稲見実行委員長は話す。

ビデオプロトタイピングの重要性

IVRCでは、第1ステージとして「SEEDステージ」、第2ステージとして「LEAPステージ」から成る。

IVRC HP (https://ivrc.net/2021/overview/)より
IVRC HP (https://ivrc.net/2021/overview/)より

昨年のSEEDステージでは、オンライン開催と実際の体験に依る評価を両立するために、書類審査に通った作品は、審査員に郵送し、遠隔で体験。SEEDステージ当日にはその体験のフィードバックを含めた審査を行った。(参考記事

今年は、もともとは関東・関西での分散開催で人数制限をしての体験審査会が予定されていたが、緊急事態宣言の発令により、SEEDステージがオンライン開催となった。企画書類応募を経て、SEEDステージに進んだ25作品のビデオを提出してもらい「オンライン作品講評会」が9月8日に開催された。

結果的に、ビデオ審査という形になったが、「仕方なくビデオで」ということではない。

「モノを作っていくとき、特に人に対してサービスを提供するようなときは、パワポで企画書を作ることよりも、プロトタイプを作ることが大事です。下手に文字に落としたり図に落としたりしたらかえって伝わらなくなってしまうことも多い。どういうふうに使われるかということを伝えるために、プロトタイプを作って、ビデオに録って他の人に見せて伝える。それがビデオプロトタイピングという手法です。それを我々、実行委員会で拝見させていただきながらコメントをさせていただく、といった方法で開催することにしました。」

と稲見実行委員長。

オンライン作品講評会ではコメントスクリーンで盛り上げ

作品講評会は、非公開イベントとして9月8日に開催された。当日は、実行委員会の委員たちは、Zoomで接続して、YouTube Liveの限定公開で配信。IVRCに参加した学生たちはYouTube Liveの配信を視聴しながら、コメントスクリーン(Comment Screen)を使って盛り上がった。

コメントスクリーンとは、コメントをテキストや絵文字などで送ることのできるサービスである。これを配信の画像に重ね合わせて送ることで、ニコニコ動画風の映像を送りとどけることができる。

コメントスクリーンでIVRCに参加した学生たちも一緒にリアルタイムで盛り上がる様子(写真:実行委員会提供)
コメントスクリーンでIVRCに参加した学生たちも一緒にリアルタイムで盛り上がる様子(写真:実行委員会提供)

1作品あたり、動画2分30秒を流したあと、実行委員が2分程度、口頭でコメントをしていった。誰か1~2名のコメントなのではなく、多くの実行委員が口々にコメントを述べて多様な意見やアドバイスがもらえたのもポイント。

「これはこうだよね」「おもしろいよね」「これはこう改良すると良いのでは」「両者のコミュニケーションが必要な非対称ゲームなので…」など、様々なコメントが飛び出す濃厚な2分間である。これと並行して、コメントスクリーンでも多くのフィードバックが流れていく。

全作品がLEAPステージへ

IVRCは日本バーチャルリアリティ学会が主催のイベントである。第26回バーチャルリアリティ学会大会は9月12日~14日にオンラインで開催される。この中で、IVRCのポスター発表会も開催される。IVRCは多くの企業スポンサーによって成立しているといった側面もある。協賛企業賞はこの動画およびバーチャルリアリティ学会大会中のポスター発表によって決定される。

これらのフィードバックを活かして、今年は全作品がLEAPステージへと進む。LEAPステージでは、10月末に体験会の開催を予定しており、その後11月6日(土)にオンライン審査会がYouTube配信による一般公開で開催される。

学生たちのVRにかける情熱をお楽しみに!

お茶の水女子大学 理学部 准教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員PD, RPD(筑波大学), 明治大学総合数理学部 専任講師,専任准教授を経て,現職.未踏ITのPM兼任.専門はヒューマンコンピュータインタラクションおよびコンピュータグラフィックス.子ども向けにITを使ったワークショップを行うなどアウトリーチ活動も行う.著書に「AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55」(河出書房新書),「スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子 (ネット社会の子育て)」(ジアース教育新社),「縫うコンピュータグラフィックス」(オーム社)ほか.

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