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子供は3歳までは母親が手元で育てるべき!? 母親が働いていると子供にどんな悪影響がある?【徹底解説】

ねんねママ(和氣春花)乳幼児育児アドバイザー

復職予定、もしくは現在働いているママさんは、小さいお子さんを保育園に預けるのは発達に悪影響なのでは…と不安に思われたことはありませんか?

その中には3歳児神話を気にされている方もいるかもしれません。

私は子供を0歳から保育園に預けて働いており、この3歳児神話の事は当時から知っていました。母に「3歳までは親の手元で育てたほうがいい」と何度も言われたからです。

今回の記事では2児の母でもある乳幼児睡眠コンサルタントねんねママが、不安のあるママが前向きになれように3歳児神話に関して

・どういう根拠があるのか

・どんな影響があるのか

・どうすればそれを緩和できるのか

についてお伝えします。

決して「0歳から保育園が最高!」という内容ではなく、悩んでいるママの力になるように発信しています。

そもそも3歳児神話とは?

3歳児神話とは、

子供が3歳になるまでは母親は子育てに専念すべきであり、そうしないと成長に悪影響及ぼすという考え方 by Wikipedia

のことです。

3歳児神話は1950年にボウルビィという医師によって、「子供は3歳ごろまで母親の手元で育てられないと成長に悪影響が及ぼされる」と提唱されたとされています。

ボウルビィは日本で言うと明治時代の生まれの方です。なので3歳児神話が言われ始めたのは少し昔のこと。まず大前提として、それを念頭に置いてください。

愛着理論と3歳児神話

ボウルビイは「愛着理論」を提唱した方でもあります。

この愛着理論というのは、「3歳までの養育者や周りの大人との愛着形成は非常に重要である」としており、これも3歳児神話につながっているのだと思われます。

読んでわかる通り、「母親」とは言いきっていないんですよね。乳幼児期特定の養育者と愛着形成をすることがその後の育ちに大きな影響を与えるとしています。

その後の育ちに大きな影響、とは具体的にどんなことを指すのかを次で簡単に説明します。

愛着が形成されていないことの悪影響

子どもは幼少期に親や養育者から無条件に「かわいいね」「だいすきだよ」と存在を受け入れられることで、人格の基盤が形成されます。

その中で愛着が形成されていることによって、自分の心のコントロール、たとえば不安を抑制したり、いろんなものに興味を持って探索行動ができるようになったり、自分や他の人への信頼を持つといったような様々な能力や資質が形成されるのです。

そういった愛着形成がされていないと、

自己肯定感が低い

人を信じられない

不安感が大きくて精神的に不安定

…といった子に育ってしまいやすくなるという事になります。これが愛着形成がされていないことの悪影響です。

平成10年で変わった3歳児神話の捉え方

ここまでの内容でわかった事は、

・3歳児神話は少し昔の話である

・愛着形成の対象は当時から母親に限定されていない

ということかと思いますが、もう少し直近ではどう言われてるのでしょうか。

平成10年の厚生白書で実は3歳児神話にしっかり触れられており、章のタイトルが「3歳児神話には少なくとも合理的な根拠は認められない」から始まります。

結論がタイトルに出ていますが一部紹介します。

母親が育児に専念することは歴史的に見て普遍的なものでもないし,たいていの育児は父親(男性)によっても遂行可能である。また,母親と子どもの過度の密着はむしろ弊害を生んでいる,との指摘も強い。欧米の研究でも,母子関係のみの強調は見直され,父親やその他の育児者などの役割にも目が向けられている。

引用)https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/kousei/1998/dl/04.pdf p58

要するに、ママに限定する必要はないと書かれています。

先ほどの話にもつながりますが、確かに小さいうちに自分と言う存在を受け入れてもらえるというのはとても大事です。幼少期は人格形成の基盤になる時期だというのは確かです。でもそれはパパでも、じいじばあばでも、保育園の先生でも良いのです。

つまり、保育園に預けること自体は悪いことではなく、そこで先生とちゃんと愛着形成ができるということが大事だと考えられます。

この平成10年の厚生白書には当時の私に教えてあげたい文章があり、少し長いですがこちらもご紹介します。

子どもを保育園や他人に預ける母親は,周囲から子どもに対する愛情が薄いとか自分勝手であるとか見られがちである。しかし,子どもと接する時間の長さだけが愛情の質を決めるわけではない。子どもと接する時間が限られていることで親子の愛情を一層深めていることもあるだろう。また,専業主婦は子育てに専念するのが当然であると見られ,特に乳幼児期の子どもをどこかに預けて自分の時間を持とうとするような専業主婦もやはり自分勝手と見られがちである。
しかし,子育てに他人の手を借りずにすべてを自分でやり遂げるということだけが子育てにおける親の責任の果たし方ではない。仕事と子育ての両立を図る中で,よい保育サービスを選択し,利用しつつ,家庭にいる時間の子どもとの交流を大切にすることがあってもよい。専業主婦であっても,一定の時間,保育所の一時保育やベビーシッターを利用するなどして気分転換を図ったり,自分の時間を持ち,適度にストレスを発散することで,より豊かな心で子どもと接することができれば,四六時中子どもの側にいなくともそれは立派な親としての責任の果たし方であり,愛情表現でもある。
また,時にはごはんやおやつ,服を「手づくり」するだけの時間的ゆとりがない場合もあるかもしれない。もちろん,「手づくり」は愛情表現のひとつであるが,時間に追われる生活の中では,必ずしも手づくりにこだわらずに子どもと直接向き合い接する時間を大切にすることの方が子どもにとっての喜びであることもあるだろう。子どもへの愛情表現にもいろいろあってよい。
「すべてを自分の手でやらなければ」「手づくりでなければ」という重圧を感じている母親は少なくないといわれるが,こうした考えに縛られない柔軟な子育て態度,そして,それを受け入れる夫や社会の態度も必要である。
いわゆる三歳児神話など子育てについての過剰な期待や責任から,重圧や負い目を感じ,時に多くのストレスをためながら子育てしている母親も少なくなく,一般に今日において母親にとっての子育ては相当負担感の強いものとなっている。
これからは,昨今の子育てについての過剰な期待や責任から,母親を解放していくことが望まれる。そうすることが,結果的には,母親が心にゆとりをもって豊かな愛情で子育てに接することにつながり,よりよい母子関係が築かれることにつながると考えられる

引用)https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/kousei/1998/dl/04.pdf

厚生労働省がこんな心に響く文章を出してくれてるんですね、当時の私に教えてあげたいです。

保育園に預けて仕事に復帰している自分を責めているママがいたら、ぜひこれを読んで欲しいなと思います。

ママが働くことに関しての研究結果

ちなみにこれだけではなく、他にもママが働くことについての研究は色々されています。心強いものもあるのでご紹介します。

まず1つ目は、アメリカの国立小児保健・人間発達研究所で新生児約1300人を5年間追跡した研究。母親だけで育てた場合と、保育サービスなど母親以外の人も含めて育てた場合とで、子供の発達に有意な差はなかったという結論が出ています。

2つ目は、2010年のアメリカの研究で過去50年間の各国の研究を統計分析したものでも、「母親の就労と子供の学力や問題行動は基本的に関係がなかった。近年では、親が仕事に子育てにと複数の役割を持つと、リフレッシュや成長につながり、子供にも良い影響与える」という結果が出されています。

国内でもお茶の水女子大学の菅原教授の研究で、269組の母子を12年間追跡した調査で、3歳未満で母親が働いても、子供の問題行動や子供に聞いた母子関係の良好さ、母親に聞いた子供への愛情の悪影響は認められなかったという結果が出ています。

おわりに

お子さんと3歳まで一緒に過ごすことは何にも代えられない幸せな時間です。

だからといって保育園に預けていることは悪いことではなく、ママがいきいきと働く姿を見せて「仕事って楽しいよ」ということが伝えられていたり、パパと家事分担をする姿が見せられていたりすることで、その子にとって将来的にポジティブに働くと考えられるのではないでしょうか。

私も働くママですが、ワーキングマザー仲間のみなさん、これから復職するのに不安を感じている皆さん、ぜひ自信を持ってポジティブに育児していきたいですね。

▼YouTubeでもお話しています。

乳幼児育児アドバイザー

乳幼児育児アドバイザー。小児スリープコンサルタント。0-3歳モンテッソーリ教師。株式会社mominess代表。YouTube「ねんねママのもっとラクする子育て情報局」やInstagramなどで乳幼児の育児に関する発信を続け、2024年現在、SNSの総フォロワーは19万人超。運営する「寝かしつけ強化クラス」では月間200問以上の睡眠に関する質問回答を行っている。著書に『すぐ寝る、よく寝る 赤ちゃんの本』『〇✕ですぐわかる!ねんねのお悩み消えちゃう本』がある。

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