赤ちゃんに掛け布団は使わないで!こども家庭庁が発信へ。小さな命を守る12の対策を専門家が解説
11月は乳幼児突然死症候群(以下SIDS)の対策月間です。
SIDSはそれまで健康だと思われていた赤ちゃんが突然亡くなってしまう病気で、その多くが寝ている間に起きています。
こども家庭庁に毎年11月をSIDS対策月間として定めていますが、それには理由があります。
12月以降の冬季にSIDSが発症しやすくなるためです。
今年10月にこども家庭庁から出されたリリースには、これまでと大きく変化がありました。それが「掛け布団を使用しないこと」という記載がされたことです。
これまでは軽い掛け物にするようにとの記載がされていましたが、今年からは掛け物はしないようにと注意書きがされています。
このような変更がされたのは、掛け布団が窒息やSIDSのリスクとなることが考えられるためです。
アメリカの安全な睡眠のためのガイドラインではすでに、掛け布団は使わずに固くて水平な寝床に寝かせることが推奨事項として設けられています。
以下に上記アメリカのガイドラインを元にして、SIDSの対策について解説をしていきます。
【乳幼児突然死症候群(SIDS)】私たちにできる12の対策
私たちにできる対策は、リスクとされることを1つでも減らすことです。
わからないから、とただ怯えるだけだと夜も眠れず疲弊してしまいますよね。産後ただでさえ疲れている状態なのに、一晩中ぐっすり眠れずに子どものことを度々確認するのは辛いです。
もちろん意識して確認することも大事ですが、少しでも安心して眠れるように取れる対策をしてみてください。
1. 1歳までは仰向けに寝かせる
うつ伏せが危険とされる理由は、
- 吐いた息を再び吸ってしまい、低酸素・高二酸化炭素状態を引き起こす
- 仰向けよりも熱がこもりやすく、体温が上昇しやすい
などが考えられます。もちろん窒息のリスクもあります。
仰向け寝はSIDS予防の基本です。
日本の厚生労働省も同じことを予防法としています。しかしどうしても仰向けに戻すとギャン泣きして覚醒してしまったり、何度戻してもうつ伏せに戻ってしまうこともありますよね。一晩中この格闘を続けるのは現実的ではないとは私も理解しています。
では何ができるかというと1つは仰向けに慣れることです。
これまで1500人以上の方のご相談にのってきましたが、うつ伏せ寝が好きな赤ちゃんの方が多いように感じています。
お子さんごとに好きな寝姿勢は必ずありますし、うつ伏せが好きな子はお腹がついているほうが安心するのでしょう。
だから、「仰向けでも安心できるよ」とお腹を少し抑えてあげたり、手を握ってあげたりして慣れさせてあげる、というのは1つの対策にはなります。
そして根本解決のためには、寝返り返りの練習をすることです。寝返り返りができれば、好きな寝姿勢が維持できます。
アメリカの小児科学会も「赤ちゃんが仰向けからうつ伏せと、うつ伏せから仰向けのどちら側からでも自分で寝返りができるようになったら、仰向け寝の姿勢に戻す必要はない」としています。
寝返り返りの練習方法については、動画で理学療法士さんに解説していただいているのでご参照ください。
2. 平らな場所で寝かせる
赤ちゃんは固い平らなベッドで寝かせましょう。低反発のような沈み込みのあるものは顔が埋まってしまう可能性がありますので、「高反発」や「固綿」として売られているものをおすすめします。
シーツはしっかりとフィットするものにしましょう。ゆったりとした毛布やブランケットを下に敷くことは危険です。
また、大人用の柔らかいマットレスや、ウォーターベッド、ソファではSIDSや窒息の恐れがあります。
加えてチャイルドシート、ベビーカー、ベビーキャリア、スリングなども日常的な寝場所としては推奨されません。
バウンサーに関しては、日本国内でも先日SG基準が改定されたことが話題となりました。傾斜している場所で寝かせると危険があるため、フラットな場所で寝かせてあげましょう。
3. ベッドに柔らかい寝具、おもちゃ、バンパーなどを置かない
ベッドに柔らかい毛布やブランケットがあったり、枕・クッションや、寝返り防止クッション、ベッドバンパーと呼ばれるごっつん防止ガードなどがあると危険です。赤ちゃんが寝る場所には何も置かないようにしてください。
4. 赤ちゃんと同じ部屋で、違うベッドで寝る
同じ部屋の違うベッドで寝ることが、最もリスクが低いと言われています。
SIDSのリスクの高い1歳まで、少なくとも生後6か月までは同じ部屋が推奨されています。
日本ではあまり多くないように感じますが、欧米では新生児から部屋を分ける習慣があるのでこのような呼びかけがされています。
一方で、日本では添い寝されている方が多くいらっしゃいます。くっついた添い寝はSIDS、窒息のリスクを高めてしまいます。寝かしつけの際に添い寝をしていても、赤ちゃんが寝たら専用の布団やベビーベッドに移して別々の寝床で、大人の掛け布団がかかったり、枕に鼻や口が埋まったりすることのないように眠るようにしましょう。
5. 母乳育児を行う
ママが傷つかないために解釈に注意が必要ではありますが、このような記載がされています。
母乳育児はミルク育児に比べてSIDSの発症リスクが低いことがわかっているためです。
ただしその理由はまだ明らかになっていません。そのため「できるかぎり」母乳育児を行うという推奨にとどまります。「ミルクだからダメだ」と思う必要は全くありません。
こちらに関しては過去にYouTube動画で小児科の先生と「ミルク育児とSIDS」「夜通し寝る子はSIDSのリスクが高い?」というテーマについて解説いただいていますのでそちらもご参照ください。
6. タバコを吸わない、吸わせない
妊娠中の母親の喫煙は、ほぼ全ての研究でSIDSの主要なリスク因子としてあげられています。母親に限らず、赤ちゃんが喫煙者と同じベッドで寝ることもリスクとなります。
妊娠中あるいは1歳未満のお子さんがいる家庭では、全員が禁煙をすることがSIDSの予防となります。
7. 妊娠中・出産後のアルコール摂取を避ける
妊娠中あるいは出産後のアルコールの摂取はSIDSのリスクとなります。
飲酒をした状態での添い寝は赤ちゃんに覆いかぶさってしまうなどのリスクがありますので、お酒をたくさん飲んでしまったときはベッドではなくソファーで寝るなど配慮も必要です。
8. 寝ている間のおしゃぶりの使用
おしゃぶりの使用はSIDSのリスクを下げるという報告があるため、このような記載がされています。
ちなみに、おしゃぶりが口から外れていても効果があるという不思議な報告です。
だから皆さん絶対におしゃぶりをしましょう!ということではありませんが、使っている方には罪悪感を減らせる事実かとも思います。
おしゃぶりを使用する際の注意点として、窒息の恐れがあるような長いヒモや大きなぬいぐるみなどはつけないようにしましょう。
9. 赤ちゃんを温めすぎない
過度な体温上昇はSIDSのリスクとなることがわかっています。ブランケットや毛布をかけたり、冬場に暖房をかけすぎたり、夏場にエアコンをあまりかけないで暑い環境で寝ていると危険です。
赤ちゃんは体温調節機能が未熟なので、温められていると体温も一緒に上がってしまいます。すると赤ちゃんの呼吸が止まるきっかけを作ってしまいかねません。
赤ちゃんが汗をかいていないか、胸を触ると熱くないかチェックしてあげましょう。
部屋の中では帽子をかぶせない、ということもガイドラインに書かれています。
10. うつ伏せで遊ぶ時間を作る
「タミータイム」とも言われるうつ伏せ遊びの時間を作ることが推奨されています。赤ちゃんが起きているときに、大人が見ている環境の中でしてあげてくださいね。
タミータイムを取り入れることで絶壁への効果も期待できます。
11. 妊婦健診を受ける
12. 赤ちゃんの予防接種を受ける
これだけ医療が発達した世の中でも、まだまだSIDSを0件にすることはできていません。1年で100人近くの赤ちゃんがSIDSで亡くなるともいわれています。
でも世に言われている「原因不明」という言葉にはあたらないくらい、原因と思われることはかなり解明されてきています。そして今の日本において対策を徹底できているご家庭はかなり少数派なのではないでしょうか。
ですから今回の対策を見直すだけでもSIDSのリスクを下げられるかと思います。
他国では病院の退院指導としてこういったガイドラインの内容やチェック項目が伝えられたり、産後の助産師訪問の際に寝床の安全性チェックをされる国もあるようです。
日本はそういった指導が他の国に比べて遅れている部分もありましたが、今回のこども家庭庁のポスター記載内容が変わったことは、安全な睡眠環境の普及に向けて大きな一歩となったと考えられます。
この内容が大切だと感じていただけたら、ぜひご家族や他の方にもシェアしてください。
▼YouTube動画でも詳しく解説しています。