店で買ったマスクを家族や友人に売ったら処罰される? 転売に関するQ&A
マスクの転売を禁止した政令について、ネット上などで見られる消費者の疑問点を踏まえ、規制の範囲を解説してみました。
Q.個人が自作したマスクの転売も処罰されるの?
A.販売の態様によります。
すなわち、市販されている家庭用マスクや医療用マスク、産業用マスクと用途や素材、形状などが変わらなければ、自作のマスクであっても、転売規制の対象です。
もっとも、材料などを準備して工作し、マスクを自作した本人が自ら販売する場合、そもそも転売には当たらないので、処罰されません。
これに対し、ネット上などでそうした自作マスクを購入した者が、さらに第三者に対して販売すると、規制の対象である転売にあたります。
Q.タダでもらったマスクの転売も処罰されるの?
A.いいえ。転売が禁止されているマスクは、転売者が「購入」したものに限られます。
無料で譲り受けたマスクを販売しても、転売とはいえません。
ただし、不正転売の容疑で警察に目をつけられると、間違いなくそのマスクのロットナンバーなどから流通経路の解明が行われ、入手先はどこの誰であり、いつ、どのような経緯で入手したものなのか、徹底した捜査が行われます。
「タダでもらったものだ」という話が嘘だと分かれば、関係者と口裏合わせをしたり証拠隠滅を行うおそれありということで、逮捕される可能性も高まります。
売買契約書や領収書などを偽造し、仕入れ時の購入価格を実際よりも高く偽るような場合も同様です。
Q.1箱だけ余っているという遠方の親から定価でマスクを譲り受けたんだけど、これを転売しても処罰されるの?
A.いいえ。転売が禁止されているのは、「不特定の相手方」に対して売り渡す者から購入したマスクに限られます。
家族や身内、友人といった、特定の限られた人物の間で売買されたマスクは、これにあたりません。
スーパーや薬店、ネットショップ、消費者向けの直販など、一般消費者がアクセス可能な店舗やネットサイトなどを通じ、広くマスクを販売する小売業者や転売屋などから購入したマスクが転売規制の対象になります。
Q.薬店で購入したマスクを遠方の家族やごく内輪の友人に利益を乗せて売ったんだけど、処罰されるの?
A.いいえ。処罰の対象となるのは、「不特定または多数の者」に対する転売に限られます。
「不特定かつ多数」ではないので、少数であっても不特定の者だったり、多数であっても特定の者が相手であれば、不正転売になります。
逆にいうと、家族間やごく内輪の友人間で余ったマスクを譲り合うなど、「特定かつ少数」であれば、処罰の対象外です。
店舗やネット上の転売サイト、通販サイト、SNSなどで手広く転売する場合が典型的な不正転売ということになるでしょう。
Q.たった1回、初めて転売しただけだし、ほんの少ししか利益を乗せていないんだけど、これも処罰されるの?
A.処罰の対象です。「業として」という縛りがないので、転売行為を反復継続する意思は不要であり、たった1回の転売でもアウトです。
しかも、購入価格を1円でも超えていたら規制の対象になります。転売が暴利である必要もありません。
もっとも、実際の検挙の際は、多数回にわたって転売し、多額の利益を上げているといった客観的な実績を踏まえ、より悪質な事案か否かが重視されることでしょう。
Q.購入価格よりも1円でも高く売ったらダメだということは分かったけど、送料などの実費をプラスして売ってもアウトなの?
A.販売の態様によるでしょう。
すなわち、プラスする部分は通常の送料などの金額を超えてはなりません。しかも、実費の具体的な内訳を明示しなければなりませんし、それ以上の利益を上乗せしてもダメです。
例えば、1千円で仕入れたマスクを送料1千円を要する消費者のところに転売する場合、マスク代1千円と送料1千円の合計2千円で販売するということであればセーフです。
しかし、マスク代1千円と送料9千円の合計1万円で販売したり、送料込みでマスク代1万円で販売すると、転売価格は1万円と評価されるので、処罰の対象になります。
Q.1千円のマスクと500円相当のタオルをセットにし、マスク代1千円、タオル代9千円の合計1万円で売ってもアウトなの?
A.アウトです。そうした「抱き合わせ商法」の場合、実質的には1千円のマスクをそれ以上の金額で売ろうとするための偽装にほかならないと評価されるからです。
ある商品に「おまけ」としてマスクを付ける場合も同様です。
Q.薬店で1千円で購入したマスクを、ネット上の物々交換サイトを使い、この金額以上の物と交換したんだけど、これも処罰されるの?
A.グレーです。すなわち、民法上、譲渡には売買だけでなく交換も含まれるわけですが、今回の政令で規制される譲渡は、あくまで譲渡する側が「売買契約」の締結を申し込み、あるいは誘引をして行う場合に限られています。
すなわち、売買が前提となっており、交換は除外されているわけです。
ただし、売買代金を現金ではなくギフト券やギフトカード、郵便切手などで支払うということだと、売買の一形態にすぎず、交換とは評価されないでしょうから、購入価格を超過していれば処罰の対象となります。
Q.相手が「売ってくれ、売ってくれ」としつこく迫るから、やむなく売ったんだけど、これも処罰されるの?
A.グレーです。こちらが売ると言っていないのに、執拗に販売を強いられたといった場合、転売者が申し込んだとか誘引したとはいえないと評価される余地があるからです。
もっとも、店舗や通販サイトに商品として提示したり、転売サイトに出品することで消費者もその存在を知るでしょうから、実際には先ほどのようなケースは想定しにくいところです。(了)
(参考)
拙稿「『ホッチキス替芯1万円』実はマスクの転売だった 闇取引の『抜け道』どう塞ぐ?」