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子猫、呼び鈴を鳴らして「エサを要求する!」一体どうやって学んだ?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
YouTube「ねこナビ編集部」の「育児放棄された子猫たちをお迎えしました。」

2匹の猫(ぶるるちゃん、べるるちゃん)が呼び鈴を鳴らして、エサをもらうなんともかわいいCMを見たことがある方も多いと思います。そのCMに出ていたぶるるちゃんが、今年の4月に亡くなりました。

SNSの投稿の写真などを見ると残ったべるるちゃんが、なんともさみしそうに見えました。そこに、飼育放棄された子猫のくるるちゃんとまるるちゃんがやってきました。

その後、くるるちゃんが、短期間で呼び鈴を鳴らすようになったのです。一般的に、猫にこのような動作を教えるのは、難しいことです。生後4カ月のくるるちゃんが、どのように呼び鈴を鳴らす動作を習得したのかを見ていきましょう。

元気な頃のぶるるちゃん

@CatNaviDesk 左ぶるるちゃん(キジトラ) 右べるるちゃん(白黒)

登録者数53万人を超えるYouTubeチャンネルや、猫のニュース・写真などを配信する情報サイト『ねこナビ』を運営する『ねこナビ編集部』のぶるるちゃんとべるるちゃんが"呼び鈴を鳴らす猫”としてキャットフードのCMにも出演し人気者でした。

そのぶるるちゃんが、今年の4月に亡くなり、べるるちゃん大丈夫かな、と心配していました。

獣医療の臨床現場で、仲良しの猫が亡くなると、体調を崩す子がいるからです。べるるちゃんにももしもことがあれば、と心配してSNSを見守っていました。

そこに飼育放棄された乳飲み子のくるるちゃん(顔の半分が黒)とまるるちゃん(顔にMの字がある)兄妹猫がやってきました。

くるるちゃんめきめきと学習

ねこナビ編集部 育児放棄された子猫たちをお迎えしました。

くるるちゃんは、3カ月と18日で呼び鈴を鳴らせるようになったそうです。

くるるちゃんは、飼い主が先輩猫・べるるちゃんが呼び鈴を鳴らしている姿を見せたり、手を取って押させてみたりしているうちに呼び鈴の横を叩くようになったそうです。

飼い主のねこナビ編集部の投稿で「ほとんどこの人(べるるちゃん)が教えてました」とあります。

猫同士ですが、犬のように群れ社会を作り、先輩猫・べるるちゃんがくるるちゃんに指導したのでしょうね。

ひとりでも呼び鈴を鳴らすことができたくるるちゃん

@CatNaviDesk  くるるちゃん

くるるちゃんは、みるみる上達して上の動画のように、ひとりでも呼び鈴を鳴らすことができています。

犬は群れ社会のなかで飼い主のいうことをよく聞く存在でした。人間のために、働いてくれる盲導犬、聴導犬、介護犬、警察犬、麻薬犬などがいます。

その一方で、猫は傍らにいるだけでよい存在でした。基本的には、「犬は人になつき、猫は家になつく」といわれています。

しかし、このくるるちゃんは、べるるちゃんがいる新しい環境になじんで、そして人間にもなじんで呼び鈴を鳴らすことまで習得してすくすくと成長しています。

最近の猫は群れをつくり、芸を覚える

@CatNaviDesk 左くるるちゃん 中央べるるちゃん 右まるるちゃん

亡くなったぶるるちゃんは、保護猫です。相方のべるるちゃんも保護猫です。この2匹は血縁関係はありません。それでも、呼び鈴を鳴らすことを学習しました。

子猫のくるるちゃん、まるるちゃんは飼育放棄された猫です。血統付きの猫ではないけれど、これほどまでに飼い主のことを理解して、呼び鈴を鳴らす行為をしてくれるのです。

猫を飼育放棄する人、そして多頭飼育崩壊に陥る人のニュースを見るたびに、暗い気持ちになります。愛情を持って育てるとくるるちゃんのように、呼び鈴を鳴らす猫にまでなるのです。

ひとつの命を大切にいとおしんで飼ってもらいたいと切に思います。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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