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中居正広が語るアイドルの“反抗期”と有田哲平が語る芸人の“トガリ”

てれびのスキマライター。テレビっ子
『まつもtoなかい』(フジテレビ)のTVerサムネイル画像より

アイドルの反抗期

10月1日放送の『まつもtoなかい』(フジテレビ)のゲストはSexy Zone・中島健人と中島が「僕にとっては神様のような存在。めちゃめちゃ影響を受けました」という東方神起。

最初は、中島だけが登場し、松本人志と中居正広と3人でトーク。

その中で、中居がもうすぐ30代に突入する中島に自身の経験を元に語った「アイドル論」がとても興味深かった。

中居は、日本におけるアイドルの魅力は「未完成」のことであるとして語り始める。

中居「僕が思っているアイドルの魅力って未完成、半人前。一人前になるまでの過程を、若い女の子ががんばってーって(見守る)のが魅力のひとつで。でもどっかで自分は、30歳くらいになると『僕、そんなに半人前じゃないんだけど』っていうところにちょうどぶち当たる年齢で、ちょっともがこうとしているというか。一番最初の反抗期は30歳くらいにくるんじゃないかなって」

本人たちは、一人前として認められたいし、プロとしてのプライドもある。しかし、周りからは素人っぽさを求められる。そこにギャップがあり、ジレンマが生じてしまう。

そこで、金髪にしたり、ヒゲを生やしたり、ビジュアルから変えがちだと中居は笑って振り返る。「僕ですら髭伸ばしたことがありますから。で、伸ばして、あ、ヒゲ似合わないんだって(笑)」と。

そして自身のようなアイドルが置かれていた利点が、逆に苦悩を生んでいたことを告白する。

中居「俳優さん、ミュージシャン、お笑いの人っていうプロのところにアイドルも行くわけですよ。ドラマやったり、バラエティ出たり、歌も歌ったり。でもその中に入ると自分の未熟さを感じたりする。その劣等感をアイドルは持ってると思うんですよね。自分はそこに行ってもプロではないっていうことに、ちょうど30歳くらいになると気づき始めるんですよ。で、もがかなきゃいけないという。

アイドルって山頂にピョンって連れて行ってくれるんですよ。ホントは段々登っていかなくちゃいけないんだけど。で、山頂の景色を見るわけですよ。夢のような景色を見て、酸素は薄いはずなんですけど、酸欠にも気づかないくらい。若いから。次の山があるとまた連れて行ってもらえる。でもよく考えると登山中のリュックは持ってないし、持ってくれているリュックの中に何が入っているかもわからないまま山頂に連れて行ってくれるんですよ。で、この辺の年齢(30歳頃)になってくると、じゃあ、その辺まで自分一人で登ってみなってときに、え?リュックって何入れるの?どんな道具入れるの?歩いていかなきゃいけないの?ってことに気付かされたときに、何もできないってことにスゴくおびえる

それを聞いて中島は「本物じゃないって気づくのも今の歳だし、本物にならなきゃいけないと気づくのも今の歳なんですよね」と共感を寄せている。

日本におけるアイドルを取り巻く特異な状況とその当事者の心境がよくわかり、とても興味深かった。

中島がリスペクトして会いたいと呼んだのが「完成」と評す東方神起だったことも象徴的だった。

(※この模様は10月8日までTVerで視聴可能

お笑い芸人のトガリ

芸人にとっての「反抗期」は、いわゆる「トガリ」期だろう。

翌日深夜に放送された『ソウドリ』(TBS)では、くりぃむしちゅー・有田哲平が平成ノブシコブシ・徳井とともに「トガリ論」を語っていた。

有田「トガリっていうのはなんだってなんったときに、要は『俺、面白いだろ、ひれ伏せ』みたいなこと。本来、笑いってさ、サービス業なわけじゃん。だから、何しようが笑ってくれたら『あざーすっ!』ってならなきゃいけないはずなのに、『お前らが笑ってんのは俺のおかげなんだよ』っていう時期がやっぱあるんだよね。それは実は鎧なんだけど。そういう風にやっとかないと芸人のプロとして自分のポジションがないから」

徳井「傷つきますしね、スベったら」

その時期が、いつ頃かと言えば、有田は「アマチュアからプロになった瞬間だろうね」と持論を展開する。「『俺はもうお前らとは違うよ、笑いの取り方のレベルが高いからね』っていうのを見せなきゃ恥ずかしいんだろうね」と。

アイドルの反抗期がデビューしてからしばらく経ってからやってくると中居は語ったが、芸人のトガリは、デビューしてまもなく訪れる。その違いが興味深い。

有田「でもこれがどこからかさ、笑ってくれている人、視聴者がいてからこそ俺たちは成立しているんだっていうことにポンッと気づくというかジワジワ気づいたらそれがとけていく。先輩の背中を見るのか、『今日も俺たちで笑わせようや』って言ってスカしてたら、こっちで泥まみれになってたり、落とし穴に落ちてスタッフみんなが腹抱えて笑ってるのを見始めたときに、『え?なんだっけお笑いって』ってなっていって。俺、あんな腹抱えて笑わせたことねえぞって思うわけ

有田も、天然な部分があったマネージャーが、スタッフらの中心で爆笑を生んでいたのを見て「敗北感」を味わい、「俺たちが学生の頃、部室でやってたのっていうのはただ笑いを取りたいからしつこく先生をイジったり、ケツ出したりとかしてた」ことを思い出し、トガリがとけていったという。

徳井「今すぐテレビ出たい人は、トガリをとかすしかないですね。自分が面白いんだって思われたい気持ちをとかして、その場が一番楽しくなった瞬間に自分がそこにいたってことが大事なんですよね」

(※この模様は10月10日までTVerで視聴可能

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ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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