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「井岡が統一戦をするならその勝者と戦いたい」WBA暫定戦に挑む新鋭直撃インタビュー

杉浦大介スポーツライター

4月20日 ブルックリン バークレイズセンター

WBA世界スーパーフライ級暫定タイトル戦

ジョン・“スクラッピー”・ラミレス(アメリカ/27歳/13-0, 9KOs)

12回戦

デビッド・ヒメネス(コスタリカ/32歳/15-1, 11KOs)

 今週末、デビン・ヘイニー(アメリカ)対ライアン・ガルシア(アメリカ)戦という注目ファイトのアンダーカードで軽量級の好カードが用意された。

 無傷の13連勝でWBAスーパーフライ級ランキングを駆け上がり、指名挑戦者になった“スクラッピー(喧嘩好き)”・ラミレス。同級王者の井岡一翔(志成)は統一戦路線ゆえに挑戦は叶わず、ここで暫定タイトル戦に臨むことになった。

 まだボクシングを始めて7年、アマ歴もごくわずかながらもゴールデンボーイ・プロモーションズに認められた実力、魅力の持ち主である。少年期にはアメリカとホンジュラスを行き来し、ロサンジェルスの貧困街も生き抜いた気鋭のボクサー。

 独特のファッションと威勢のいい語り口が印象的な27歳は、初のタイトル戦でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。今後、井岡と絡むこともあり得るのか。決戦直前の18日、単独インタビューでじっくりと話を聞いた。

井岡は“いい選手”で、自分は“すごい選手”

――井岡選手への挑戦が実現しなかったことはやはり残念でしたか?

ジョン・ラミレス(以下、JR) : 井岡は他にやりたいことがあったということだ。“ハイリスク&ローリターン”の俺とは戦いたくなかったのだろう。井岡がベルトをもう1本、増やしたいという気持ちは理解できる。統一戦の勝者と対戦したいよ。俺はランキング1位の指名挑戦者なのだから、もう挑戦権は手に入れた。だからその機会が巡ってくるのを待つが、その一方で今回の対戦相手を見過ごすつもりはまったくない。この試合にしっかりと勝って先に進むつもりだ。

――現在、スーパーフライ級には井岡以外にも強豪選手がたくさんいて、あなたも短期間でその仲間入りをしたことをどう思いますか?

JR : いい選手がたくさんいるから俺はこの階級を気に入っているんだ。わくわくするし、誰とでも戦う準備はできている。最高の選手と戦っていきたい。

――もう1つだけ井岡選手の質問ですが、4階級を制した井岡選手のボクサーとしての印象は?

JR : いいボクサーだよ。複数階級を制し、防衛を重ねた実績もある。もちろん井岡はいいボクサー。ただ、彼は“いい選手(good fighter)”で、俺は“すごい選手(great fighter)”だ。GoodとGreatの違いだよ。

撮影・杉浦大介
撮影・杉浦大介

――ボクシングを始めて7年で暫定とはいえ世界タイトルに手が届くところまで来ました。早い出世に自身でも驚いていますか?

JR : まったく驚いてないよ。自分を信じていなければ、こういう姿が思い描けてなければ、何事も実現できなかったはずだ。自分はこれだけのことがやり遂げられると信じてきた。だからこそ今、ここにいられるんだ。

レジェンドとして名前を残したい

――あなたはスピード、身体能力を備え、何度か豪快なKOを見せているようにパワーにも恵まれています。自身の能力の中で最も誇りに思う部分は?

JR : マインドセットだ。ボクシングIQも含め、心の強さだ。苦しい状況になったとき、本当の姿が世にさらされる。本物のウォリアーがどういうものか、そのときにわかる。生きるか死ぬかの勝負をする準備はできているよ。

――今週末は大観衆を集めて行われるビッグステージになります。アピールするためにKOを狙うんでしょうか?

JR : まずは勝つことが大事だが、観客を喜ばせたいという気持ちは常にある。KOの機会があったら狙いにいくよ。俺は何でもこなせるし、面白い試合ができるボクサーだと思っている。

――子供の頃のフェイバリットボクサーは?

JR : フェイバリットと呼べるかはわからないけれど、ヘクター・“マチョ”・カマチョ(プエルトリコ)の試合を見るのが好きだった。それからエドウィン・バレロ(ベネズエラ)、サルバドール・サンチェス(メキシコ)、フロイド・メイウェザー(アメリカ)、B-Hop(バーナード・ホプキンス(アメリカ))・・・・・・。俺は“ボクシングの生徒”だから、いろんな選手の試合を見ている。そこから少しずつでも学ぶようにしている。フロイド、マニー・パッキャオ(フィリピン)、ジェームズ・トニー(アメリカ)といった王者たちや、それ以外にもジムで目にする多くの選手から学んで今の“スクラッピー”があるんだ。

――ボクサーとしての最終目標は?

JR : 自分自身のレガシーを築き上げていきたい。いくつかの世界タイトルを取り、より安定した未来を手にしたい。そして、他の人々の人生も変えられるようになりたい。俺の人生と、他の人の人生をよりいいものにしたい。レジェンドとして名前を残し、人々が書物を開いたら“スクラッピー”・ラミレスの名前が飛び出してくるようになりたいんだ。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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