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金正恩氏と金与正氏、同時期に親書と抗議談話で韓国揺さぶり。コロナ対策の支援狙う?

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
文在寅大統領に親書を送った金正恩朝鮮労働党委員長(写真:ロイター/アフロ)

 韓国・聯合ニュースによると、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が4日、文在寅韓国大統領に親書を送ったと、韓国大統領府が5日明らかにした。親書で金委員長は新型コロナウイルスの韓国での拡大状況に懸念を示したうえで文大統領を慰労したという。

 北朝鮮は3日の段階で金委員長の妹、金与正党第1副部長がミサイル発射に関連して談話を発表し、韓国大統領府を猛烈に批判していた。一方で、同時期に金委員長本人名義の親書を送り、韓国側を同情する気持ちを伝えていたことになる。ロイヤルファミリーの2人が異なる課題で硬軟両面の対応を示したわけだ。

 北朝鮮側には、韓国世論を揺さぶるとともに文大統領を自国にひきつけ、南北関係で主導権を得たいという考えが垣間見える。

 一方、北朝鮮側はコロナウイルスについて「感染者なし」と主張し続けているものの、検査態勢などが不十分なため感染状況の掌握は困難な状況とみられる。北朝鮮としては南北間のムードを好転させたうえで、自国のウイルス対策への韓国からのまとまった支援を受けたいという思惑があるとみられる。

 聯合ニュースによると、大統領府発表のポイントは次の通り。

▽金委員長が昨日、文大統領に親書を送ってきた

▽金委員長は、親書でコロナウイルスと闘っている韓国国民に慰労の意を伝えた

▽金委員長はまた(韓国が)必ず勝ち抜くことを信じる。南(韓国)の同胞の大切な健康が守られることを祈りたい

▽金委員長は、文大統領の健康を心配して、切ない心情を表わした

▽文大統領がコロナウイルスを必ず克服できるよう、静かに応援すると言い、文大統領に変わらない友情と信頼を送った

▽金委員長は、特に親書で、朝鮮半島をめぐる情勢について率直な感想や立場も明らかにした

▽文大統領はこれに対し、感謝の意を込めた親書を金委員長にこの日送った

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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