富山県の三大銘菓「元祖おわら玉天」卵の魅力と老舗の発想力が生み出した、ふんわり溶ける淡雪食感
和洋問わず、卵白を使用したお菓子は沢山!サクサクとした軽やかでクリスピーな焼き菓子、ふんわりとした食感としゅわしゅわとした音が聞こえてきそうな口溶け、ぷるんとした弾力…卵、いえ、卵白って変幻自在なんですよね。
そんな卵白を使用した銘菓を明治末期から販売しているのが、富山県富山市に本店を構える「林盛堂本店」さん。初代のご子息がお店に作り方を教えた、ともいわれているそうです。当時としては、ずいぶんハイカラな御菓子だったことでしょう、令和の今でも斬新といいますか不思議なお菓子だなぁと。
そしておわら天の「おわら」と申しますのは、富山市八尾町に約300年の間続く盆踊りのひとつ。パレードのように行列をなして踊る様は、優雅で幻想的なのだそう。
今回はそんな郷土の歴史と文化が詰まったお菓子「元祖おわら玉天」をご紹介。
よく煮詰めて溶かした寒天とお砂糖を、卵白を泡立てながらダマにならないように加えていきます。ふと思ったのですが、バタークリームに使用されるイタリアンメレンゲに作り方が似ているではないかと。イタリアンメレンゲには寒天は使用いたしませんが、イタリアンメレンゲがフランス菓子に取り入れられたのは1800年代中頃、そしておわら玉天が販売されはじめたのが1800年代後半から1900年代前半。不思議なご縁を感じます…共通するのは、職人さんの探求心とお菓子と真摯に向き合う姿勢などでしょうか。
一晩冷やした卵白を立方体に切り分け、卵液に浸して天板の上でひとつひとつ丁寧に焼き上げていくのですが、その卵液にはなんと焼酎が配合されているとのこと!開封と同時に飛び出してくる芳醇な香りは、味醂やお砂糖だけではないなと思っていたので食品表示ラベルを見て納得。
常温の場合はもちもちっとした弾力の中に、ねっとりとした滑らかさが潜んでいます。この独特の食感はなるほど、寒天の力。そして出来立てに近いものを味わえるという、余熱をしたオーブントースターで少し温めてから頂くというのもまた絶品!かり、ふわ、とろっというめまぐるしく変化する豊かな表情の食感は、どこか今どきっぽさをも感じます。
私は温めたものがダントツで好みでした。尚、こちらは食感が変化してしまうため電子レンジでの加熱は厳禁!ひと手間かける際は、オーブントースターかフッ素樹脂加工が施されたフライパンでぜひ。
加熱した際、まっすぐにいくつもの筋を上げながら立ち昇るような、甘美な香りは格別です。元祖の出来立てを、自宅で味わえるなんて幸せですね。