松井友飛(楽天)、長谷川威展(日ハム)に続け!金沢学院大の次期ドラフト候補・堀本尚也
■松井、長谷川を超える逸材
「実は来年、もっといい選手がいるんですよ」。
そう言って、金沢学院大学の長谷川潤投手コーチ(石川ミリオンスターズ―読売ジャイアンツ―石川ミリオンスターズ)はニヤリと笑った。
母校の投手コーチに就いて2年目となる今年、長谷川コーチは松井友飛投手(東北楽天ゴールデンイーグルスD5位)、長谷川威展投手(北海道日本ハムファイターズⅮ6位)の2選手をプロ野球の世界に送り込んだ。
「体ができていないと技術は身につかない」という信条のもと、体づくりとコンディショニングを徹底的に指導し、それを「プロ入り」という成果で実証したのだ。(関連記事⇒長谷川潤、母校のコーチに就いて教え子をプロへ)
その長谷川コーチが「松井、長谷川以上」と期待するのが、現在3年生の堀本尚也投手だ。和歌山県は熊野高校出身の右腕である。高校時代はまったくの無名選手だった。
「まっすぐが強くて、ボールが動くのが特徴。そんなに目いっぱい投げるフォームじゃなくて、ゆったりしていて力感がないのにズドンとくる。低めのまっすぐはゴロを打たせて、ある程度の高めは空振りを取れる。まっすぐだけでも十分にバッターを抑えられるけど、それに加えてスライダー、カットでタイミングをズラすことができる」。
長谷川コーチが絶賛するように、堀本投手は今年の秋季リーグ戦では5試合(31回)に投げて4勝0敗、防御率0.29と好成績を収めた。春の雪辱を果たした格好だ。(春は5試合 4.2回 防御率3.86)
堀本投手は「春が全然ダメだったんで、そこから夏まで強化練に入った。長谷川コーチからも『エースになれ』とか『そんなんじゃダメ』とかけっこうきつい言葉も言われて、もう何も考えずにガムシャラに練習をやった」と振り返る。
そして秋に結果がついてきた。結果が出たことで自信が深まり、今はただひたすらプロを目指して研鑽に努めている。
■プロを目指せる選手だと思っていなかった
大学に入った当初は「まったく思ってなかったです」とプロ入りなど眼中になかった。というより、「プロを目指せる選手だなんて自分では思わなかったんで」と意識する以前の問題だった。
そもそもが小学3年生で野球を始めたのも「仲よかった友だちが全員野球を始めて、遊ぶ友だちがいなくなったんで自分もやろうかな」というのが理由だった。中学でも「そこまで情熱っていうのはなくて、ただやってたみたいな感じ」と硬式のリーグに入るでもなく、学校の部活で軟式野球を楽しんでいた。
高校に進学したときも、「ほんまは野球をやるつもりなくて」といろいろなクラブの体験をしに行った。最後に野球部を覗いたとき、「先輩がかっこよく見えて」と結局、野球を続けることにした。しかし強豪校でもなく、「3年の夏が(熊野高の)10年連続初戦敗退の最後の年でした」と在学3年間、夏の和歌山県大会はずっと初戦敗退だった。
引退し、進路の相談をしたときだ。野球部の監督から「おまえは絶対に上で続けろ」と金沢学院大を勧められた。「絶対にできるから」という言葉に後押しされ、「じゃあ、やろう」と大学でも野球を続けることを決めた。
そんな“野球人生”だったから、長谷川コーチに出会うまで「プロ」という言葉など自身の中に存在すらしていなかった。いや、長谷川コーチから「プロを目指す意識でやれよ」と言われても、当初はまったく現実味はなかった。
■2人の先輩の存在
しかし長谷川コーチの指導のもと、どんどん成長していくに従って、その心のありようも変化していった。また、1つ上の先輩たちがドラフト会議で指名されるまでを、もっとも間近で見てきた。それらのことが、堀本投手に「プロ」をリアルに感じさせるようになっていった。
「松井さんや長谷川さんが指名されたときは『すごいな』っていう感情と『悔しいな』っていう感情もありました。僕も行かなあかんなっていうか、プロに対しての気持ちがより強くなった」。
ずっと一緒にやってきた先輩たちの指名は、それほど刺激を与えてくれた。
「二人には普段からよくしてもらっていた。松井さんは『周りを見る力』がすごいと思う。長谷川さんは練習の知識とかすごくて、もう貪欲にずっと練習していた。両方とも僕にないものだったんで、それらを取り入れてやっていきたい」。
二人から得たものは、今後も活かしていくつもりだ。
■力強く、微妙に動くストレート
「まっすぐが力強いところ。1球で仕留められるまっすぐ」とストレートに自信を持つ。長谷川コーチが言うように「微妙に動く」というところも、ほかの選手にはないセールスポイントだが、金沢学院大が導入したラプソードも一役買ったようだ。
「自分のボールとほかの人のがどういう変化や違いがあるのかというのが数字で出てくるので、それを元に練習もできている。その数値で、自分のまっすぐは動くから、これを武器にしたらいいということもわかった」。
その真っスラ気味に動くボールを右打者の外…いわゆる“原点”にしっかり投げられるよう、強化練習でも繰り返しそのコースに投げ込んできたという。コントロールにも自信がついた。
■長谷川コーチから授かった2つの教え
長谷川コーチから授けられた2つの教えは、今の堀本投手の軸となっている。
「1つは『自分の体を知る』ということです。『ケガしてたり疲れている状態で練習しても技術はうまくならないよ』ってずっと言われている。それを言われてからケアをしっかりするようになって、大きいケガなく一年やることができた。自分の体を知って、しっかりコンディショニングするということの大事さは一番教わった」。
体を作ることやコンディションを整えることの重要性は、長谷川コーチが自身の体験から会得したことだ。
「もう1つが『自分の行きたいところをどれだけリアルに想像できるか』ということ。僕だったらプロ。『想像したらそっちの方向に進む』ってずっと言われている。『行ける』と思って、どういう過程で行くのかというのを細かいところまで考えるようにと教わった」。
そのために毎日ノートに目標を書き、それを寝る前と朝起きたときに口に出す。声にして発することでより意識が高まり、「全然変わってきた」と実感しているという。
■一番いい成績でプロを終えたい
そんな自分を客観的に見て、「いやぁ、こんな自分もいたんだなぁ。流されて流されて、なんとな~くやってきたものが、ちゃんと今、自分の意思で目標を持ってやっている」と照れ臭そうに語る。
人との出会いは大きい。長谷川コーチと出会っていなければ、そんな自分を発見することもなかったかもしれない。ピッチングはもちろんだが、そういう変化できる柔軟性をも長谷川コーチは見抜いていたのだろう。
来年は4年生だ。プロ入りに向かって勝負の年となる。松井投手や長谷川投手に続いてプロ入りすることしか考えていない。そして、もうすでにプロでの目標は定まっているという。
「松井さん、長谷川さん、長谷川コーチよりいい成績を収めたいとは思ってます。プロを終えたときに僕が一番いい成績で終わることを目指してます!」
ずいぶんと先の話だが、そこまで明確なイメージを描いて堀本投手は最終学年を迎える。
(表記のない写真の撮影は筆者)
【堀本尚也】
2000年10月14日生/和歌山県/熊野高校
175cm・80kg
右投右打
ストレート(最速151キロ)・カットボール・スライダー