オールブラックスに善戦? いや、日本代表は「結果を出さないとだめ」と反省。【ラグビー旬な一問一答】
ラグビー日本代表は10月29日、東京・国立競技場で改築後最多となる65188人のファンのもとでニュージーランド代表に激突。ワールドカップで過去最多タイとなる3度の優勝を誇る通称「オールブラックス」を相手に、31―38で惜敗した。
「悔しいっすね。皆のきょうのウォームアップでの表情を見ても自信に満ち溢れていたし、勝てなかった、足りなかった…と、感じています。いいゲームしたかな、とも思いますけど、勝てないと、結果を出さないとだめな部分もありますし。ミスもあったし、タックルミスもあったし、ペナルティもあったし、考えれば考えるほど、『ここをこうしていれば』というものがあります。それを修正して、次に向かっていかないといけない」
こう語るのは、フル出場したフッカーの坂手淳史主将。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチと会見し、悔しさをにじませた。
以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
ジョセフ
「選手たちはいい試合をしてくれました。勝てるチャンスを作った。もし勝っていたら、日本の歴史に残った。チームは(9月上旬の候補合宿から)計約6週間、一緒にやってきて、コネクトしてきた。なかには試合に出られない選手もいるが、彼らも自分を犠牲にしてでも(出場選手を)手助けをしてくれた。そういう選手がいたからこそ、いい方向に行くことができた。そういう選手に感謝しなければいけない。文句を一言も言わず彼らは準備をしてくれた。
試合では、最初からやりたいことができた。本当に勝てるところまできた。勝てるのに十分なチームになってきたが、最終的に届かなかった。ノックオン、小さなミス、ペナルティ…。改善点は、修正しなければいけない」
坂手(少し目に光るものが浮かんでいるような)
「まず、(来場者数が)65000人を超えた素晴らしい場所でラグビーができたのは楽しかったですし、素晴らしい経験になった。来てくれた方にはありがとうと伝えたいです。たくさん応援していただいてよかったです。
今週の準備で、勝つ自信を持って、きょう、このグラウンドに立ちました。積み上げてきたものはこの1週間だけではなく、その前の約6週間を含め、素晴らしいもの。勝つと思ってグラウンドで戦いました。最後は届かなかったです。ジェイミーの言う通り、たくさんのミス、ペナルティがあった。いま思い出すだけでも、たくさんのタックルミスもあるのですが、この1週間やって来たことは間違っていなかった。僕たちの目指すラグビー、やっていかなきゃいけないラグビーは見せられたと思います。後は最後、勝つところまで持っていけるラグビーを見せたいです。また、頑張っていきたいです」
チームは9月上旬から候補合宿をはじめ、10月の対オーストラリアA・3連戦(非テストマッチ)を経てこのゲームに臨んでいた。今秋初の試合となったオールブラックスをいい状態で迎え撃つべく、実地訓練を積んできた。
——今日の試合でもっともポジティブに映ったことは。
ジョセフ
「今日の試合では沢山いいところがあり、ひとつには絞れない。ただ前回、オーストラリアAを相手に20点差で勝っていても相手に勢いを与える…ということがあった。そんななかでも、オーストラリアAとの3連戦で土台を作れた。チームを繋げられた。選手たちの信念、やる気は前向きに映りました。
これからティア1チームに勝つうえでは、個々の細かいミスをしてはいけないとわかったと思います。ミスが多すぎたことが(勝敗に)影響したと思っています。ラインアウトはよかった。ゲインラインを取れた。相手のモールもシャットダウンできた。それでも勝つのに十分でないのが、浮き彫りになった」
首脳陣にジョセフをはじめ元オールブラックスを並べる日本代表は、戦前、向こうの民族舞踊「ハカ」に対しても対策を施す。後列の選手を凝視するよう意識したのだ。前列が先住民族のマオリ族にルーツを持つ本格派が並ぶのに対し、後列にはやや踊りに自信のない人もいるという傾向を鑑みた。
試合では「ストリートファイト」を合言葉に先手必勝を意識。0―0で過ごした序盤からワイドアタック、ダブルタックルを重ね、自陣ゴール前へ入られてもフランカーのリーチ マイケル、ウイングの松島幸太朗がトライセーブを重ねる。
やがて防御の繋がりを断たれたり、ラインアウトから一撃必殺のムーブを決められたりして一時3―21とされたが、白旗を上げなかった。
前半37分、自陣22メートル線付近右中間でのターンオーバーから連続攻撃を開始。右オープンに振りながらのキックを追いかけるさなか、相手フルバックのスティーブン・ペロフェタのミスボールをスタンドオフの山沢拓也がドリブルし、そのままグラウンディング。10―21と迫る。
続く37分には、グラウンド中盤でルーズボールを拾うや左へ展開。守っても好タックル連発のアウトサイドセンター、ディラン・ライリーが左タッチライン際を切り裂き、最後はスクラムハーフの流大がフィニッシュ。直後のゴール成功で17―21と迫る。
相手バックスリーの防御の隙を突く形で、僅差で後半を迎えられた。
坂手
「3-21になった時、相手に流れがあった。そのなかでも我慢しながら、山沢のトライ、流さんのトライを…。それが、ラグビー。厳しい流れのなかでも我慢していれば、自分たちのチャンスが来るのがテストマッチラグビー。(流れを)手離さないでいけたところは、よかったです。前半、得点を挙げながら相手に食らいつくことができたと思っています」
勝負は最後までもつれた。
後半2分にはオールブラックスが、日本代表の防御網を接点方向へ集約させて大外へ展開。深い角度のパスをつなぎ、最後はウイングのケイリブ・クラークが坂手のタックルを外してフィニッシュ。日本代表は17―28と再び点差を広げられる。
しかし、この日が秋の初戦だったオールブラックスは、その後、空中戦のラインアウトでミスを連発。日本代表のモールへの防御と相まって、追加点を取るのに難儀した。
すると16分、日本代表はワーナー・ディアンズがキックチャージからのトライを決めるなどして24―28と接近。反則を契機に24―35とされてからも、26分、ロックのブロディ・レタリックの一発退場を受けて流れを取り戻した。
好ジャッカル連発の姫野和樹がチーム4つ目のトライを奪ったのは、後半39分。直後のゴール成功で31―35とし、ラストワンプレーに賭けた。
最後は名手のスクラムハーフ、アーロン・スミスの試合運びとジャッカルを経て31―38とノーサイドを迎える。
現場がこの好試合をよしとしないあたりに、この試合の価値が浮かび上がった。
——いい形で試合ができた。いつオールブラックスに勝てるか。南半球のラグビーチャンピオンシップに参加できるだろうか。
ジョセフ
「試合は勝つか負けるかはその日に決まる。オーストラリアも南アフリカ代表Aも然り。25年前、オールブラックスと戦うことにはどのチームも怖かった。いまは違うかもしれない。今日この試合に向かうなか、我々は自信を持って迎えた。しっかりと自分たちのやることをやれれば、勝つチャンスを作れる。その自信のもと、この日を迎えました。セットピースでも身体の大きな相手に対応した。ディフェンスでも勝っていかなければいけない(と思い鍛えた)。アタックでも自信がある。まだ、勝てない。課題としていきたい」
——きょうは早めの選手交代が目立ったが。
「自分としては選手を評価し、試合がどんどん進むなか、選手にどう貢献してもらいたいかを考えなくてはいけない。この試合では、相手に圧力をかけなければいけない。それは点差を近づけ、試合を運ぶことです。ここで選手交代によってエナジーを出してもらううえでは、先週にインパクトを出してくれたメンバーの活躍が信用できるものだ(と考えていた)。いつ、どのタイミングでメンバーを代えるかは試合を観ながら。具体的な答えはないです」
ちなみにオールブラックスは20キャップ以下の選手の数が23名中11名。選手層拡大に着手する日本代表より4名少ないだけだった。勝ったイアン・フォスターヘッドコーチは「日本の皆さん、おめでとうございます」と述べた。