深圳に続き広州でも…中国で相次ぐ刺殺事件 犯人は「外来者」か?
10月9日、中国でまたも無差別殺人事件が起きた。場所は広東省広州市で、刃物を持った男(60)が通行人3人を襲い、負傷させた。事件は小学校の校門前で発生し、負傷者のうち2人は小学生だったという。
中国メディア『財新網』によると、逮捕された男は以前も殺人未遂を起こし、実刑判決を受け、刑務所に入った経歴があったことがわかった。
男の詳しい素性はまだ明らかになっていないが、中国では、23年7月に広東省で刃物を持った男が幼稚園を襲撃した事件、今年5月に雲南省の病院が襲撃された事件、6月に吉林省で米国人教員が襲撃された事件、同じく6月に蘇州市で日本人母子が襲撃された事件、そして、9月には深圳市で日本人男児が刺殺された事件などが発生している。
そのうち、蘇州の事件の犯人は、他の都市から蘇州にやってきた「外来者」だったことがわかっている。
中国での「外来者」の存在
他の事件の犯人の詳細はわからないが、今回、広州の小学校前で起きた事件について、中国のSNSを見てみると「広州は外来者が多いからな……」というコメントがいくつかあることに気づいた。
日本人男児が殺害された事件も、広州に隣接する深圳市で起きており、深圳はとくに「外来者」が多いことが昔から知られている。「外来者」とは、もともと深圳生まれではなく、仕事などのため、他の場所からやってきた人々のことを指す。
では、中国の都市で「外来者」とは何を意味するのだろうか。
中国には「農村戸籍」と「都市戸籍」という2つの戸籍があり、蘇州市、深圳市などの都市で働く場合は、その都市の「受け入れ先」がなければならない。雇用側がその人を一時的に都市の「団体戸籍」(都市戸籍のひとつ)に入れ、そこに入ることによって、「準市民」のような扱いとなり、医療や社会保障などを受けられる仕組みになっている。
だが、それはもともと都市生まれ、都市育ちの人が受けられるものとは少し異なり、場合によっては差別的な待遇となることがある。出稼ぎ労働者の中には、そうした「団体戸籍」に入ることさえできず、日雇い労働者向けの安い宿で生活する場合もあり、病院にかかることもできない。
近年では、「外来者」の中にホワイトカラーの会社員も増えてきているため、戸籍制度は徐々に変わってきているが、言葉使いや外見などで「外来者」とわかるため、差別を受けることもあり、疎外感や孤独、無力感、都市出身者への妬みなどを感じる人も少なくない。
今回の刺殺事件や、9月に深圳で起きた事件の犯人の経歴や動機は明らかになっていないが、日本人の「地方出身」というのとはまったく異なる中国独特の「外来者」の存在は、経済が悪化し、失業率が高くなっている今、中国社会の不安要素のひとつになっているといえる。