楽天モバイル「0円廃止」は成功? でもまだ油断できないワケ
8月10日、楽天グループの決算説明会では、モバイル事業の「0円廃止」が業績に与えた影響が明らかになりました。三木谷浩史会長兼社長によれば、収益改善の見通しは立ったとのことですが、まだ油断できない要素があります。
契約数は異例の減少
楽天モバイルが自社で基地局を展開する自社回線サービスは、これまで順調に契約数を伸ばしてきました。しかし2022年6月末の契約数は477万件と、3月末と比べて14万件、500万件を突破した4月と比べると22万件の減少となりました。
ここ1年ほど、楽天モバイルは四半期ごとに40万件程度のペースで契約数を伸ばしてきました。このことから、4-6月期には単純計算で54万件ほどの解約があったことになり、異例の事態といえます。
解約の主な原因は、5月13日に発表した「0円廃止」です。特徴だった「1GBまで0円」を廃止し、新料金は税込1078円からに引き上げたことで大きな話題になりました。
楽天の資料によれば、たしかにこの発表から6月30日まで解約数は増加しており、7月以降は落ち着いています。解約の増加は、0円廃止に反発したユーザーによるものといえそうです。
しかし三木谷氏によれば、解約した人の8割は月間データ使用量が1GB未満のいわゆる「0円ユーザー」だったとのこと。逆に1GB以上を利用して料金を払っていた有料ユーザーは、純増だったとしています。
注目すべきは、これらの人々はモバイルの料金を払う有料ユーザーであるだけでなく、楽天経済圏にお金を落とす「優良ユーザー」でもあると三木谷氏は語っています。
楽天の資料によると、楽天モバイルに加入した人は月間の平均流通総額が52%増加しているとのこと。楽天のサービスからポイントを獲得し、そのポイントをモバイルの料金に充当するといった循環が生まれていると考えられます。
また、新料金発表後には、20〜30代の若年層の比率が8.5ポイント増加したとのこと。他の年代より約2倍のデータを使う若年層に選ばれることは、楽天経済圏の将来にもプラスに働くと見ているようです。
業績への影響として、9月からは1人あたり売上高(ARPU)として50%の上昇を見込んでいるとのこと。0円廃止を考えれば妥当とはいえ、携帯キャリアのARPUがこれほど大きく上がるのは異例です。
モバイル事業はまだまだ赤字続きですが、4-6月期は前四半期から約110億円、赤字が少なくなっています。これまで赤字は増加傾向でしたが、今後は減少傾向に転じると期待できそうです。
今後の契約数の目標としては「1200万人」を掲げています。その根拠は、人口に対する申し込み率が最も高い東京23区では9.4%であることから、もし全国で9.4%の人が申し込めば、1200万人になるという見立てです。
三木谷氏は具体的な達成時期については言及しなかったものの、地方で申し込みが少ない原因としてはエリアの狭さを挙げています。目標達成に向けて、地方でのエリア拡大が進むことは大いに期待したいところです。
契約数の推移に引き続き注目
このように、0円廃止によって一時的に解約は増えたものの、その大半はお金を払っていない0円ユーザーだったことから、楽天の狙いはおおむね成功したといえそうです。
ただ、注意したいのは、1GB未満の有料化はまだこれからという点です。新料金は7月に始まりましたが、8月までは0円のまま。9月からは料金が発生するものの、ポイント還元で実質0円となり、完全な有料化は11月からとなります。
これを踏まえると、6月中に解約してしまうのはやや早すぎるように感じます。料金が発生しない8月末まで、あるいは実質無料が終わる10月末まで、判断を先延ばしにした人も多いのではないでしょうか。
この点は三木谷氏も把握しており、再び解約が増える可能性があることに触れています。果たして以前のような契約数の増加傾向を取り戻せるのか、引き続き注目といえそうです。