台湾の学者が中国でスパイ罪に問われ懲役4年の実刑判決
中国との学術交流などにかかわっていた台湾の著名な学者に対し、中国の裁判所がスパイ罪で有罪とし懲役4年の実刑判決を下した。中国は台湾に対し強硬な姿勢を強めている。
有罪判決を受けたのは、台湾師範大学の元教授、施正屏。中国で台湾関係を扱う台湾事務弁公室の報道官によれば、安徽省鞍山市の裁判所が24日、施に対しスパイ罪で有罪とする一審判決を下し、懲役4年、政治的権利剥奪2年、2万元(約32万円)の個人財産の没収を言い渡したという。
施は、学術交流などのため、中国を度々訪れていたが、2018年8月に「行方不明」となった。その後、「国家の安全を脅かす活動に関わっていた」として、中国当局は、関係部門が施を取り調べていると認めていた。
その施は、先月、突然、台湾の「スパイ」の手口を報じた中国国営テレビの中に登場し、インタビューの中で、罪を「自白」した。
「私は間違っていました。私の教訓を生かし、法に触れる可能性のある台湾の人たちに警鐘を鳴らし、戒めとしてもらいたい。同様の間違いを二度と犯さないように」
施はインタビューの中で、中国で得た情報を流し、見返りとして台湾の情報機関から報酬を得ていたことを認めている。しかし、その番組自体も認めているように、施の流した情報は概ね公開情報だったという。
政治犯などにテレビで罪を認めさせ、その姿を大衆に晒すのは中国の常套手段である。そうした場合には、罪を成立させるのに十分な根拠がなく、テレビでの「謝罪」や「自白」を引き換えに、「容疑者」を釈放するという例もある。しかし、今回は、施に有罪判決が下された。ただ、台湾事務弁公室の報道官は、施には「各方面での訴訟の権利が十分に保障されている」と述べており、一審での有罪判決は、現時点で台湾に「脅し」を加えるための判断という可能性もある。
中国は、関係がこじれたアメリカが見せる台湾へ歩み寄り、新型コロナウイルスをめぐって国際社会での自国の心証の悪化と反比例するように台湾が存在感を示している現状において、とにかく台湾統一へ向けた障害になるような要素を徹底的に潰したいようだ。中国への服従を嫌う現在の台湾の民進党政権に対し、これからも脅しとネガティブキャンペーンを繰り返すはずだ。