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レアルがパリSGを撃破した理由を戦術的に考察。諸刃の剣の3トップと、トライアングルの形。

森田泰史スポーツライター
シュートを打つベンゼマ(写真:ロイター/アフロ)

最後に笑ったのは、ホームチームだった。

チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦、屈指の好カードとなったのはレアル・マドリー対パリ・サンジェルマンの一戦だ。アウェーのファーストレグで0−1と敗れていたマドリーだが、ホームのセカンドレグで3−1と逆転してラウンド突破を決めた。

マドリーを苦しめたエムバペ
マドリーを苦しめたエムバペ写真:ロイター/アフロ

無論、勝敗の鍵を握った要因のひとつは、戦術だった。

マドリーはカゼミーロとフェルラン・メンディを出場停止で欠いていた。トニ・クロースも負傷明けでコンディションが万全ではなかった。その中で、カルロ・アンチェロッティ監督は今季の基本布陣である【4−3−3】を選択。システムチェンジを行わず、ポジショナルに選手を配置して構えた。アンカーにはクロースが、左SBにはナチョ・フェルナンデスが入った。

パリ・サンジェルマンは、ファーストレグと同様に、ダニーロを右インサイドハーフで起用した。ダニーロの「右SB化」で、ヴィニシウス ・ジュニオールをストップしようとした。

(ダニーロの右サイドバック化)

マウリシオ・ポチェッティーノ監督が、セカンドレグで変更したのは、リオネル・メッシ、キリアン・エムバペ、ネイマールの先発での同時起用だった。ファーストレグでは、コンディションの問題もあり、ネイマールがスタメンから外れていた。

■3トップと諸刃の剣

メッシ、エムバペ、ネイマール。この3人の起用は、「ジキルとハイド」的に、メリットとデメリットを生んだ。

メリットとしては、技術とポゼッションの担保が挙げられる。パリ・サンジェルマンはエムバペを前線に残して、メッシとネイマールが頻繁に中盤に降りた。ダニーロが最終ラインに下がり、歪な【5−4−1】が出来上がった。

中盤では、マルコ・ヴェッラッティ、レアンドロ・パレーデス、メッシ、ネイマールがパス回しに参加。マドリーの中盤を務めたクロース、ルカ・モドリッチ、フェデリコ・バルベルデに対して、「4vs3」の構図になった。

マドリー は1点ビハインドで試合に臨んでいた。しかしながら、パリ・サンジェルマンのカウンター、とりわけエムバペの存在は脅威だった。それが恐怖心につながり、前半のマドリーはポジショナルなプレー以外の何かを見せることはできなかった。

■アンチェロッティの采配

アンチェロッティ監督は、決して交代が巧みな指揮官ではない。

というより、交代が「遅い」のである。ラ・リーガの試合でも、70分から75分あたりまで、交代カードを一枚も切らないということはザラにある。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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