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ラップトップとタブレットの持ち込み禁止を欧米間の航空便へ拡大の可能性、スマホでの生産性向上対策・5選

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
欧州から米国への航空便の機内でも、デバイス持ち込みが制限される

The Daily Beastによると、米国国土安全保障省は、欧州とイギリスからアメリカへの航空便の機内へのラップトップやタブレットなどのデバイス、つまりスマートフォンより大型のデバイスの持ち込みを禁止する可能性があるそうです。

CBS Newsも、この話題を報じました。

これまで、2017年3月から、特定の国の空港とアメリカ・イギリス間の航空機内について、ラップトップやタブレットの持ち込みが禁止されていました。

その特定の空港とは、エジプト・カイロ、トルコ・イスタンブール、アラブ首長国連邦・ドバイとアブダビ、クエート・クエート、カタール・ドーハ、モロッコ・カサブランカ、ヨルダン・アンマン、サウジアラビア・リャドとジェダ。これらの空港からアメリカ・イギリスの各都市への航空機に適用されてきました。

米国当局は、この禁止について、欧州からの航空便にも拡大する事を検討しており、航空会社との折衝の上、今後数週間で結論を出すとみられます。

危険視する大型デバイス、そしてリチウムイオン電池

日本の保安検査場では、ラップトップPCだけでなくタブレットもカバンから出してスキャンするよう求められますが、米国の保安検査場では、ラップトップはカバンから出し、タブレットはしまっておけ、という指示が飛びます。

その理由は、パソコンがあることで、カバンの中の検査がしにくくなるからだとのことです。パソコンを模した危険物を作ることも容易だと思うのですが、これまでが主な理由ではありませんでした。その証拠に、パソコンを機内に持ち込めていたのです。

しかし今回の禁止措置によって、後者の懸念に対処することになりました。しかも、パソコンだけでなく、タブレットまで持ち込めなくなってしまったことで、多くの人々にとって、生産性の高いデバイスを機内で使うことができなくなりました。

スマートフォン、タブレット、ラップトップにはリチウムイオン電池が備わっています。これらのデバイスも、細工をしなくても、保安上の危険な要素になり得ます。

2016年のSamsung GALAXY Note 7の発火事故では、激しく燃え上がるスマートフォンの様子が映し出されましたが、スマートフォンであっても、リチウムイオン電池回りでのトラブルがあれば、機内の混乱を引き起こすには十分な存在です。

ラップトップやタブレットは、サイズも大きく細工しやすい上、スマートフォンの倍以上のリチウムイオン電池が備わっており、これらを活用することで、より普通に見えるデバイスから、大きな炎上や爆発を引き起こすことも考えられます。

米国国土安全保障省は、そうした手法に関するなんらかの情報を察知していると思われますが、一般の人々にとっては、飛行機内での仕事や娯楽に大きく影響する結果となりそうです。

飛行機移動の時間の使い方に変化も

特に欧州から米国へ向かう航空便はビジネス利用者も多く、仕事の時間に充てたい人も少なくないはず。もちろん、安全保障上の措置であることは理解していますが、航空機での移動の効率性が極端に下がってしまう点には、不満を覚える利用者も多いでしょう。

私はアメリカのサンフランシスコ空港と日本の東京・羽田空港の間の便を頻繁に利用しています。9〜11時間程度のフライトの半分を睡眠に、半分をノートパソコンでの作業時間に充てています。

約4時間ずつ、集中して休息と仕事ができる時間として、出張の際には重宝していました。

今回のラップトップやタブレットの禁止措置は、日本発着便への適用はないようです。ただ、今後の東アジア情勢次第では、日本発着の航空機に関しても、同様の措置が取られる可能性を捨てきれません。

今後、幅広く、大型デバイスの禁止がルール化される場合、貴重な作業時間が奪われることになり、時間の使い方を再検討しなければならなくなります。

オフラインの飛行機内でスマートフォンを活用する方法・5選

前述の通り、私が利用するサンフランシスコ・羽田便は、タブレットもラップトップも持ち込むことができていますが、それでもラップトップを開く気にならなかった場合は、スマートフォンだけで過ごす事もあります。

10時間近くのオフライン環境をスマートフォンだけでいかに過ごすか、あるいは生産性を保つか、実践しているアイディアを5つ挙げておきます。

(1)スマートフォンをフル充電しておく

最近の航空機の座席には、AC電源やUSBポートが備わっており、ケーブルだけを持っていけば充電できることが増えてきました。しかし、たまにUSBポートからの充電が上手く動作しないこともあります。

そのため、飛行機に乗り込む前に、ターミナルなどでスマートフォンをフル充電しておくことをおすすめします。

東京・ニューヨーク間の14時間は持たないかもしれませんが、サンフランシスコまでならなんとか使い続けることができるはずです。

(2)音楽、ポッドキャスト、ニュースをダウンロードしておく

最近、音楽もポッドキャストもストリーミングで楽しむようになりました。しかし前述の通り、オフライン環境の航空機内、普段のように通信を前提としたエンターテインメントは難しい状況となります。

また、機内Wi-Fiサービスも増えていますが、テキストのチャット程度がせいぜいで、ウェブサーフィンすらストレスが大きくなるほど通信速度は期待できません。

そのため、音楽やポッドキャスト、電子書籍、ニュースリーダーのニュース、メールなどは、あらかじめスマートフォンにダウンロードし、オフラインでも十分楽しめるよう準備しておきます。

ちなみに、空港のWi-Fiも、音楽やビデオをダウンロードするには遅すぎる可能性もありますので、できれば前日自宅でダウンロードしておくと良いでしょう。

(3)仕事のメモを作っておく

スマートフォンでもスライドや表計算のファイルなどを編集することもできますが、効率の面で言えば、ラップトップには全く及びません。

しかし、文字入力でメモを作ることは、さほどストレスではないはずです。そのメモを見ながら後でファイルにまとめれば、飛行機を降りた後の作業が非常に楽になります。

そこで、メモアプリにも、いくつかの準備をしておく必要があります。もしEvernoteのようにファイルを添付できるアプリを利用しているなら、仕上げたい作成中のファイルや、作るべきファイルの要件や情報を、Evernoteの1つのノートにまとめておき、それを参照しながらメモを作れるようにするとよいでしょう。

意外と、原稿執筆やアイディア出しは、機内ではかどるように感じています。

(4)Wikipediaをダウンロードしておく

電子書籍も良いのですが、個人的に気に入っているアプリが、Wikipediaです。Wikipediaはネットに接続されていなければ読む事ができないのですが、アプリによっては記事をダウンロードし、オフラインの飛行機内でも検索したり、閲覧したりできるようになります。

例えば、iPhone / Android 向けに公開されているアプリ「Minipedia」は、スマートフォンにWikipediaの記事をダウンロードしておき、航空機内でも知識の泉に浸ることができます。ダウンロードする記事量に応じて課金があります。

(5)ビデオや写真の編集、画像作成にチャレンジ

普段忙しくて、やりたくてもやっていなかったことは、オフラインの航空機内で取り組む格好のテーマです。例えば写真や画像、ビデオなどの編集は、時間もかかりますし、普段忙しい日常では敬遠しがちです。

編集した画像やビデオは、友人に共有するだけでなく、仕事でもプレゼンに貼り付けたりビデオで説明するなど、有用な資料としての活用が見込めます。

iPhoneの場合、iMovieをダウンロードしておくと、一通りのビデオ編集を楽しむ事ができます。

また、GoPro傘下のQuikは、簡単に音楽と映像がマッチしたビデオが作成可能です。

画像編集は、Adobeのモバイルアプリが良いでしょう。Photoshop FixLightroom Mobileでフォトレタッチを行うことができ、レタッチした写真を使ってバナーなどの画像の作成を行うには、Spark Post(iOSのみ)を使います。

写真を加工し画像を作り、それをビデオのタイトルに利用することも、オフラインでできてしまいます。カジュアルなクリエイティブにチャレンジするというのも、飛行機の中の時間を生産的に過ごすアイディアといえるでしょう。

みなさんは、スマートフォンの飛行機内での活用について、どうしていますか?

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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