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コロナワクチンって実際どうなの!?打った医師に直撃自問自答インタビュー!

薬師寺泰匡救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスへのワクチン接種が、医療従事者で本格的に始まりました。現実的にはワクチンの供給が少なく、ワクチンを希望する医療従事者に対し4分の1程度の供給量にとどまっています。病院を運営する立場としては、なるべく早期に職員の安全を確保したいところです。

自分自身は、先週1回目のワクチンの接種をしました。投与もしましたし投与もされました。巷では未知のワクチン扱いで不安が募っており、外来患者さんから「ワクチンを打った方が良いのか?」「ワクチンを打っても良いのか?」と質問されることも多いです。あまり接種した医療従事者の声が広がっていないなと思うので、自分へのインタビュー形式でワクチンについてのアレコレを書いてみようと思います。まさかの自問自答インタビューです。

ワクチン接種に不安はなかったか?

医療従事者は未知のワクチンのモルモットにされているという指摘をされることもあるようですが、個人的には全くそんな意識はありませんでした。きちんと動物実験を経て、ヒトでの臨床試験が行われ、海外では実際に運用が始まっていたワクチンです。今回接種したものはファイザー社のものでしたが、メーカーを限定しなければ世界中で3億回以上打たれているものです。すでに未知とは呼べない領域に入っているという認識です。

副反応があるのは受け入れるしかない問題なので、報告されているような副反応が自分に起こってもおかしくはないというつもりでワクチンを受けました。ただし、それ以上の恩恵があるはずですので、リスクとベネフィットのバランスを考慮した結果、積極的に打とうという気持ちになりました。

ワクチンは痛かった?

とても細い針を使うので、刺す時はほぼわからない程度です。ワクチンが注入される時も、ほとんど何も感じませんでした。痛いかもしれないという覚悟の分、痛みが軽減されたかもしれませんが、私が投与した当院職員は痛くなかったと言っていました。

副反応らしきものはあった?

何時間か経ってから徐々に筋肉痛が出てきました。筋トレした翌日程度の痛みです。腕が上がらないほどではありません。アレルギー反応や頭痛、発熱など、起こり得ると思っていた反応も、自分にはありませんでした。筋肉痛は24時間後くらいがピークで、徐々に改善し、接種2日後には全くなくなりました。

いつもと違うこととしては、お酒に酔っぱらったなという実感がありました。ワクチンとの因果関係は不明ですし、他でこうした話は聞きませんが、ワクチン接種から3日間はお酒が回りやすかったです。現時点ではワクチン接種当日に禁酒することまでは言われていませんが、他のワクチンでもアルコール過量摂取は避けるように言われています。体調不良がワクチンによるものなのか、他の刺激によるものなのか分からなくなるので、気をつけて過ごしてください。

周囲でアレルギー反応を起こした人は?

職員で1名蕁麻疹が出た人がいました。皮膚症状のみで、アナフィラキシーとまでは言えないかと考え、抗アレルギー薬を投与したところ、数分で症状は改善しました。医療従事者や女性ではワクチンのアレルギー反応が多いのではないかという指摘があり、こちらも注意して観察しておりましたので慌てず粛々と対応しました。

医療従事者はアレルギーをおこしやすい?

最新の情報では、医療従事者においてアレルギーは2%程度で起こり、さらにその100人に1人がアナフィラキシーに至ると報告されています[1]。1万人に2人という数字は、これまでに報告されていた10万人に1人という数字より大きいです。医療従事者は医薬品によるワクチンに含まれる成分の感作が考えられており、非医療従事者よりもハイリスクになるかもしれませんが、客観的に自分の体調に向き合える分、早期に対応が可能になるかもしれません。先述の報告では、気道閉塞やショックに陥った人はいなかったと言うことです。引き続き、注意しながら接種したいと思います。

筋肉注射って特別?

日本ではワクチン接種を皮下注射で行うことが多いですが、筋肉注射が一般的であるワクチンも多いです[2]。日本においても肺炎球菌ワクチンや破傷風ワクチンは筋肉注射しますので、筋肉注射がとても特別と言うわけではありません。インフルエンザワクチンも筋肉注射の方が効果的かつ副反応も少ないのではないかという指摘もありますので、これを機会にワクチンの筋肉注射が進んだらいいなと思います[3]。

筋肉注射って安全?

投与側としては、接種する三角筋の近くを走る橈骨神経や腋窩神経の損傷、三角筋の頭側にある肩峰下滑液胞への注入を避けなくてはなりませんが、そのために解剖を勉強しているので、安心して打ってもらえるように頑張りますと言うしかないです。日本プライマリ・ケア連合学会が接種部位を分かりやすく解説した動画を作成してくれています。医療従事者側はこうしたものを活用しながら安全性を高めたいですね。接種を受ける側としては、腕はダランとリラックスしておいて欲しいので、協力よろしくお願いいたします。

高齢者の投与大丈夫?

高齢者(特に超高齢者)に関するデータは乏しいのが現状かもしれませんが、迷走神経反射のリスクが高まることや、アナフィラキシーの際にアドレナリンが効きにくくなる薬剤を服用している可能性が高くなることには注意が必要かと考えています。自分の親は「高齢者」かつ「ハイリスクな医療従事者」なので、ワクチン接種を受けました。余計に心配だったということはありません。むしろ、COVID-19は高齢者で重篤化する傾向にありますので、高齢者ほど恩恵があるのではないかと思います。積極的に受けていただきたいですね。

ワクチンしても感染するのでは?

臨床試験の段階では、発症予防効果を調査していたので、どの程度感染そのものを防ぐかは不明確でした。実用段階における調査で、実際に感染を予防する効果が示唆されているという報道もありましたが、この辺の情報は明確化するまで慎重に見守る必要があります。証明された高い発症予防効果に期待しつつ、感染防御策も講じて行きたいと思います。例年インフルエンザワクチンを接種後も、我々は無防備な状態で患者さんに接触していませんでした。これは新型コロナウイルスについても同じことです。

新型コロナワクチンの臨床試験結果
新型コロナワクチンの臨床試験結果

最後に

今回の自問自答インタビューは個人の経験によるところが大きい報告です。エビデンスレベルとしてはとても低いかもしれませんが、こうした経験の集積により、ワクチンの姿が広く届けば良いなと考えています。なるべく安全にワクチンを接種できるよう、そして新型コロナウイルスによる様々な影響が少しでも最小限になるよう願っています。2回目の接種に関しても、その時点の情報を織り交ぜながらご報告したいと思います。

参考文献

[1] Blumenthal KG, et al. Acute Allergic Reactions to mRNA COVID-19 Vaccines. JAMA. 2021 Mar 8. doi: 10.1001/jama.2021.3976.

[2] https://www.cdc.gov/vaccines/hcp/admin/administer-vaccines.html

[3] Cook IF, et al. Reactogenicity and immunogenicity of an inactivated influenza vaccine administered by intramuscular or subcutaneous injection in elderly adults. Vaccine. 2006 Mar 20;24(13):2395-402.

救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長

やくしじひろまさ/Yakushiji Hiromasa。救急科専門医。空気と水と米と酒と魚がおいしい富山で医学を学び、岸和田徳洲会病院、福岡徳洲会病院で救急医療に従事。2020年から家業の病院に勤務しつつ、岡山大学病院高度救命救急センターで救急医療にのめり込んでいる。ER診療全般、特に敗血症(感染症)、中毒、血管性浮腫の診療が得意。著書に「やっくん先生の そこが知りたかった中毒診療(金芳堂)」、「@ER×ICU めざせギラギラ救急医(日本医事新報社)」など。※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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