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潮流に逆行する詐欺グループが摘発 なぜポケモンカードの出品で巨大組織となったのか #専門家のまとめ

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

詐欺グループの多くは、警察の摘発を逃れるために、少人数のアジト(箱)から電話をかけたり、海外に拠点を移して活動しています。しかし先月摘発された大規模な詐欺グループは、逮捕されたメンバーが90人以上にのぼっており、近年の詐欺の潮流とは真逆な形で、国内に犯罪組織を形成していました。

なぜなのでしょうか。結論からいえば、自分たちが使う巧妙な詐欺の手法なら、警察に捕まらないと、たかをくくっていたからに他なりません。

ココがポイント

▼SNS型投資詐欺の被害は深刻です。約9億5000万円の被害総額とみられる国内の詐欺グループが摘発されました。

SNS型投資詐欺グループの拠点、大阪府警が一斉捜索…9億5000万円をだまし取ったか(読売新聞)

▼フリマアプリでポケモンカードを出品すると称して投資に関する情報を売りつけて、お金をだましとっていました。

【速報】逮捕者90人のSNS型投資詐欺事件「打ち子のエース」公開手配の男女を新たに逮捕 大阪府警 ラジオで手配知り警察に出頭(読売テレビ)

▼長きにわたって摘発されることなく、SNSを駆使してお金をだましとり続けて巨大な詐欺組織になったことがわかります。

約3年前から犯行繰り返していたか SNS型投資詐欺グループ摘発、90人逮捕 被害総額は約10億円(読売テレビ)

▼Instagramで不特定多数にメッセージを送り、関心を持った人にLINEで投資を勧める。役割分担しながら組織的詐欺を行っていました。

インスタとLINEで「グレーな仕事」 SNS投資詐欺の内幕を証言(朝日新聞)

エキスパートの補足・見解

詐欺グループが巨大化するには二つの要素が必要です。警察に捕まらない手口を編み出すことと、いかにして詐欺の手足となる人たちを集めるかです。

今回の詐欺グループの巧妙さは、ポケモンカードの購入を装って情報商材を売りつけるという手口のわかりづらさにあります。被害経過を聞いただけでは、個人による犯行か、組織によるものなのかがすぐにはわかりませんし、お金のやりとりも警戒されている銀行口座ではなく、フリマアプリを使うことで犯罪行為の発覚を遅らせています。

逮捕者の多くは嘘のメッセージを送る「打ち子」です。犯罪行為だと思っていなかったかもしれませんが、闇バイトです。SNSの高額報酬で募集されるものだけがそうではありません。今はグレーな仕事として、犯罪に手を染めさせるケースが相次いでいます。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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