「軍に入隊志願」の重要行事をサボり放題…北朝鮮の若者たちは今
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は16日、韓国からの無人機侵入に怒った青年140万人が軍への入隊・復帰を志願したと伝えた。
北朝鮮は、緊張状態が高まるたびにこの手のキャンペーンを繰り返している。ところが、憤って軍に志願したはずの当の若者たちは、鼻で笑っているという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、14日に「人民軍入隊を志願する集会を行うことについて」という指示が下された。無人で平壌の上空を侵犯した韓国に対する憎悪と復讐心を示す行事にせよとのことだ。
それで全国の工場、企業所、機関、大学などで一斉にこの手の集会が開かれた。突撃隊(半強制の建設ボランティア)として動員された若者を除く、青年同盟のメンバー全員が参加させられた。
さらには、35歳未満の除隊軍人、軍官(将校)も当局の指示で集会に参加させられ、軍への復帰を志願させられた。
咸鏡北道金策(キムチェク)の情報筋は、その現場のお粗末ぶりを伝えた。
ある水産事業所では14日夜に集会が開かれた。ここの青年同盟のメンバーは80人を超えるが、20人ほどが参加しなかった。あまりの生活苦ために出勤できないほど疲弊していたり、個人の商売で忙しかったりする人たちだ。それでも上層部には「100%参加、100%志願」との虚偽報告が上げられた。
参加した若者の態度も不真面目そのものだった。
軍に志願するとの署名をするための列に並ぶが、じゃれ合ったり、大声で騒いだり、冗談を言って爆笑したりなど、厳粛な雰囲気とは程遠いものだった。また、サボったことがバレないように、友人に頼んで「代返」ならぬ「代理署名」をする若者すらいた。
(参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命)
別途開かれた除隊軍人の集会も似たような雰囲気だった。
参加はしたが「急用がある」と言って署名だけして帰る者、後ろに固まって雑談に夢中になる者などばかりで、あろうことか集会がまだ続いているのに、全員帰ってしまった。
情報筋の甥の勤め先では、青年同盟のメンバーが10人ほどいて、とりあえずは集まったものの、「韓国を火の海にしてやる」的なシュプレヒコールの唱和などもなく、志願の意思を口頭で確認しただけで、あっという間に終わってしまったという。
こんな茶番に真剣に取り組む者がいれば、けちょんけちょんに馬鹿にされただろう。
情報筋はこう語った。
「若者たちは軍入隊の志願集会が形式的なものに過ぎないことをよくわかっており、行事を大したものとは考えていないようだ。最近の若者は政治行事を大切に考えたり、厳粛な雰囲気を保とうとしたりする考えがそもそもない」
なお、今までもこのような集会が行われることがあったが、実際に軍に入隊させられたケースはなかったとのことだ。