Yahoo!ニュース

旧統一教会問題に関しての公開質問状 主要8政党すべてから回答あり 過去の質問状は三行半だった

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影(司法記者クラブ)

10月16日に全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は会見を行い、主要8政党に対して発出していた旧統一教会問題における今後の取り組みに関しての公開質問状への回答が「すべての党からあった」と話します。質問項目は5つです。

1.旧統一教会の被害者救済及び被害抑止に今後どのように取り組んでいくのか。

2.今後、先生ご自身及び国会議員は、旧統一教会及びその関連団体との交流や連携について、どのように対処するべきか。

3.2022年12月10日に成立した不当寄附勧誘防止法は、附則で2年後見直しが明示されており、その時期が迫っています。どう対処すべきと考えているのか。

4.解散命令後の清算手続きにおいて被害者の救済を図るためには、被害者の支援や統一教会による財産隠匿の防止などについてより実効性のある立法が必要と考えますが、その必要性についてどのように考えているのか。

5.各党所属の国会議員の先生方と旧統一教会の関係は断絶されるべきです。関係断絶の実効性を確保するために、これまでの旧統一教会との関係の調査にとどまらず、その政治への影響の検証および実効的な再発防止策のために、国会内に独立した調査委員会を設ける。あるいは貴党において第三者委員会による調査を実施して、その検討結果を公表するご意思はありますか。

与党からの回答

木村壮弁護士から、各党からの回答の概略についての説明がありました。

自由民主党からは、政治家と統一教会との関係についてはガバナンスコードの改定を行い『これを遵守した政治活動の徹底をします』また、解散命令後の被害救済に関しては『今後の状況も勘案した上で、必要があれば国会において各党各会派で議論していくことが大事』という回答です」

公明党からは、不当寄附勧誘防止法の附則の見直し規定に関して『これまでの同法の運用状況や実態等を踏まえて、適切に対応したい』質問5について『旧統一教会との関係断絶の実効性を確保するため、国会内に独立した調査委員会の設置、あるいは党内における第三者委員会による調査の実施並びに検討結果の公表については、貴会のご指摘を踏まえ党内で議論を行いたいと考えます』という回答です」

野党からの回答

立憲民主党からは、旧統一教会の悪質な霊感商法による高額献金等の被害は『30年にも及ぶ政治の不作為の結果ともいえ、被害者の救済に実効性ある対策を講じ、合理的な判断力を奪う違法な活動を抑止することは政治の急務の課題であり責任である』不当寄附勧誘防止法については『合理的判断を奪ういわゆるマインドコントロールを利用した勧誘行為の定義づけが困難であったことから、実態に即して使いにくいのではないかとの懸念』の指摘をした上で『どのような見直しが必要であるか、完全施行後の実績の検証を含めて確認する必要がある』との回答です」
日本維新の会からは、不当寄附勧誘防止法については『法律の効果の検証を適切に行う。その上で必要であれば、対策を立案する。効果の検証は公正に行うべきである』解散命令後の被害者救済について『財産の散逸による被害者救済が滞ることは大きな問題である。解散命令が下る前であっても財産の秘匿や散逸を防ぐことが重要』としています。政治家と統一教会の関わりについても『徹底した調査が必要である。また、調査結果は公表すべき』との回答です」

共産党からは、不当寄附勧誘防止法の見直しに関して『①家庭裁判所の監督の下、信者本人に代わって献金を取り消し、その財産を管理することができる制度を設けること』という家族被害を救済する制度や『②行政による迅速・実効的な被害救済と被害防止ができるよう、法律上の行政処分の要件及び処分基準を見直すこと。③旧統一教会による過去の違法不当な献金勧誘の手法を適切に類型化し禁止行為として規定すること。④適用対象を宗教法人等に限定せず、個人や代表者等の定めのない宗教団体を適用対象とする』との改正が必要だという意見をいただいています」

国民民主党からは、不当寄附勧誘防止法に関して『見直しの際には、広く心理的な支配を作出及び利用することを禁ずる規定を刑法に定めることも視野に入れ、その際には、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律と関連づけることも併せて検討することを求め、心理的支配利用罪新設法案も提出している』と独自のご回答をいただいています」

社会民主党からは『包括的財産保全を可能とする法制化を早期に実現すべき』として、質問3についても『マインドコントロールでの献金に対する救済が不十分です。早期改正すべき』質問5については『国会内で独立した調査委員会を設けるべき』との回答です」
れいわ新選組は、今年の7月に出された最高裁判決で、勧誘の言葉や態様、献金の額や原資、寄付者の資産や生活の状況を最高裁が違法性の判断基準として示したことは『今後の改正法作成にあたって参考にすべき点と考えます』という回答です」

さらに同党は「我々は、寄附やマインドコントロールについて現行法では、本来は、違反すれば罰則とする禁止規定とすべきものが配慮義務となっており、骨抜きが著しい」との指摘をして、法律の見直しにあたっては「実効性のある不当寄附勧誘防止法にするためには、どのような見直しが必要なのか(Yahoo!ニュース エキスパート 多田文明)」の全国統一教会被害対策弁護団が会見した記事を参考資料として載せた上で「日弁連・全国弁連などの外部の法律家団体としっかりと連携し、統一教会の被害者救済に資する条文作成を行うべき」としています。

木村弁護士は「各党それぞれの立場がありますが、これからも被害者救済、被害抑止の立法に取り組んでいただけるものと考えている」と総括します。

与党の旧統一教会問題の取り組みへの有言実行に期待

山口広弁護士は「全党からご返事をいただいたのは良かったと思います。今後、与野党一緒になって、統一教会との関係についての検証をきちんとやってほしい」といいます。

自民党は、2022年10月25日に「旧統一教会および関連団体と一切関係を持たず、社会的に問題が指摘されている団体とも関係を持たない方針について、所属国会議員に遵守を求める」とする基本方針を、ガバナンスコードの原則5-4「組織・団体との責任ある関係の確保」に反映させています。

山口弁護士はこれに触れて「ここでは党所属の国会議員は、活動の社会的相当性が懸念される組織・団体からの不当な政治的影響力を受けること、またはその活動を助長すると誤解されるような行動について、厳にこれを慎むものとするとなっていて、これを遵守していくことをご回答いただいています。公明党の回答でも『旧統一教会のような宗教団体に限らず、社会的に問題のあるトラブルを数多く抱える団体と政治家・政党との関わりは断絶すべきです』としており、党にも政治倫理規範があり、この規範に基づいてガイドラインを着実に実践する中で対応していくことを明言されています」とした点に、今後注目していきたいと話します。与党の旧統一教会問題に対しての有言実行に期待するところです。

過去の質問状は三行半(みくだりはん)だった。今回の回答は感謝に堪えない

紀藤正樹弁護士は、8党すべてから回答があったことは「本当に感謝に堪えない」といいます。

「過去に質問状を発出しても、ほとんど回答もなく、三行半(みくだりはん)という時期がずっと続いていました。安倍元首相銃撃事件という悲劇が起きたことで、私も含めた全国弁連の弁護士は、もっと政権に統一教会問題を伝えていれば、防げたのではないかという反省に立って、これまで活動してきました。今回、公開質問状を送って与野党問わず全政党から回答がきたことについては、問題の重大性に気づいて一定の判断をしていただいたのだと思う」

裏金と統一教会問題というのは最重要の争点との指摘

27日には衆議院総選挙が行われます。

紀藤弁護士は、今回の選挙では「裏金問題と統一教会問題は、経済政策とともに最重要の争点だと考えています。与野党問わずそれを十分に理解しているから、今回の回答があるのだと思う」としています。

政治不信を引き起こす端緒となった、旧統一教会問題は避けては通れないものです。8党からの真摯な回答は、過去に旧統一教会が行ってきた霊感商法、高額献金の被害に対して、国として何らの対策もしてこなかったことへの反省にたった上での対応になっていると感じています。
しかし、いまだ旧統一教会は被害を口にする者や自らに反対するものを敵と見て抗う姿勢を崩していません。それゆえに被害救済は一向に進まない状況です。それは被害がいまだ継続している状況といえます。こうしたなかで、せっかくできた法律も現実に即した形になっておらず、被害を十分に防げる内容にはなっていません。過去の検証をしっかりとして、こうしたカルト思想を持った団体による被害を二度と引き起こさないための政策立案が強く求められます。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

多田文明の最近の記事