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メジャーリーグ開幕延期に、他競技からのユニークなオファーや、コミッショナー生涯出入り禁止まで。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグ機構と選手会との新労使協定を巡る交渉が決裂し、開幕から少なくとも2シリーズ分が中止となった。

 開幕延期の知らせは、球春を待ち望むファンたちにとっては、酷なものであっただろう。落胆したファンへむけて、ツイッター上では、メジャーリーグの試合が見られない期間、「ソフトボールを見に来ませんか」、「大学野球を見に来ませんか」などというプロモーション投稿が飛び交った。

 そのなかでもユニークだったのが、デトロイトのプロサッカーチーム、デトロイトFCである。同じデトロイトを拠点にするメジャーリーグのタイガースのシーズンチケット購入者に対し、デトロイトFCの3月と4月の本拠地試合のうちの1試合を無料で観戦できると発表した。

 デトロイトFCは、今季からMLSの2部に相当するUSLCリーグに入った。サッカーを通じてデトロイトの再建に貢献するという理念で、2012年に設立された。本拠地のスタジアムは最大で8000人の収容で、ビジネスとしては小規模といえる。

 なぜ、このようなオファーに至ったのかを、デトロイトFCの共同オーナーであるアレックス・ライトさんにメールで取材した。

 「3月か4月に開催される我々の試合のチケットを提供するのは、野球の問題が解決するのを、ファンは待つ必要がないと考えるからです。今回の延期のマイナス面に目を向けるのではなく、ファンの人たちに何かポジティブなものを提供したいと考えました。これから、春から夏にかけて、新型コロナウイルスのパンデミックが収束していってくれればと願っていて、そのときに、ファンが伝統的な生活を取り戻せることは、これまで以上に重要なことです。ですから、私たちもその一翼を担いたいのです。 ファンやサポーターはスポーツチームの生命線です。試合会場に来ていただき、エキサイティングな雰囲気を見せることで、野球が再開された後も応援してもらえるようにしたいです」

 ライトさんによると、すでに数百人のタイガースシーズンチケット購入者から問い合わせがあったという。無料入場券オファーについては、デトロイト地域の複数のメディアがニュースとして取り上げたこともあって、タイガースのチケットを買っていない人に対しても、デトロイトFCの存在をアピールすることには成功したように見える。

 また、メジャーリーグのマンフレッドコミッショナーを生涯出入り禁止にすると発表した野球チームもある。

 ミシガン州カラマズーにあるグローラーズだ。グローラーズが加盟しているのはノースウッズリーグであり、このリーグでは、大学生選手が大学野球部のオフ期間中などに試合をしている。

 グローラーズは、マンフレッドコミッショナーを出入り禁止とした理由は「グローラーズは、違いを生み出すために楽しさを活用することを約束していますが、マンフレッドはその反対のことに専念していることを示しています。MLBのロックアウト中に、マンフレッドコミッショナーとオーナーたちはお金にだけ関心を示し、選手とファンたちに野球を提供していません」などとした。

 プロモーションから、出入り禁止まで。交渉決裂による開幕延期によって、メジャーリーグの枠の外でも、さまざまなリアクションが起こっている。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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