オークションにかけられた大谷翔平の50号ボールはなぜ高額なのか。マーキング×認証の威力、51号球は?
ドジャース・大谷翔平がメジャー史上初の「50―50」を達成した際の50号本塁打のボールのオークションでの入札額が207万4000ドル(約3億889万円)にまであがっている。オークションは9月27日に50万ドル(約7450万円)からスタートした。
なぜ、記念球が高額で取引されるのか。最大の理由はメジャーリーグ史上初めての記録だからである。もうひとつの理由としてはボールにつけられたマーキングとメジャーリーグの認証済みシールがその価値を高めているといえるのではないか。
メジャーリーグでは、記念球の偽物を排除するために、2001年から第三者機関が本物認証をするようになった。どの試合にも少なくとも数人の認証者が立ち会っており、たいていはダグアウトのすぐ近くのスペースで待機している。そして、ボールの行方を確認し、間違いなくそのボールであることを確認しながら、ボールボーイたちから受け取る。すぐさま番号を記録し、本物を認定するホログラムシールを貼っている。
ただし、本塁打球には認証条件がある。ブルペンなどに飛び込んだ本塁打球は認証の対象だが、観客席に飛び込んだ本塁打球はたとえそのボールを捕った人が選手に返したとしても本物認証はされない。ボールがどこかですり替わっていないかどうかを保証できないからだ。
しかし、マーキングされたボールは例外だ。メジャーリーグのなかでも特別に大きな記録のかかったボールには肉眼で見えるマークと、特別なテクノロジーによって確認できるマークが入っている。
ヤンキースのジャッジが2022年にシーズン60号本塁打を放ったときのボールにもマーキングがされていた。60号ボールは左翼スタンドの観客が捕ったが、この人はボールをジャッジに返した。通常ならば、認証者はこのボールを認証することができないが、このボールにはマーキングされていたから、ボールを返してもらったジャッジ自らが、メジャーリーグの認証者に鑑定してもらい、認証のシールを貼ってもらったという。
私は大谷が記録を達成する前に何人かの認証者に話を聞いたのだが、観客が捕ったマーキングのボールの認証については、解釈が二通りあった。ひとつは選手か球団に返された場合は、認証者がマーキングを鑑定して本物認証できるというもの。もうひとつは観客が捕球して、所有する場合も本物認証できるというものだ。現在、オークションにかけられているボールは観客が捕ったが、本物認証されているので後者の解釈が正しかったことになる。
大谷が40本塁打40盗塁を達成したときのボールもオークションにかけられていたが、こちらは25万1320ドルですでに落札された。このボールはマーキングされていないから、観客席のボールは認証しないというルールが適用され、認証シールもない。もちろん、40-40はメジャー史上初めてではないという記録の価値の違いもある。
また、51号本塁打もオークションにかけられているが、こちらの入札額は現時点で6万7100ドルにとどまっている。50号本塁打と51号本塁打は同じ試合で打ったもので、51本塁打51盗塁も達成したが、51号のボールにはマーキングがなく、本物認証もされていない。
大台という意味で50-50の記録達成の価値は大きいが、51-51を達成した51号ボールの現時点での入札価格は30分の1である。入札額の高騰は、マーキングと認証シールの威力といえるのではないか。