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北朝鮮が「極超音速ミサイル」を固体燃料化した新型中距離ミサイルの試験発射に成功

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・労働新聞より「極超音速ミサイル」、左:2022年1月、右:2024年1月

 北朝鮮は1月15日、前日の1月14日午後に極超音速滑空弾頭を装着した新型固体燃料中距離弾道ミサイルの試験発射に成功と主張しました。飛行距離などのデータは公表されていません。なお金正恩の視察はありませんでした。

 なお1月14日に日本防衛省は「最大高度50km、水平距離500km以上」を観測したと発表、韓国軍合同参謀本部は「距離1000km、中距離級」と発表しています。1月14日の14時53分ごろに北朝鮮の内陸部から日本海に向けて発射されています。

 この北朝鮮の新型ミサイルは大気の上層部を滑空跳躍しながら飛ぶ極超音速滑空ミサイルであるためロフテッド軌道(山なりの弾道)は取れず、狭い日本海の中で試験発射を完結させるために意図的に全力発揮せずに飛行している可能性があります。おそらく実際の最大性能の飛行能力は3000km級以上、4000~5000km級である可能性が大きいと推測します。

試験発射は、中長距離級極超音速機動型操縦戦闘部の滑空及び機動飛行特性と、新たに開発された多段大出力固体燃料発動機の信頼性を実証することを目的として進められた。

出典:「極超音速ミサイル試験発射進行」、労働新聞(2024年1月15日)

北朝鮮・労働新聞より「極超音速ミサイル試験発射進行」
北朝鮮・労働新聞より「極超音速ミサイル試験発射進行」

※ミサイルを拡大。

北朝鮮・労働新聞より「極超音速ミサイル試験発射進行」、ミサイルの構成は筆者の推定
北朝鮮・労働新聞より「極超音速ミサイル試験発射進行」、ミサイルの構成は筆者の推定

 弾頭の形状は2022年1月5日および1月11日に発射した「極超音速ミサイル(北朝鮮側の発表した名称)」とよく似ており、ブースター部分のロケットを液体燃料1段式から固体燃料2段式に変更したものである可能性が高いと推定できます。

※弾頭部の滑空体は操舵翼が見える。

※ミサイル側面の電気配線管(cable raceway)が二つに分かれており、それぞれ第1段と第2段のロケット推進部分と推定される。

※ロケットの燃焼効率から、IRBM(中距離弾道ミサイル)の場合は液体燃料なら1段式で固体燃料なら2段式、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の場合は液体燃料なら2段式で固体燃料なら3段式という構成が世界的にも一般的。

2022年1月の北朝鮮「極超音速ミサイル」試験発射の記事

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  • 2024年01月14日「極超音速ミサイル」:固体燃料2段+滑空弾頭
  • 2022年01月11日「極超音速ミサイル」:液体燃料1段+滑空弾頭 
  • 2022年01月05日「極超音速ミサイル」:液体燃料1段+滑空弾頭
画像拡大:「極超音速ミサイル」の滑空弾頭、2022年1月5日(左)と2024年1月14日(右)
画像拡大:「極超音速ミサイル」の滑空弾頭、2022年1月5日(左)と2024年1月14日(右)

※滑空弾頭はほぼ同型だが微妙に形状が違う可能性。

※2022年の液体燃料型「極超音速ミサイル」は中距離弾道ミサイル「火星12」の燃料タンクを短くしたものをブースターに使用している可能性が高い。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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