島嶼防衛用新対艦誘導弾の全機実大RCS模型が公開
12月24日、防衛装備庁は11月12日に実施した「防衛装備庁技術シンポジウム2024」の動画アーカイブの配信および資料の公開を開始しました。公式ページのオーラルセッションおよび展示の箇所にそれぞれリンクされています。公開されている新技術の研究は多岐にわたります。実にオーラルセッションは17項目、展示は44項目もあります。
全てを一度に紹介するのはとても無理なので、ここでは「展示」の「資料」であるP-40「島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究」を紹介します。これには同ミサイルの全機実大RCS模型の写真が掲載されていました。※RCS模型:レーダー投影面積を計測する目的の模型
島嶼防衛用新対艦誘導弾の全機実大RCS模型
なお「島嶼防衛用新対艦誘導弾」は2023年6月6日発表の資料ではまだ使用されていた計画名ですが、2023年12月22日発表の資料からは「新地対艦・地対地精密誘導弾」へと名称を変更したものと思われます。関連記事:新地対艦・地対地精密誘導弾の新しいイメージ絵
2024年11月12日に実施した「防衛装備庁技術シンポジウム2024」で紹介された「島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究」とは、名称変更前の試験内容の紹介ということになるのでしょう。これはあくまで要素研究であり、正式採用が前提のものではありません。
現在の自衛隊の次期主力兵器となる長距離亜音速巡航ミサイルは来年には正式化される予定の「12式地対艦誘導弾能力向上型」ですが、これは対艦攻撃用途が主で対地攻撃については簡易な能力なので、「島嶼防衛用新対艦誘導弾」の研究を経た「新地対艦・地対地精密誘導弾」では本格的な対地攻撃能力を与えて対艦対地の完全な両用を目指しています。
XKJ301-1ターボファンエンジン
※従来の12式地対艦誘導弾に使用されている1軸ターボジェットエンジンよりも燃費効率の良い2軸ターボファンエンジン「XKJ301-1」
モジュールと多用途機体を組み合わせた機能弾
- 対艦誘導弾(デュアル・シーカ搭載):アクティブレーダ+赤外線シーカ ※推定
- 対地誘導弾 (赤外線シーカ搭載):DSMAC+TERCOM+GPS+赤外線シーカ ※推定
- ジャマー・デコイ弾:電子妨害および囮弾
- 目標情報収集弾(EO/IIRセンサ搭載):可視光/赤外線イメージ映像
- 高貫徹弾頭弾:単弾頭型の対地バンカー徹甲弾頭
※解説の追加部分は筆者の推定によるもの。対地誘導弾は防衛装備庁が意図的に説明を端折っている可能性が高く、能力的にはトマホーク巡航ミサイルに匹敵する各種誘導装置の装備を計画している可能性がある。
※全バージョンにINS(慣性航法システム)を搭載。
※目標情報収集弾は目標観測弾の進化型と思われる。
なお島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素研究では高機動によって敵艦のCIWSの射撃を回避すべく、最終突入中にバレルロールしながら突っ込むという驚異的な想定図が2020年12月14日に公開されています。出典:佐藤正久・参議院議員
【資料の略語の解説】
- RCS:レーダー投影面積
- CIWS:近接防御兵器
- SAM:艦対空ミサイル/地対空ミサイル
- AD-SAM:エリア防衛用SAM
- PD-SAM:ポイント防衛用SAM
- BANK TO TURN:機体のロールも制御する旋回方式
- SKID TO TURN:機体のピッチとヨーのみ制御する旋回方式
- EOR:エンゲージ・オン・リモート(遠隔交戦)
- Dual-Seeker:異なる二種類のシーカー
- EO/IIR:可視光映像/赤外線イメージ映像
- DSMAC:地形等高線照合装置
- TERCOM:デジタル式情景照合装置
- GPS:全地球測位システム
- INS:慣性航法システム