手倉森監督の徹底した「終盤勝負」の戦術をデータで振り返る
リオデジャネイロオリンピックのアジア最終予選を兼ねたAFC U-23選手権、手倉森監督率いるU-23日本代表は見事6連勝でアジアの頂点に登り詰めた。
特に決勝トーナメントに入ってからの3試合は、全て終盤に「ドラマ」が待っていた。計6試合における日本代表のゴールが決まった時間帯を表にしてみると、その傾向が可視化される。
全15得点のうち11ゴール、実に73%が後半と延長戦に決まっているのだ。この「偏り」は偶然ではない。手倉森監督の徹底した「終盤勝負」の戦術を選手たちが実践し、結果として現れたのだ。
終盤まで走り切れる選手のコンディションをターンオーバーで維持
今大会は中2~3日で6連戦を行う過密日程となっており、全出場国が選手のコンディショニングに苦労する形となった。
全チーム共通のその「課題」に対して、手倉森監督は「ターンオーバー」で対策を取った。6試合中、4試合連続でスタメンに起用されたのは、DF植田直通とMF中島翔哉の2人のみ。5試合以上連続でスタメン出場した選手はいない。
「不動のレギュラー」を作らずに、主力メンバーにも18日間の大会期間でどこかしらでしっかり休養を与えることで、最も疲労が蓄積される決勝トーナメントの舞台で、最後まで走り切れるコンディションを維持することができたのだ。
そして、手倉森監督はその全出場国共通の課題を逆手に取った「終盤勝負」という戦術を実行した。
戦術「浅野拓磨」がファイナルという舞台で結実
対戦国が終盤に足が止まるというスカウティングに基づき、昨季J1リーグで8ゴールを決めている広島の浅野拓磨を敢えてスタメンで使わずに、「終盤の切り札」として起用し続けた。
相手の選手がガス欠状態に陥る終盤に、50m5秒台の「快速ジャガー」をガソリン満タンの状態でピッチに送り込み、ひたすら裏のスペースに走り込ませる――。
これ程までにわかりやすく、かつ相手が嫌がる戦術が他にあるだろうか? この徹底した戦術が、ファイナルという舞台で結実したのだ。
※ジャガーとは浅野拓磨の愛称
前評判は決して良くなかったこのU-23日本代表をアジアチャンピオンに導いた手倉森監督は、もしかすると稀代の名将かもしれない。
本番のリオデジャネイロオリンピックも同様に中2~3日で試合が続く過密日程となる。この戦術が世界の舞台でどこまで通用するのか、期待して見守りたい。