西野ジャパン“V字回復の道” カギを握るのはサブ組だ 山口蛍、遠藤航の覚悟
ロシアW杯に向けて欧州で合宿中の日本代表は6月12日、オーストリア・インスブルックでパラグアイ代表との国際親善試合を行う。ロシアW杯前に行う最後のテストマッチ。W杯イヤー初白星と、西野ジャパン初白星を狙う日本は、ガーナ戦とスイス戦に先発した主力を控えに回し、“サブ組”の選手たちの先発が濃厚だ。
彼らはスイス戦からの3日間で急速に戦う意識を整えてきたメンバー。西野ジャパン浮沈のカギを握るメンバーでもある。
■山口蛍は強烈な守備意識を言葉ににじませた
2012年ロンドン五輪でU-23日本代表のベスト4入りに大きく貢献し、初めて日本代表入りし2013年東アジアカップでは、優勝してMVPに選ばれた。中盤で見せる卓越したカバー力と相手ボールを刈り取る守備力で急成長し、2014年ブラジルW杯ではボランチのレギュラーとしてプレーした。バヒド・ハリルホジッチ監督時代には「山口蛍だけが、フィジカル的な能力が少し高い」と評価され、デュエルの申し子として君臨した。
4月の電撃的な監督交代後も西野朗監督が選ぶ23人に順当に選出された。しかし、5月30日に横浜で行われたガーナ戦では3-4-2-1のボランチとして先発したがパフォーマンスは振るわず、6月8日にスイスで行われたスイス戦はベンチから見ることになった。
それから3日。パラグアイ戦ではダブルボランチの一角、あるいはアンカーとしての先発が濃厚だ。
ピッチ外では闘志を内に秘めるタイプの山口だが、スイス戦からパラグアイ戦に向けての期間に行った報道対応では、彼には珍しいほど強い意志を言葉に乗せていた。
スイス戦を見て感じたことについては、率直に語っていた。
「前から(プレスに)行ってもハマらなくて、失点を繰り返している。監督はある程度自由を選手に与えているから、ハリルさんのときのように守備の意識が強かったときよりも今は若干緩くなって、攻撃への意識が出ているのかなと思う。ただ、点を取れれば良いけど、2試合を通じて取れていない。そうなるとまずはしっかり守備から入っていかなければいけないのかなと思う」
山口は日本が誇るデュエル王である。ボールホルダーへの付き方については一家言を持っている。
「奪いに行くというよりは、人に付いているという感じだと思う。サイドに追いやっても、結局そこで前に立っているだけ。しっかりアプローチしていかないと好きにやられる。人に行くことに関しては、ここ2試合は前ほどはできていないのかなと思う」
パラグアイ戦ではどのような戦いを見せたいか。考えはシンプルだ。
「僕としてはまず失点しないことを意識する。自分が出たら、守備の部分をもっと全員でやっていきたい。守備のハメ方や追い込み方も含めて、自分だと(スイス戦とは)少し違うやり方をするかなと思うところもある。スイス戦よりも、いくところといかないところはハッキリした方が良い」
パラグアイ戦は午後3時キックオフ。W杯初戦のコロンビア戦と同じ試合時間だ。山口は、強い日差しと気温の高さを踏まえたうえで90分を戦わなければいけないという点も指摘した。
「午後3時ということも考えると、ずっとプレスにはいけないと思う。そういうことも含めて自分たちが出たときはもう少し違うやり方をするとは思う」
試合展開についてはどのような想定に持ち込みたいのか。
「僕としては、どれだけ0-0で試合を進めていけるかもテーマになる。0-0で進めていけば、最後の一番きつい、ラスト15分くらいで自分たちが相手を上回れると思う。そこまで耐えるしかないと思う」
難しい相手に対して最後に突き放して勝つ。そんな試合をイメージしている。
■シンプルに「走って戦う」ことに集中する遠藤航
西野監督がメンバー選考の際に強く打ち出していたのが、複数のポジションをこなせる「ポリバレントな選手」であることだ。
2016年リオデジャネイロ五輪でU-23日本代表キャプテンを務めたDF遠藤航は、その代表格と言って良い、守備のユーティリティープレーヤーである。また、各年代代表はもちろんのこと、湘南ベルマーレ時代は19歳でゲームキャプテンを任され、浦和レッズでも試合によっては昨年からキャプテンマークを巻く機会を得ている。
強烈な個はないがどの監督からも重用されるのは、高い戦術理解力と、大事なときにつねに計算できる状態にいる安定感があるからだろう。
右サイドバックでの先発が濃厚なパラグアイ戦では、どのようなプレーを心掛けようと思っているのか。
「個人としては、どのポジションでもまずは自分の良さを出し、しっかり戦う姿勢を見せたい。チームでは試合に出ている人も出ていない人も、みんなが意見を出し合っているけど、結局のベースは走って戦うことだと思う。ファイトする姿勢を見せないといけない」
西野ジャパンの合宿が始まってから約3週間が過ぎ、遠藤はいわゆる主力組のメンバーの経験値の高さや存在感、指揮官からの信頼度の高さを感じている。「僕らが出てパラグアイに勝っても、スタメンが大きく代わることはないと思う」と言うのはそれが理由だ。
しかし、諦観しているわけではない。
「でも、サブ組が勝つことでチームがピリッと引き締まるきっかけになるような気はする。チーム内に良い競争を生むためにも明日のゲームはすごく大事」
キャプテンシーの一端ものぞかせながら、表情を引き締めた。
■スタメンの編成に一石を投じたい
西野ジャパンは今、崖っぷちに追い込まれているが、サブ組が団結してパラグアイ戦で勝利を収めることができれば、停滞感の漂う主力組の編成に一石を投じることになるだろう。
西野監督はパラグアイ戦前日の会見で「スタートメンバーを固定して考えているわけではない。システムとキャスティングをトライしながら、新しい可能性を高いレベルで求めていきたい」と話していた。指揮官の気持ちを揺さぶる新たな可能性を示す選手が出てくれば、日本代表は間違いなく前進できる。
それだけではない。彼らの戦い方が「W杯での日本の方向性」を確立させることにもつながる。
ロシアW杯のカギを握るのはサブ組だ。
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