選手権3連覇へ前進する帝京大学は、なぜ「笛」で調子を崩さないのか。【ラグビー旬な一問一答】
勝って反省していた。
帝京大学ラグビー部は1月2日、東京・国立競技場で大学選手権の準決勝で天理大学に22―12で勝利。3シーズン連続12回目の優勝に近づいた。
開始18分で14―0とリードを奪った後、向こうにペースを握られ2点差に迫られながらもハーフタイムに軌道修正。終盤は判定の妙に苦しみながらも、10点差で勝利。江良颯主将が相馬朋和監督とともに会見し、不測の事態に動じない心構えについて語った。
以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
——14―12でハーフタイムを迎えて。
「相馬監督、岩出(雅之=前監督)先生が、ハーフタイムで『なぜ身体を張らない?』『誰のために戦っているんだ?』『仲間のために身体を張り続ける選手になろう』と。原点に立ち返れた。いままでやってきたプロセスを思い出して、仲間の分も身体を張ろうと考えがまとまったので、天理大学さんを相手に後半、無失点に抑えられたと思います」
——後半20分頃、敵陣ゴール前右での自軍スクラムで相手の反則を立て続けに誘発。向こうにイエローカードが出てもよさそうななか、人数が推移されて迎えた1本で逆に帝京大学が反則を取られました。最前列中央で組んでいた江良選手はどう感じますか。
「あとひとつのところで僕たちのスクラムのセットアップが崩れてしまった。天理大学さんのプライドを感じました。決勝では80分間、いい質のスクラムを組み続けられるように頑張っていきたいです」
——別の場面では、タッチラインを踏んでいない選手が「踏んでいた」と判定され、そのプレーの直後に生まれたトライが取り消されることがありました。当該のシーンはグラウンド上の大画面でも流れ、ファンのどよめきを生んでいます。
江良
「レフリーさんに何を言っても、レフリーさんが正解なので、そこに対してフラストレーションをためずに自分たちのラグビーをやり続けようと、1年間、話してきた。皆の顔を見ても全然、焦っていないですし、この大会では、決勝以外はTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル=映像判定)がないのもわかっていた。それを考えながら練習してきたので、僕自身もフラストレーションをためることなくできました。
レフリーさんも、(議論を招く判定を)やろうと思ってやっているわけでは絶対にない。僕たちもそうですが、ミスというのは絶対ある。レフリーさんをリスペクトしながらゲームを運んでいくのが選手としてやるべきことです」
船頭役の落ち着いた態度について、相馬監督はただただ感心する。
「本当に素晴らしいなぁと思っています。プレーしていて、判定が明らかに間違っているのを大型ビジョンで見てしまうと、心はざわつくものだと思うのですが、主将をはじめ学生たちがそんなそぶりをひとつも見せずに戦った。その姿を誇らしく思います」
判定に心を乱さない江良のマインドは、帝京大学の練習設計がもたらしているようだ。本人が会見後、改めて取材に応じた。
「僕たちのチームに学生レフリーがいます。その彼に、日頃から(実戦練習で)相手寄りのレフリングをしてもらって、フラストレーションをためずにおこなえている。それが身になっています。レフリーが、答えです。その答えにアジャストしていくのが僕たちです」
——そのような設計のトレーニングは、入学時からありましたか。
「ありました。キャプテンがレフリーの考えを把握し、(周りに)気づかせ、ファシリテートするようなイメージです」
——1年生の頃に初めてそれを経験した時は、驚きませんでしたか。
「そうですね。そこまで考えてやることは高校の頃はなかったので」
13日の決勝(国立)では、秋の直接対決で快勝した明治大学とぶつかる。