なぜ久保建英はソシエダで活躍しているのか?勝ち得た信頼とビッグクラブ移籍の可能性。
レアル・ソシエダが、好調だ。
ソシエダはリーガエスパニョーラ第33節で、本拠地レアレ・アレーナにレアル・マドリーを迎えて2−0で勝利。昨季の王者を撃破して、現在リーガで4位に位置している。
■ソシエダの主力に成長
そのソシエダで躍動しているのが久保建英だ。
久保は今夏、マドリーからソシエダに移籍金650万ユーロ(約9億7000万円)で移籍した。今季、ここまで公式戦39試合出場で8得点7アシスト(リーガ30試合8得点5アシスト)を記録しており、イマノル・アルグアシル監督のチームで完全に主力になっている。
「我々にとって大きなプラスになった。だが続けていかなければ、それも無意味になってしまう。勝ち点15ポイントが残されている。多くの勝ち点だ。まずは、ここからの2試合で、4位の座を死守したい。その先はわからない。現在の集中力、攻撃性、試合出場の意欲、そういったものを維持しなければ。4位フィニッシュという目標を達成するためにね」とはイマノル監督のマドリー戦後のコメントだ。
「クラブ史上においても稀に見る素晴らしいメンバーが、現在のソシエダには揃っている。ただ、それは順位表の位置や彼らのプレーによる評価ではない。彼らのコミットメントだ。彼らは日々、非常に仕事に集中している。ダビド・シルバのような選手が、あれだけのプレーをして、なおかつハードワークを厭わずに走り続けているんだ」
■久保の活躍の理由
ハードワークとコミットメント。これはソシエダと久保の活躍を紐解く上で、鍵になる言葉だ。
イマノル監督は今季序盤戦で【4−4−2】を基本布陣にしていた。久保を2トップの一角に据え、その采配は周囲を驚かせた。
無論、ミケル・オジャルサバルが負傷で長期離脱を強いられていたという背景はある。ただ、2トップの久保とアレクサンダー・スルロット、そしてトップ下のD・シルバが連動して前線からプレスを掛け、高い位置でボールを「引っ掛け手」ショートカウンターを喰らわせるというのはイマノル監督にとって欠かせない戦術になっていった。
オジャルサバルの復帰以降、イマノル監督は【4−3−3】と【4−4−2】の併用を増やした。その際には、久保を右WGに回して、彼のドリブルと突破力を生かせるようにした。そういった起用法が、久保を、チームを、快適にプレーさせる要因になった。
■移籍の可能性
久保はソシエダで攻撃の中心選手になった。当然というべきか、その活躍はビッグクラブの関心を引き付けるようになった。
マドリー戦前には、カルロ・アンチェロッティ監督が「ソシエダで非常に良いプレーをしている。今後数ヶ月の間にクラブと話し合うことになるだろう。ただ、競争の激しいレアル・マドリーでプレータイムを得るのは難しい。彼のレベルと彼のタイプを考えるとね」と久保について語り、話題を呼んだ。
ここで、状況を整理したい。現在、久保の保有権を100%有しているのはソシエダである。マドリーと保有権は「分割」されていない。また、マドリー側に買い戻しオプションは付けられていない。なお、将来的な久保の売却で、売却値の50%をマドリーが受け取るという条件が盛り込まれてはいる。
ソシエダは久保を獲得した際に、久保の契約解除金を6000万ユーロ(約90億円)に設定している。要は、6000万ユーロが支払われた場合、バイアウト条項で久保が「持っていかれてしまう」わけだが、まずビッグクラブがこれを支払うかどうかだ。
また、ソシエダは久保と2027年夏まで契約を結んでいる。長期の契約だ。つまり、ソシエダとしては久保に長く留まってもらいたいと考えている。
シーズン終盤に差し掛かり、今季好パフォーマンスを披露した選手に関しては、久保に限らず移籍の憶測が流れ始めている。
一方、ソシエダはチャンピオンズリーグ出場権獲得に向けて邁進している。そのためには、リーガで4位以内に入る必要がある。現時点で、5位ビジャレアルとは勝ち点7差。目標達成に、大きく近づいている。
「私は久保をチュリ・ウルディンの選手だと見ている」とイマノル監督が先日述べていた。久保自身も「来シーズン、100%、僕はチュリ・ウルディンの選手です」と語っている。チュリ・ウルディン(青と白の意)の久保が来季CLで躍動している姿を見たいーー。そう願う者は、少なくないはずだ。