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まさかの“2度目の都市封鎖”――無症状感染者が新型コロナウイルス封じ込めの死角

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
再び封鎖されたコウ県の街の様子(「新京報」ホームページより)

 新型コロナウイルス感染拡大への危機感が世界中で高まるなか、中国河南省平頂山市コウ県(人口約63万人)で3月下旬、新たな感染例が報告された。同県は2月上旬に都市封鎖の措置を受けたものの、感染拡大が収まったとして同月下旬には解除されていた。だがその後、無症状感染症の存在が発覚し、4月1日、再度の封鎖となった。封鎖が解除された後、また封鎖されるのは中国では初めて。無症状感染者の存在が感染の封じ込めを困難にしている実態が浮かび上がった。

▽他地域の患者の感染ルートから発覚

 河南省衛生健康委員会は3月29日、同省ラク河市の図書館清掃員、王某氏(59歳、女性)の感染を報告した。河南省では30日間連続で新たな感染が報告されておらず、地元では衝撃を持って伝えられた。

 地元当局の調べでは、王氏は24日夕に頭痛の症状を訴え、26日午後5時ごろに38・5度の高熱が出た。医療機関で検査を受けたところ、28日夜、感染が判明した。

 当局が調査したところ、王氏はそれに先立つ21日、隣接する平頂山市コウ県を訪問し、知人でコウ県人民病院医師の張某氏に会った。張氏の運転する車に同乗し、食事も3度、共にしていたという。

 その8日前の13日夜、張氏は同僚の劉某氏、周某氏の医師2人とレストランで夕食を取っていた。劉氏は、集団感染が発生した湖北省武漢への渡航歴があり、コウ県に戻った後、14日間の自主隔離を経て、普段通りの生活に戻っていた。

 コウ県人民病院が25日、医療スタッフへの健康診断を実施したところ、張、劉、周の3氏とも無症状感染者と判明した。

 このころ中国は無症状感染者に症状が出て初めて「感染者」としてきた。このため、張、劉、周の3氏は感染者にカウントされず、症状の出たラク河市の王氏が「省内で約1カ月ぶりの感染者」となった。李克強首相が3月30日、無症状の感染者数も公表する考えを示したことで、国家衛生健康委員会は4月1日から無症状感染者数を発表するに至った。

▽感染「第2波」への懸念強まる

 平頂山市は2月5日、感染拡大を阻止するため、コウ県を含む市の大部分を封鎖することを決定した。

 市内各地で人や車の出入りを厳しく制限し、各家庭では3日ごとに、家族で指名された1人が代表して生活用品購入にあたるよう義務付けた。小区(壁やフェンスで囲まれた団地群)では出入口は1カ所に限定され、24時間態勢で監視された。仕事などで外出する必要のある住民には身分証明証や職場の証明書などを登録して出入りするよう求めた。

 その成果もあって、コウ県では感染拡大が一定程度収まり、最後の感染者も2月8日に退院した。平頂山市全体では2月14日、ラク河市では2月19日に、それぞれ感染者が確認されて以後、新たな患者が報告されることはなくなった。

 これにより、地元当局は2月24日、コウ県を含む平頂山市全域での封鎖を解除した。同29日には市内全域の感染者が退院、3月9日にはコウ県の交通は全面復旧し、住民の間に解放感が漂った。

 ところが今回、無症状感染者の存在があぶり出され、その人を通して感染した人に重い症状が出た――この事態が、地元の疾病予防態勢に対する地元住民たちの懸念を再び引き起こした。

 コウ県は4月1日、再び全ての小区を封鎖し、出入りを1カ所に限定した。出入りする際、身分証明書の提示と、マスク着用、体温測定を義務付けた。路線バスや長距離バス、タクシー運行も停止となった。コウ県は「一夜にして」封鎖状態に戻り、日常生活が再び圧迫されることになった。

 中国は3月中旬以後、感染収束をアピールする一方、国内や入国者からの感染の「第2波」への懸念を強めている。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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