ゲームを通じて“東京”の歴史・文化を学ぶ 「MANGA都市TOKYO」会場に行ってみた
9月某日、東京・六本木の国立新美術館で現在開催中の「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」(※以下「MANGA都市TOKYO」)の会場に足を運んだ。
本展は、3月に拙稿「『龍が如く 極2』など東京を舞台にしたゲームが一堂に 異例の展示が7月に開催」(※)でもご紹介したように、文化庁と独立行政法人日本芸術文化振興会、国立新美術館が主催する「都市(東京)を映し出してきた日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品と、それらフィクションを注入された現実の『東京』の、複合的体験を提供する企画展示」(※記者発表会の配布資料より引用)である。
※筆者注:上記拙稿の掲載後、本展の開催期間は8月12日~11月3日に変更されている。
以下、ゲームに関連した展示コーナーをまとめてご紹介する。なお、筆者はマンガ・アニメ・特撮の知識が皆無なため、これらの考察は詳しく触れない(と言うより「触れられない」)ことを、あらかじめお断りさせていただく。
ゲームの全出展コーナー紹介
本展で紹介されたゲームは全13タイトル。いずれも紹介文と映像、開発資料(イラストなど)をセットで展示し、単にゲーム内容を紹介するだけでなく、作中にどのような形で東京が登場するのか、実際の東京の特徴や歴史などと併せて解説している。
最初のコーナーでは、「東京都23区制服Wars」、「電車でGO! FINAL」、「グランツーリスモ6」、「グランツーリスモSPORT」、「ガンスリンガー ストラトス2」、「ガンスリンガー ストラトス3」、「STEINS; GATE」の計7タイトルが、1/1000スケールの東京の模型と、巨大なビデオウォールとともに展示されている。
・「東京都23区制服Wars」
本作が東京都23区が舞台であることに加え、実際の東京都23区の面積、昼間人口の統計データと、該当する地域(模型になっている地域)を併せて紹介している。
・「電車でGO! FINAL」
山手線でプレイ中の映像とともに、東京ならではの高密度な鉄道網、路線図を解説している。
・「グランツーリスモ6」「グランツーリスモSPORT」
こちらは作中に登場するコースをビデオウォールにも映し出し、東京の幹線道路網を解説している。
・「ガンスリンガー ストラトス2」「ガンスリンガー ストラトス3」
渋谷、秋葉原など副都心の街並みを再現した両タイトルと、「東京の中心は『空虚』、あるいは『神聖なる無』」と評したフランスの思想家、ロラン・バルトの主張を解説した展示になっている。
・「STEINS; GATE」
ビデオウォールに映像を流し、本作の舞台が秋葉原であることを紹介している。さらに本作は、後半の「東京の日常III 世紀末から現在まで」のコーナーでも映像や開発資料、イラスト類が展示されている。
・「がんばれゴエモン2」
「東京の日常I プレ東京としての江戸」と題したコーナーにおいて、数百年もの間ほとんど変わっていない、東京を縦横に走る河川を演出装置に利用した例として本作が紹介されている。
・「サクラ大戦」
「女性の社会進出と花開く大正文化」というコーナーでは、「サクラ大戦」が職業婦人や、和洋折衷の衣装を着る女学生などが登場する例として展示されている。
・「セブンスドラゴン2020」
「東京タワーと東京都庁舎」のコーナーでは、両施設が登場する作品のひとつとして、本作が特撮映画「ゴジラ VS キングギドラ」などといっしょに紹介されている。
「東京の日常III 世紀末から現在まで」のコーナーには、若者の町、渋谷を舞台にした作品例として「すばらしきこのせかい-Final Remix-」と「JSRF ジェットセットラジオフューチャー」の2タイトル、東京最大の繁華街である新宿を舞台にした「龍が如く 極2」、および前述したようにサブカルの聖地、秋葉原が舞台となる「STEINS; GATE」が紹介されている。
・「すばらしきこのせかい -Final Remix-」
・「JSRF ジェットセットラジオフューチャー」
・「龍が如く 極2」
ゲームを「学びの場」に利用できることを教えてくれた展示内容
会場内に展示されたゲームは、一切プレイすることができない。しかし本展は、各ゲームが東京を舞台にしたことでどんな特徴を持つ作品になったのか、さらには東京の地理や歴史、文化などの「学びの場」に利用できることを確かに示してくれたように思う。
「ガンスリンガー ストラトス」シリーズのコーナーでは、ロラン・バルトのいかにも難しそうな思想が紹介された一方、「電車でGO! FINAL」の映像と鉄道網の解説のように小学生でも楽しめるコーナーもあり、個々のタイトルの深い知識や教養がなくても、気軽に楽しめるのも本展ならではの長所と言える。
ただ欲を言えば、ほどんどの出展タイトルで音声を聞くことができなかったので、耳でも東京あるいは和風の世界観を楽しめるようになっていればより面白く、かつ「学びの場」としての幅も広がる展示になったように思われる。ここは次回以降の課題かもしれない。
同じコーナーに並列された、マンガ、アニメ、特撮の作風と見比べながら楽しむことももちろん可能だ。例えば「がんばれゴエモン2」であれば、江戸時代の河川や橋の描写が登場する「百日紅」などのマンガと比較したり、「サクラ大戦」は「はいからさんが通る」などのマンガ・アニメと同時に鑑賞できるので、ゲーム以外のジャンルにも詳しい方であれば、なおいっそう楽しめるだろう。
実は本展、当初は東京オリンピックの開幕に合わせ、インバウンド需要も見込んだうえで7月8日から開催する予定だったが、残念ながらその目論見は実現しなかった。しかし、本展の展示パネルは英語のほかフランス、中国、韓国語にも対応しているので、日本に住む外国人の皆さんが東京、あるいは日本の文化を学ぶ際にも非常に有用ではないかと思われる。
なお入場の際は、事前にオンラインチケット「日時指定観覧券」の予約が必須となる。また、スタッフにお話を伺ったところ、新型コロナウイルス対策のため、会場の出入口にはアルコール消毒液を設置しているほか、こまめな消毒・清掃、および入館時の体温測定も行っているとのことだ。
詳しい入場手続きの方法などは、下記サイトにてご確認いただきたい。
Twitterアカウント: @manga_toshi_tyo