この秋ミニシアターで見たい映画!彩豊かな音楽と、死者との心暖まるファンタジーが劇場公開【神戸市】
心地よい秋がやってきましたね。そろそろゆっくりと映画鑑賞を楽しみに外へ出かけたいような季節。昨日、ミニシアターの独特な空間で映画を見ようと元町映画館へ行ってみました。
10月5日から公開が始まった「ヴァタ〜箱あるいは体〜」という映画があります。これはマダガスカルという島を舞台に撮られた映画なのですが、ここ日本から全く違った感性の世界へワープできるような素敵な物語だったので、今日はご紹介したいと思います。
マダガスカルはアフリカ大陸の横にちょこんとある島なのですが、日本よりも大きくて雄大な大自然が広がっています。
人々は茅葺のとても小さなおうちに住み、野生動物たちと共生しているような生き方。その日常の中ではいつも、音楽は欠かせません。
この映画には自然風景のダイナミックさや、アート作品を感じさせる夢の中のような映像、独特な楽器が醸し出す雰囲気ある音楽など見どころが色々あるのですが、その中で柱となっているテーマは「死生観」です。
と言っても、暗い感じの映画ではなくむしろ心暖まるような、素朴さと優しさが感じられる物語。
「ヴァタ」を撮った亀井岳監督が、この映画を撮りたいと思ったきっかけがあります。前作の「ギター マダガスカル」という映画の撮影時にマダガスカルで見かけた、ある人々の姿が忘れられなかったという記憶です。
それは、骨の入った箱を持って遥か遠い道のりを歩きつづける人々の姿。マダガスカルでは、家族や親族が遠い場所で亡くなった時、彼らの遺体が自然と骨になる頃まで待ち、時が来ればそこへ取りに行きます。
お金のある人は車で行きますが、お金のない人がほとんど。彼らは何日もかかる道のりを歩いて骨を迎え、家まで戻るのです。
その道中に色んなことが起こるのですが、そこにはあちらの世界とこの世のあわいの地点を導かれながら歩く人々、そして骨の主と彼らとの言葉を超えた深い対話がありました。
劇中に流れ続ける音楽や、生演奏は見どころのひとつ。彼らの手作りの楽器はとても素朴で独特な音を弾き出していて、その音楽の斬新さには目を見張るばかり。
音楽に操られるように踊る死者の霊とのクライマックスでは暖かな感情に包み込まれ、私は今まで持っていた死生観の重みから少し解き放たれて軽くなったように感じました。
マダガスカルでは、音楽は死生観と切っても切れない関係にあり、とても重要な役割を持っていると言います。「楽器は箱、その中には記憶がある…」そんな言葉で綴られたこの物語には、私たちの頭で考え出すような、凝り固まった世界から解放されるヒントがありました。
そして。この映画自体はフィクションですが、実際に今でも彼らがマダガスカルという大地に生きておこなっている実際の物語でもあります。
壮大な風景の中でポツンと、骨を持ち死者と対話しながら何日も歩き続けるような世界が、私たちの日常と同時にあるのだということに心がじんわり震えます。
感性が目覚めてくる秋にぴったりな、心がほっこりなごむファンタジー。どこかユーモラスで愛嬌ある、個性溢れるマダガスカルの人々が紡ぎ出す死者との豊かな時間に溶け込み、あちらの世界で一緒に遊んでみてはいかがでしょうか。
「ヴァタ 〜箱あるいは体〜」(外部リンク)
10/5(土)〜10/7(月) 17:00 →始まりの3日間は、監督の舞台挨拶があります
10/8(火)〜10/11(金) 13:00
神戸市、元町映画館にて
公開劇場は順次拡大中 (神戸以外でも上映中)
※詳しくはホームページでご確認ください
場所:兵庫県神戸市中央区元町通4丁目1-12 元町映画館
JR・阪神電車「元町」駅西口より、南西へ徒歩6分
神戸高速鉄道「花隈」駅東口より南東へ徒歩6分
神戸市営地下鉄海岸線「みなと元町」駅2出口より北へ1分
電話:078-366-2636
※駐車場・駐輪場はありません、公共の交通機関をご利用ください