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神戸と明石が舞台の「i ai」が上映中!マヒトゥー・ザ・ピーポー&森山未來が仕掛けた罠とは【神戸市】

Hinata J.Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)

神戸、明石を舞台にした映画「i ai (アイアイ)」がついに劇場公開されました。

監督・脚本・音楽はマヒトゥー・ザ・ピーポー、そして森山未來、吹越満、永山瑛太、小泉今日子など実力派俳優たちが出演している異色の話題作です。

私は初日に劇場で見たのですが、これはヤバいと思ったので皆さんにもここでシェアしますね。気になる映画の内容と、10日に行われた舞台挨拶や記者インタビューでのお話を簡単にまとめてみました。見にいくべき理由がここに!

<ストーリー>

ただ働くだけの日々に絶望感を持つ主人公のコウ(富田健太郎)の前に、ある日ふらりと現れたバンドマンのヒー兄(森山未來)。そこからヒー兄の弟キラ(堀家一希)たちとバンドを組むこととなり、コウは人生の輝きを取り戻していく。

自由奔放に生きるヒー兄に振りまわされつつも憧れるコウ。バンド仲間たちと駆け抜けた忘れられない日々。永遠に続くかと思えたある夏の日、突然訪れたヒー兄の、謎の死…

「生と死の境界線をも超え『さよなら』の定義を投げかける、祈りのような物語 」マヒトゥー・ザ・ピーポー

神戸市中央区の東門街にある「クラブ月世界」
神戸市中央区の東門街にある「クラブ月世界」

兵庫県で撮影されたこの映画は、地元の人であれば知っているような場所からちょっとマニアックな場所まで、とにかく沢山登場します。

例えば、圧倒的なライブの演奏シーンは生田神社の横手にある「クラブ月世界」。そこでは小泉今日子さんが演じる店長も登場し、物語のとても重要なシーンの幾つかが撮影されていました。

元町駅のすぐ近くのレコードショップや、湊川のパルシネマ、新長田の銭湯や細い路地道にある家。シーンのあちこちでひとつひとつ言葉を重ねていくこの映画を「マヒトの世界観が貫かれている」と話すのは、森山未來さん。

ヒー兄役を演じる俳優であり、ダンサーの「森山未來」
ヒー兄役を演じる俳優であり、ダンサーの「森山未來」

「皆んなで作っていったような時間でしたね」と、この物語のもうひとりの主人公ともいえるキーパーソン「ヒー兄」を演じた森山さんは話します。

役者として関わるだけでなく一歩入り込んだ位置での参加をした森山さんは、マヒトさんがいうところの「共犯者」、映画制作を通して一緒に何かを共有していく一員でした。

そんな森山さんはロケハンにも同行したそうなのですが、ビーチがある江井ヶ島の集合場所に現れた時は真夏ということもあって半裸の水着姿、片手には何故か魚を持っていたという笑い話も。ドキュメンタリー感のある映画の雰囲気は、そういった制作過程の延長線上にあったからのようですね。

「匂いのある映画」と表現するのは、全編に「気配」が立ちこもっているからとマヒトさんは語ります。下町独特の風景や流れる時間、生活感のある空間にどっぷり入り込んで作られた映像は、会場をその場面の気配で満たすくらいの濃厚さを持ってスクリーンに流れています。

「匂い」は、物語の中心にある「海」という存在とも大きく絡まります。実際に撮影現場は海の真ん前だったこともあり、マヒトさんいわく「映っていないシーンにも海の色や潮の匂いが含まれているような映画」なのだと。

実は最初、映画を木更津あたりで撮るという話もあがったそうなのですが「それなら僕やりません」と森山さんが言ったこともあり、全編兵庫でのロケに踏み切ったのだとか。

「海の種類って違うんですよね。太平洋はクリア、日本海は白んでいる、瀬戸内は水平線に霞がかるとか。明石の海を見てマヒトがこれを書いたのであれば、その景色が切り取れないと意味がないと思って」

そんな森山さんの想いが、映画の中に神戸や明石という地域が持つ、独特の「匂い」をもたらしました。

監督・脚本・音楽を担当した「マヒトゥー・ザ・ピーポー」
監督・脚本・音楽を担当した「マヒトゥー・ザ・ピーポー」

映画を作るにあたって最初に、マヒトさんは想いを込めた直筆の手紙を森山さんへと送りました。

そこまでして「ヒー兄」役の熱烈オファーをした理由を「まずは、海の匂いを知っていること、そして体を使って世界と対峙していること。海の風や街の語りかけることをキャッチできることが、特別な才能だと思ったから」なのだと明かします。

そういった裏話を聞いていても、この映画作りの中心に置いて目指していく所が「成功」や「生産性」なのではなく、ちゃんと心を響き合わせることができるか、この世界とのコネクトをどこまで表しきれるかなどの「表現」の究極のところを目指しているように感じられました。

左手・森山未來 右手・マヒトゥー・ザ・ピーポー
左手・森山未來 右手・マヒトゥー・ザ・ピーポー

映画を初めて作ったというマヒトさんの映画作りは独特です。他の制作現場には見られない、「その場で何を体験したかに賭けている」といった、ドキュメンタリー的に切り取るようなマヒトさん流の映画の作り方に対して「大きな意味で、分からないことは全然ないと思った」と語る森山さん。

そんな斬新なやり方を皆が受け入れて呼吸を合わせて作った映画、だからこそ届くリアルな空気感なのだと納得です。最後にコウがスクリーンに向かって話しかけるシーンがあるのですが「この手法は映画館での上映にとても適している」とも。

確かにそれは圧巻のシーンでした。この映画の主人公って一体、誰?語られた物語は誰のため?私が再び出会うものとは何なんだろう…気づくと涙はずっと流れっぱなしで、だけど決して悲しい訳ではないのです。

心の奥深くから勢いよく引っ張り出されてしまったものがありました。自分でも自覚がないほど、それは遠くにしまってあったもの。どうやら、映画が仕掛けた罠にはまってしまったようです。

色と風が舞う、儚くも美しい世界。スクリーンからあふれ出した匂いに体ごと全部を包み込まれて、自分もその中に溶けてしまいそうになります。映画館で体験するべき物語だというのはもう、間違いない事実です。

「i ai」ポスタービジュアル 森山未來 ©️スタジオブルー
「i ai」ポスタービジュアル 森山未來 ©️スタジオブルー

ある日突然の、死。「サヨナラなんてない、出会い続けろ」…スクリーンの向こうから投げかけられる言葉。肉体は旅立っていっても、消えることのないものがあります。

「この世界の体積は一定なんやって。ヒーの体積って何に変わったんやろな」

登場人物たちが発する言葉を拾い集め、パズルのように組み合わせていく謎解きのような作業。または同時に、自分の過去や記憶にそれを当てはめて、ずっと隠れていたものを紐解いていく。そんな仕掛けがこの映画には隠されています。

「i ai」は、あなたと私が再び出会う物語。「死」が真ん中にある、だけどそれは終わりではなくて。出会いは手渡されていくもの、そうやって物語が続いていけばいいなというマヒトさんからのメッセージが、最後にありました。

新長田でのシーン。「i ai」ホームページより
新長田でのシーン。「i ai」ホームページより

神戸や明石、兵庫県に住む人は絶対に見た方がいいと思う映画です。街や海、情緒ある下町。こんなにも味わい深い土地に自分は住んでいるのかということを再発見できます。そしてそこには物語が常に生まれ続けていて、そんな中に自分も同時に生きていることを知ります。

どうか「i ai」の皆んなにもスクリーンの中まで出会いに行ってみてくださいね。同じこの場所、今という時代に生きる仲間として。

i ai again.

「i ai」

映画「i ai」ホームページ (外部リンク)
上映館情報 (外部リンク)←全国順次公開

神戸での上映↓
シネ・リーブル神戸 (外部リンク)
場所:兵庫県神戸市中央区浪花町 59 神戸朝日ビルディング B1F
Tel : 078-334-2126

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旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

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