X(Twitter)で競合サイトの表示にかかる遅延は「意図的」か
8月15日(米国時間)、X(Twitter)が競合サイトへのリンクを開くのに遅延をかけていると報じられ、話題になっています。
この遅延は意図的に入れられたものなのでしょうか。Twitterにおけるリンクの仕組みを踏まえながら考察してみます。
一部サイトで応答時間が大幅に増加
ワシントンポストの報道によれば、ニューヨークタイムズやFacebookなど、「マスク氏がよく攻撃するサイト」をTwitterから開く際に遅延がかけられているとのことです。
この記事が公開された後に遅延は解消されたとの指摘もあり、同じ状況を再現することはできませんが、まだ遅延が残っていると思われる部分があるようです。
まず基本的な仕組みとして、Twitter上における外部URLへのリンクは、独自の短縮URLサービス(t.co)を通して提供されています。
画面上では普通のURLに見えますが、パソコンのWebブラウザーなどでマウスカーソルをあてると、リンク先が短縮URLになっていることが分かります。
このリンクを開くと、Twitterが運営するt.coのサイトにつながり、そこから本来のURLに飛ばされるという二段構えになっています。
実際にt.coの短縮URLを開くのにかかる時間を計ってみると、8月16日15時の時点ではまだ遅延が発生していることを確認できます。
一般的なWebサイトへのリンクでは約0.1秒で応答が返ってくるのに対して、Twitterの競合とされる「Threads」や「Bluesky」へのリンクでは約2.6秒かかっています。
この応答時間は、短縮URLから本来のURLを取得する際に実行している処理によっても変わってくるため、不可解な挙動ではありますが、これだけをもって意図的な遅延とは断定できません。
しかし、Twitterが競合サイトを排除する試みはこれまでにも実施されていることから、可能性としては十分にあり得ると筆者は考えています。
たとえば、Twitterの「おすすめ」表示のアルゴリズムにおいて、競合サイトに関する修正が入っているとの指摘があります。
このアルゴリズムは、イーロン・マスク氏が「おすすめ」の透明性を確保してユーザーの信頼を得るという観点からGitHubにソースコードが公開されており、誰でも読むことができます。
その中に、フォローしていない人(Out-of-Network)からの競合サイトのURLを含む投稿について、スコアリングに影響を与える処理を実行していると読めるコードが存在しています。
競合サイトのURLがスコアリングにどのような影響を与えるのか、筆者は確認できていませんが、過去の経緯から、そうした投稿が拡散しないよう一定のペナルティを与えている可能性はあります。
イーロン・マスク氏は大手メディアをTwitterの競合と考えているようなので、他のSNSと同列に扱っている可能性はあります。ただ、基準を示さずに一部のメディアにだけ遅延を入れる行為があったとすれば、さすがにそれは「不透明」と言わざるを得ません。
SNSの競争は次の段階に進むか
SNSのようなサービスでは、放っておくと多くの人が不快に思うような投稿が拡散することがあるため、運営側はさまざまなルールに基づいて表示に制限をかけています。
こうした「モデレーション」があるからこそ、多くの人は安心してアプリを開き、タイムラインをスクロールしてSNSを楽しめるわけです。
そうなると「言論の自由」との兼ね合いが気になるところですが、Twitterは「言論の自由はあっても、リーチの自由はない」というポリシーを掲げています。
これは、「規約違反ではないが好ましくない投稿」を拡散しない仕組みとして機能しています。ただ、これを競合サイトにも適用するというのは次のフェーズに進む印象を受けます。
SNSや動画サイトは利用者の時間の奪い合いになっており、そうした競争の範囲内といえる側面はあるものの、SNSに公共的な役割を期待する人にとっては気がかりな点といえます。