日本対ウルグアイ戦。柴崎岳と久保建英が共有した“勝機のツボ”
日本が招待国として参加しているサッカーの南米選手権(コパアメリカ)グループリーグ第2戦、日本対ウルグアイ戦は日本時間21日午前8時にキックオフされ、2-2のドローで貴重な勝ち点1を手にした。
日本の先発はチリ戦から6人が入れ替わり、
GK:川島
DF:岩田、植田、冨安、杉岡
MF:三好、柴崎、板倉、安部、中島
FW:岡崎
8選手が代表デビューを飾り、0-4で完敗した初戦のチリ戦から中2日。舞台は初戦のサンパウロから、大西洋の海岸沿いに南西へ約1100キロ離れたポルトアレグレへ移っての戦いだった。欧州からの移民が18世紀につくった港町で森保ジャパンが目指すべきターゲットは、初戦では得られなかったゴールと勝ち点だ。
開催地であるポルトアレグレの昼間の天候は快晴。現地入りした18日ごろから朝晩は15度前後まで冷え込んだが、サッカーをするには最適とも言える気候で、日本は初戦で浮き彫りになった課題をどう修正しているかが見どころだった。
この試合では、2試合連続で先発した柴崎岳と、ベンチスタートから試合終盤に投入された久保建英が、試合前から同じポイントにフォーカスしていた。
■カウンターのウルグアイにポゼッションで立ち向かう
ウルグアイ戦を翌日に控えた19日夜(日本時間20日午前)の練習。ピッチコンディションが悪いため、南米連盟の判断によりスタジアムでの公式練習がキャンセルされた日本代表は、ポルトアレグレ市内の施設で約1時間半の最終調整を行い、その後、メディアの取材に対応した。
カウンター攻撃を得意とするウルグアイに対し、ポゼッションスタイルで戦いを挑みたいと考えているのは、今大会でキャプテンマークを巻いているMF柴崎だ。
初戦のチリ戦では相手の素早く厳しい寄せに対応しきれず、ボールを奪われる場面が少なくなかった。それでも要所では効果的なパスを配給。2点目を失った後の後半12分には高い位置でボールを奪い、上田綺世の動き出しに合わせてゴール前のスペースへ絶妙な浮き球のパスを供給した。
その後も中盤でタクトを振るって反撃するチームを牽引。前掛かりになったところを突かれてさらに2失点を喫したが、ボールを握って攻撃を組み立てる力があることを示した。
ただ、得点には至らなかった。ウルグアイ戦ではまずゴールを奪えるかどうかが課題修正のひとつの答えになると見られた。
■柴崎「ボールロストは減らさないといけない」
柴崎は、チームとしてゴールを奪うためにボランチとして必要なことは何かと聞かれると、「日本はボールを持つことがチームの強み。そのためには安易なミスを少なくしたい。ボールロストの回数は減らさないといけない。それに、ミスが重なると疲労度も上がる」とコメントしていた。疲労はインテンシティーの低下につながる。最後まで球際でファイトするためにも、ミスはできる限り少ない方がいい。
そして、守備面で警戒すべきとして挙げたのは相手の2トップだ。スペインでプレーしている柴崎は、スアレスをはじめとするリーガ所属の選手の能力を肌感覚で知っている。
「非常に能力の高い選手が各ポジションにいる。特にストライカー。スタメンで出ている2人(スアレス、カバーニ)もそうですし、ベンチの2人(クリスティアン・ストゥアニ、マキシミリアーノ・ゴメス)もリーガで活躍している。攻撃陣には特に注意したい」
ただ、ウルグアイにも付けいる隙はある。柴崎が挙げたのは心理面である。実力差のある日本に対して、昨年10月の対戦に続く連敗は許されないと考える彼らの心理状況をうまく利用したいという考えだった。
「勝ちたいのは僕らも一緒ですが、勝たなければいけない気持ちを持っているのはウルグアイ。どれだけ粘り強く対応するかで、向こうがじれてくる。焦る気持ちを持たせるのも戦略、展開のひとつとしてあるのかなと思う」
■久保「先に点を取ることが重要」
ウルグアイ戦前日の取材で柴崎と共通する考えを語った選手がもうひとりいる。久保だ。
強豪から勝ち点3を奪うには、相手のウィークを的確に見つけ出し、そこを突いていく必要がある。久保は「先に点を取ることが重要になると思う」と切り出しながら、ラテンアメリカ選手のメンタル的特性に思いを巡らせて、こう言った。
まずはチリ戦を踏まえて「2点、3点取られてしまうと、落ち込むというか、自分たちでも結構ナーバスになることが多い」と日本チームを“自己分析”。そのうえで「南米のチームは表現力というか感情が豊かなので、自分たち(日本)が持ったような感情、そこのマイナスの部分を突けたらいいのかなと思う」と加えた。
久保ならではのクールな目線で敵の内面を見抜いていく状況まで持ち込めれば、日本にも勝機が訪れるだろうと思われた。
久保は南米選手権の代表に選ばれた際の囲み取材で、「怖さはあるが、悪い怖さというよりはいい怖さ」と足を踏み入れたことのない未知の世界に思いを馳せていた。実際にチリ戦を終えた今、語っているのは、「そこまで段違いに強度が高いとは思わなかったし、それほどレベルの違いを見せられたわけではない」ということ。物差しの目盛りを把握する段階は終わったのだ。
そのうえで「このトーナメントは技を磨く場所ではなく、今持っているものを出すだけ。結果にこだわっていくのが一番だと思う」と大会に臨む姿勢をあらためて明確に示した。
■4-3と打ち勝った埼スタでの試合から8カ月
日本は昨年10月16日に埼玉スタジアムで行われた親善試合で、ベストメンバーで来日したウルグアイに4-3の打ち合いを制した。試合はホームの日本が10分に南野拓実のゴールで先制。28分にガストン・ペレイロのゴールで1-1とされたが、36分の大迫勇也の得点で2-1とリードして前半を折り返した。
57分には不用意なバックパスをさらわれてエジソン・カバーニのゴールで2-2と追いつかれたが、59分に堂安律が勝ち越し弾、さらに66分に南野が2点差とするゴールを決めた。
75分にはホナタン・ロドリゲスの得点で1点差に詰め寄られたが、最後は4-3で勝利。ミスを帳消しにする攻撃陣の破壊力で、新時代の到来を印象づけた。
それから8カ月。親善試合とは別ものの戦いをしたウルグアイに対して、日本は南米ブラジルの地で互角に渡り合った。
日本は三好康児のゴールで先制し、すぐにスアレスのPKで追いつかれたが、再び三好の得点で突き放した。日本がリードしてウルグアイの焦燥感を引っ張り出すという、メンタル面でのつばぜり合いは、柴崎や久保が事前に思い描いていたゲームプランのツボ通りだった。
最終スコアは2-2。三好の先制点のシーンではマッチアップしていたウルグアイDFが走っている最中に足を負傷した模様で三好の動きについていけなくなったという多少の幸運があったものの、ペナルティーエリア内での植田直通のカバーニへの対応がVARの発動によってファウルとされてPKとなったことや、反対に中島翔哉がペナルティーエリア内で倒されながら笛がならなかったというアンラッキーを相殺させても、日本は十分にウルグアイを苦しめていた。舞台が南米選手権ではなく、ワールドカップなら、どういう判定になったか。
チリ戦で自覚した課題を修正し、大会中に強くなる姿を見せることも求められている若き日本代表は、わずか2日で合格点の回答を示した。そして、柴崎や久保の読みはおおよそ正しいものだった。