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4月から堂々と有給休暇が取れるようになる、取らせなければ会社に罰則も

浅田里花ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)
心身のリフレッシュに欠かせない有給休暇が取りやすいよう、制度化されます。(写真:アフロ)

◆「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務化される

 まもなく年度末を迎えます。例年3月は忙しいという職場にお勤めの人も多いでしょう。「今年度も有給休暇を消化しきれそうにない」という声も聞こえてきそうです。中には、とても有給休暇を申し出られる雰囲気ではない職場もある模様。

 厚生労働省の『平成30年就労条件総合調査』を見ても、平成29年の年次有給休暇日数(繰越日数を除く)は平均18.2日付与されているのに、労働者が取得した日数は9.3日と、取得率51.1%にすぎません。これでも、前年まで50%を下回ったままだった状況からアップしているのですが、政府が2020年までに目標とする取得率70%にはほど遠い状況です。

 

 しかし、この4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が使用者に義務付けられます。政府が掲げる「働き方改革」の一環で、意欲・能力を存分に発揮できる環境作りとして、心身のリフレッシュに欠かせない有給休暇を取りやすいよう制度化するというわけです。

◆対象となるのは年10日以上の有給休暇が付与されている人

 労働基準法では、(1)雇入れの日から6か月継続して雇われている、(2)全労働日の8割以上を出勤している、という2点を満たす労働者は、10日の年次有給休暇が付与されると定められています。正規雇用・非正規雇用は関係なく、継続勤務年数によって有給休暇の付与日数は増え、6年6か月以上の勤務年数だと20日となります。

 パートタイマーやアルバイトなど短時間労働者については、労働時間が週30時間未満かつ週の労働日数が4日以下、または年間の労働日数が216日以下の場合、有給休暇は労働日数によって比例付与されます。

 たとえば、週の労働日数が2日(年間の労働日数が73日~120日)のケースでは、継続勤務年数6か月で3日、1年6か月で4日、3年6か月で5日、4年6か月で6日、6年6か月以上で7日となります。

 4月から「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられるのは、「年10日以上の有給休暇が付与されている人」が対象。したがって、短時間労働者の場合は、週の労働日数が3日(年間の労働日数が121日~168日)で継続勤務年数5年6か月以上、または週の労働日数が4日(年間の労働日数が169日~216日)で継続勤務年数3年6か月の人でないと、有給休暇が10日以上付与されないので、制度の対象にはなりません。

 一方、対象となる人にとっては、有給を取りたくてもなかなか言い出しにくい状況が変わるのではないかと思われます。

 会社は、「使用者による時季指定」、「労働者自らの請求・取得」、「計画年休」のいずれかの方法で、有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日の有給休暇を取得させなければなりません。会社が有給休暇の時季を指定する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲や時季指定の方法について、就業規則に記載する必要があります。

 また、確実に有給が消化されたことがわかるよう、労働者ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存することとなっています。

 もし、年5日の有給休暇を取得させなかった場合や、就業規則に記載しなかった場合は、労働基準法違反として使用者には労働者ひとりにつき30万円以下の罰金が科せられます。さらに、労働者の請求する時季に有給休暇を与えなかった場合の罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という厳しいものです。

 10日の有給休暇が付与されている制度対象者にとって、年5日の有給休暇が確実に取得できるとはいえ、それ以上積極的に休まなければ、取得率は50%から変わりません。本来は100%取得する権利があるのです。

 義務化されることで、休みにくい雰囲気が強制的にでも休ませなければならなくなり、休みやすい環境に変わっていくことが期待されます。

◆「特別休暇制度」の導入にも期待

 「有給休暇」は法律により義務づけられた休暇ですが、夏季休暇、病気休暇、ボランティア休暇、リフレッシュ休暇、教育訓練休暇など、会社が任意で定める「特別休暇」という制度もあります。

 厚生労働省の『平成30年就労条件総合調査』によると、企業規模1000人以上の企業では77.4%が導入していますが、30~99人の企業では57.1%と開きがあります。

 そこで、中小企業・小規模事業者の「特別休暇制度」導入を支援する施策として、4月以降に補助金制度がスタートするもようです。2019年度予算案に具体的には盛り込まれていませんが、厚労省が取り組む主要事項のひとつ「働き方改革による労働環境の整備、生産性向上の推進」のなかで予算が割り振られるものと思われます。

 特別休暇制度のような福利厚生が充実していない中小企業・小規模事業者は、売り手市場が続くなか求職者から選ばれにくく、人手不足が深刻化しています。残念なことに、事業は上手くいっているにもかかわらず、人手が足りないゆえ倒産する会社も出ているくらいです。

 特別休暇制度導入への支援を行うことで、人手不足問題の解消にもつながると期待されています。

 現在は勤め先に特別休暇制度がないという人も、もしかしたら近々導入されることになるかもしれません。

ファイナンシャル・プランナー(CFPⓇ・1級FP 技能士)

㈱生活設計塾クルー取締役、個人事務所リアサイト代表、東洋大学社会学部 非常勤講師。同志社大学文学部卒業後、大手証券会社、独立系FP会社を経て現職。一人ひとり・家庭ごとに合った資産設計、保障設計、リタイア前後の生活設計等のコンサルティングのほか、新聞・雑誌等への原稿執筆、セミナー講師などを行う。著書に『50代からの「確実な」お金の貯め方、増やし方教えて下さい』、『住宅・教育・老後のお金に強くなる!』、『お金はこうして殖やしなさい』(共著)など。生活を守り続けるにはマネーリテラシーを磨くことが大切。その手伝いとなる情報を発信していきたい。

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