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リーチ マイケルはがっかり。ノートライ負けの喫緊課題とは?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:アフロ)

 ワールドカップフランス大会開幕まであと約2カ月。ラグビー日本代表は7月8日、JAPAN XV名義でオールブラックス・フィフティーン(ニュージーランド代表の予備軍的な位置づけ)と今季最初の実戦をおこない、6―38で敗れた。 

 試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチとフランカーで先発したリーチ マイケルゲーム主将が会見。ジョセフは手元でメモを取りながら熱っぽく語り、いつもは理路整然とした語り口のリーチは落胆が大きい様子だった。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ジョセフ

「率直に残念だった。チームを(元の状態に)戻すには時間がかかる。3~4週間、練習してきたが、長い間、試合をしていない。ワールドカップに向けてしっかりチーム作りをすることが大事だと思っている。今回は新しい選手たちを試していた。特に福井翔大はオールブラックス・フィフティーンを相手にすごくいいプレーをした。この試合ではポジティブな部分もありましたが、たくさん課題もある。来週の試合で修正できるようにしたい」

リーチ

「負けは負けなので受け止めないといけない。ジェイミーが言ったように新しい選手も出て…。ジャパンの強みをどう出すかを考えないといけない。反省点は、あります。でも、このチームの強さは反省点をよくすること。次に向けて仕上げていきたいと思います」

 チームは5月まで約半年間の国内リーグを経て、6月12日に浦安合宿を本格始動させた。最初の2週間は、約1時間休みなしのタックルセッションを実施。身体衝突時の技術、強さ、精神力を鍛えた。

 それ以外の場面でもハードな実戦練習を重ね、7月上旬に拠点を宮崎へ移してからも献身。疲弊した状態で強敵に挑んでいた。

 序盤こそ鍛錬の成果をしてのタックルを披露できたが、終盤にはタックルミスが増加。前に出る防御システムの穴(大外など)を突かれるシーンもあり、後半、4トライを許した。

 攻めても攻撃中の接点から球を出せぬことがあり、好機を逃した。ノートライに終わった。

 背景があった。

 この日はノンキャップ勢5名が抜擢され、司令塔の松田力也は約1年7か月ぶりの「代表戦」。その他、久々の復帰を果たした選手も多く、連係が乱れた。

——パスミスなどはやがて解消するイメージか。

ジョセフ

「そう思います。新たなコンビネーションを試した部分もありますし、いままで6~7カ月、このチームで試合をしていません。各クラブから集まってきて最初の試合が、このような大きな相手との対戦だった、という側面もある。オールブラックス・フィフティーンには実際にオールブラックス(ニュージーランド代表)になった選手が複数いて、まさに未来のオールブラックスと言える選手もたくさんいます。リーダーシップをとる選手たちが成長することで、若い選手たちの自信がついてくると思います。きょうは、一貫性のなかった部分が浮かび上がった試合だと思っています」

——浦安で強化したタックルへの手応えは。

ジョセフ

「タックルは浦安でたくさん練習をしてきました。来週もオールブラックス・フィフティーン、アイランダー(環太平洋諸国の代表)と、身体の大きな選手たちと戦います。その部分(タックル)は常によくしていかなきゃいけない。浦安のタックル練習を通しては、メンタリティも鍛えなきゃいけないと話していました。毎週、タフな相手と戦うのに、メンタリティも意識して試合をすることが大事。きょうはアウトサイドバックスのタックルミスが多かった。そこは改善しなければいけない」

リーチ

「(接点に)近いところではよくなった感じはあります。これからは出てくる相手もでかいし、もっともっと継続したいと思います」

——きょう見られた課題のなかで、早急な解決が必要なものと現時点で悲観すべきでないものを仕分けするとしたら。

ジョセフ

「言えることは、きょう、ワールドカップに向けて新しいコンビネーションを試した部分があった。堀越康介のスタート。坂手淳史、堀江翔太の穴を埋める大きな仕事があった。松田力也も長い間、試合をしていないなか(約1年7か月ぶりに)出場しました。彼らがステップアップできるかどうかが見られた。よかったところもあったし、まだまだなところも多かった。来週は稲垣啓太ら、いままで準備ができていなかった(主力)選手も戻す予定。これから2か月間そういう選手を使いながらステップアップしたい。

 私は各試合で選手選考を考えています。チームとしてその週のベストチームが誰なのかを考えます。もちろん、それがパフォーマンスによって変わることもあります。パフォーマンスによって選手が外れることは選手も理解している。福井翔大は他の選手にプレッシャーをかけられるのではないでしょうか。私は選手を客観的に見て、長期的なことを考えながらセレクションをしています。

 残念なところは…。チームとしてプレッシャーをかけることができたが、ボールを奪った後にパニックになり、相手にボールを渡すことがあった。経験のある選手までそのようなミスをしたことは、できる限り早く修正しなくてはいけないです」

 確かに、ジョセフの言葉通りのシーンはいくつかあった。リーチは防御で穴を作ったり、好機を逃したりした場面の背景をこのように語った。

リーチ

「ボールを持っていない時の動きがひとつ。セットスピード、予測…そういうところです。あとは、モメンタム(勢い)がある時にそれをどうキープするか」

 ここでの「予測」とは、活動開始前に首脳陣が選手に求めてきた要素だ。先のプレーを読み、適したポジションにつくのを是とする。

——現時点での到達点は想定通りか。

ジョセフ

「チームとしてメンタリティ、フィジカリティをしっかりと改善したいと目標を掲げていた。きょうはディフェンス、スクラム、モールでプレッシャーをかけられた。ペナルティを取られる部分もありましたが、(全体的には)よかった。

 ただ、フォワードの選手のタックルが増え、その後にアタックに転じた後にミスを犯してしまうことがあった。修正点です。これからワールドカップで戦うイングランド代表、サモア代表、アルゼンチン代表を見据え、身体の大きな選手に対抗するフィジカリティは最優先に強化しないといけない」

 鍛錬期の強化試合に苦しむ傾向にあったのは、過去の日本代表も同じ。歴史的3勝を挙げたイングランド大会の開催年(2015年)も、宮崎合宿中の4月にあった韓国代表戦は30―56と苦戦。7月のパシフィック・ネーションズカップも1勝4敗と負け越している。

 いまも、生みの苦しみの只中にある。そう客観視される状況のもと、リーチは反省の色を浮かべている。ワールドカップ初優勝を目指す日本代表の、これが現在地だ。

 15日には日本代表として、同じ相手に挑む(熊本・えがお健康スタジアム)。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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