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児童虐待をする親の心理

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


児童虐待のニュースを見ると、大変に胸が痛みます。
こうしたニュースでは、「親が子どもに対し、どれだけ酷いことをしたのか」くり返し報道されることが多いのですが、そんな報道を見ていると、腹立たしいやら悲しいやらの気持ちが沸き起こり、思わず目を覆いたくなります。

では、こうした児童虐待をする親たちは、子どもに対して、愛情のかけらも感じない、本当に酷い人間なのでしょうか? 私は、そんなことはないと思います。一歩間違えば、誰だって、彼らと同じようなことをしてしまいかねない、か弱い孤独な存在だと、私は思います。

私は、過去、児童虐待で悩むお母さんを何度もカウンセリングしたことがあります。
そんな中、私は、大きな発見をしました。
それは、児童虐待をしてしまっているお母さんは、自分の子どもから悪意を感じているということです。そして、その悪意に対して、お母さんは、暴力(言葉の暴力やネグレクトも含む)でもって対抗している…ということです。
私が思うに、それが、「親が子どもを虐待する心理状態ではなかろうか?」ということです。


1.子どもから感じる悪意とは何か?

児童虐待をする母親は、子どもから悪意を感じていることが多いのです。
子どもが自分の思い通りにならないと、「この子は、私を馬鹿にしている」「わざと私を、困らせようとしている」「できない私をなめている」と、思ってしまいがちなのです。
私は、事実、上記の言葉をクライアントから聴いたことがあります。
そう、彼女らは、被害妄想に取り付かれているのです。
だから、必要以上に感情的になり、腹を立てるのです。


2.何故ありもしない悪意を感じるのか?

1. 子どもに対する理解が乏しいからです。
「子どもは、本来、自己中心的な生き物である」ということを知らないからです。
「子どもは、本来、失敗する生き物である」ということを知らないからです。
「子どもは、本来、言うことを聞かない生き物である」ということを知らないからです。

子どもは、相手のことを理解する能力が、まだ育っていないので、当然、自己中心的であるし、未来を予測する能力もなく経験も浅いので、当然、失敗するし、人の意見を冷静に聞く余裕も能力もないので、当然、聞きわけが悪いのです。
児童虐待をする親は、上記のことをよく理解していないのです。

2. 親自身が、自分に自信がない(自尊感情・自己肯定感が失墜している)からです。
自分に自信がないと、被害妄想的になりがちです。
自分に自信がないと、自分のことを好いてくれている子どもに対してさえも、素直に、「自分は愛されている・必要とされている」という実感を得られなくなってしまいます。
特に、母親から愛された経験が乏しい人は、自分に自信を持ってないことが多いですし、愛情表現の仕方を知らないことが多いです。

3.ストレスを溜め込んでいるからです。
ストレスに苛まれている母親は、イライラしているため、子どもの言動に悪意を感じてしまいます。自分は、良い母親ではないと感じている母親は、そのことでより強くストレスを溜め込みます。

自分は良い母親ではないという思い → ストレス → イライラしているため、子どもから悪意を感じる → 子どもに手をあげる → 自分はやはり良い母親ではないと思う → ストレス

自分のことを良い母親ではないと感じるのは、自分自身と、自分の頭の中にいる母性豊かな理想的な優しい母親とを比べ、劣等感情を持つからです。

4. 疲れているからです。
お母さんは、日頃の育児から、大変に疲れているのです。
そして、人間、疲れていると、どうしても被害者意識が増すものです。

5.性格的なもの
児童虐待をするお母さんは、実は、怖がり性格であることが多いです。
怖がりなため、子どもの言動を、自分に対する攻撃だと感じてしまうのです。

優等性気質(努めて、おりこうさんにしていようと考えている性格の持ち主。おりこうさんにしていれば、誰かから褒められる、誰かから褒美をもらえる筈…と思っている性格の持ち主)のお母さんは、怖がりであることが多いです。

優等性気質のお母さんは、育児も完璧にやろうと考えて、一所懸命子どもに関わることが多く、「まあ、いいや」感覚がなくなり、その結果、自分の至らなさや、子どもの良くない点ばかりが目につくようになることが多いです。


3.児童虐待をやめる方法

1.「子どもは本来、言うことを聞かない存在だ」ということを知ること。
子どもの特性をよくよく知ること。
「子どもは決して、自分に悪意があるわけではない」ということを深く理解すること。

2.自分に自信をもつこと。
自分の頭の中に存在している理想の母親と自分自身を比べないこと。
できる母親と自分を比べて、自己嫌悪に陥らないこと。

3.日頃から、気分転換に励み、ストレスを溜めないようにすること。
子育ては何よりも大切ですが、その子育てをする自分自身も大切にすること。
胸を張って、気兼ねすることなく、子どもから離れる時間を持つこと。
自分のための、自分自身の時間も大切にすること。

4.疲労を蓄積させないこと。
疲れたり嫌になったりしたら、積極的に休むこと、手を抜くこと。
頼めるものは、遠慮することなく、人(家族や親・兄弟、行政・サービス会社)に頼むこと。

5.自分の性格をよく知り、自分の性格を愛すること。
テキトー、いい加減も大切にし、自分の中から完璧主義を捨てるようにすること。

6.カウンセリングを受けること。
話をゆっくり聴いてもらうこと。自分を見つめること。自分を癒すこと。

以上です。
痛ましい児童虐待の事件がひとつでも減ることを祈って、終わりにしたいと思います。
最後までお読みくださって、どうもありがとうございました。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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