「金正恩は叔父の首を斬り、遺体を見せびらかした」 トランプ氏、注目の暴露本「怒り」で明かす
「金は私にすべてを話したんだよ。彼は叔父を殺し、遺体を階段(北朝鮮の高官が使う建物の階段のこと)に置いたんだ。首は斬られて、頭は胸の上に置かれた」
AFP通信によると、トランプ氏は、9月15日発売の暴露本「RAGE(怒り)」の著者であるワシントン・ポスト紙の調査ジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏のインタビューに対し、そう話したという。
本当なら、金氏はトランプ氏に“叔父の斬首”について告白したことになる。
叔父とは、2013年12月に、国家転覆陰謀罪のために特別軍事裁判で死刑宣告を受け、粛清された金委員長の叔父にあたる張成沢(チャン・ソンテク)氏のことだ。
北朝鮮は張氏がどう粛清されたかは公式に発表していないが、高射砲が使われたいう話は出ていた。しかし、張氏の斬首について言及されたのはこれが初めてのことだという。
なぜトランプ氏はウッドワード氏に斬首話をしたのか?
金氏がそんな話までしてくれるほど、自身と金氏はブロマンス関係(男性同士の強い友情)で結ばれていることを自慢したかったからだろうか?
実際、同著では、金氏からトランプ氏に送られた書簡も明らかにされている。両氏は少なくとも27通もの書簡を交換したという。
その中には、金氏のおべっかともいえる内容もあるようだ。例えば、金氏がトランプ氏に送ったある書簡には、韓国の非武装地帯でトランプ氏と握手した歴史的会合について「全世界が大きな関心を持って見守る中、美しく神聖な場所で閣下の手を固く握った歴史的瞬間」と記されていたり、別の書簡には「深く特別な友情は、北朝鮮とアメリカの間で魔法の力となり、発展をもたらす過程で直面するすべての障害を取り払うだろう」などと記されていたりするという。
書簡をやりとりしていたのは事実としても、嘘の数を更新し続けているトランプ氏のこと、金氏が本当に斬首話をしたのかはわからない。
そのため、斬首話については、米ニュースサイト「デイリー・ビースト」で、専門家が様々な考察をしている。
「金氏がトランプ氏にそんな話をしたとは思えない」という声もあるし、「トランプ氏の作り話や誇張話ではないか」という指摘もある。
「トランプ氏は、金氏との関係が良好なことや金氏に信頼されていることの証明にもなる斬首話をすることで、ウッドワード氏に印象づけようとしたのではないか」という見方もある。
逆に、金氏の側からすると、トランプ氏に気に入られるために斬首話をしたのではないかという指摘もある。金氏は、トランプ氏が権力というものに熱狂していることを熟知しており、斬首話をすることで自身は叔父さえ斬首するほど権力があることを誇示したというのだ。
また、金氏はトランプ氏と特別な関係を作るために、話をスピンさせたのではないかという見方もある。
北朝鮮はめったに悪行を認めないが、事態をドラマティックに好転させたい時は例外的だという。金氏は非常事態から脱するためには、トランプ氏との交渉を成立させる必要があると考え、信頼関係構築のために斬首話をしたのかもしれないという指摘もある。
いずれにせよ、自画自賛の多いトランプ氏のこと、自分は金氏から「閣下」と慕われ、斬首話まで告白されるほど偉大なのだとウッドワード氏に自慢したかったのだろう。それだけ、金氏のおべっかや斬首話はトランプ氏の虚栄心を満たしていたのかもしれない。金氏はトランプ氏の性格をよく読んでいたといえる。
しかし、現状、トランプ氏は虚栄心が満たされただけで終わっている状況だ。本来の目的である北朝鮮の非核化は全然進んでいない。それどころか、北朝鮮はいまだ核開発を続けている。
国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが、8月に出した報告書によると、北朝鮮は高濃縮ウランの生産や実験用軽水炉建設の継続を含め、核計画を続けており、弾道ミサイルに搭載可能な核兵器の小型化を「恐らく実現した」という。
結局のところ、トランプ氏は、金氏にバカにされてしまったということか?