ナザレで28メートル超の波乗り、世界記録か
江戸時代、清水の舞台から飛び降りた人は234人、そのうち助かったのは8割強、そんな話があります。一世一代の決断の比喩ともなっている清水寺の舞台の高さは、地上から約12メートルです。
今年、その倍の高さの波から滑り降りたサーファーが、世界記録を打ち立てたのではないかと囁かれています。
その波の高さは28.57メートルで、38歳のドイツ人サーファー、セバスチャン・シュトイトナーさんが2024年2月24日に成功しました。
その時の様子が下の映像です。
海は山のように盛り上がり、その上で滑るシュトイトナーさんはまるで点のように小さく映っています。
いつもは多くのサーファーがナザレの波に乗って競り合うものの、この日ばかりは戦いに挑んだのは2人だけだったといいますから、それほど危険極まりない状況だったことが分かります。
この記録が正式に認定されれば、シュトイトナーさんは自身が2020年10月に打ち立てた26.21メートルの記録を2メートル超も塗り替えることになります。
洋上ドローン
この朗報を嬉々として伝えたのが、あの高級車の代名詞ポルシェ社でした。波高の測定にポルシェ社のドローンが使われたからです。
一波一波の波高の観測は相当難しい作業ですが、ポルシェ社の技術を用いたドローンが、最高のアングルで空中から波を測っていたというわけです。
大波のワケ
大波の原因は何でしょう。ナザレの地理的要因と、当時の気象条件が関係していています。
ナザレは大西洋の東端に面しているため、大西洋上を何千キロも移動した大きなうねりがやってきます。
そのうえ沖合にはヨーロッパ最大の深さ5,000メートルの海底峡谷があります。うねりが岸に向かって進むと、それが海中の峡谷を通って集められ、増幅され、岸近くで規格外の超巨大な波を作り出すのです。
世界には著名なビッグウェーブのサーフスポットが複数ありますが、多くの世界記録はナザレで作られています。女性の乗った波の世界記録も、カイトサーファーが乗った波の世界記録も、このナザレで生まれています。
そうした地理的な要因に加え、世界記録の可能性のある28メートルの波が起きた日には、ドロテアと名の付いた強い低気圧が接近していました。
温暖化で大きくなる波
近年海水温が上がり、海面水位が上がっていることはよく聞かれますが、その実、波の方も高くなっています。たとえばカリフォルニアの海岸における波の高さは、過去半世紀で30センチも高くなっているという研究もあります。
波が増すことで沿岸での洪水や海岸の浸食といった悩ましい問題が生じる一方で、波力発電などへの期待も高まるかもしれません。
ナザレの海もよりいっそう巨大波の現れるスポットとなるのでしょうか。