知的障害の被告女性に女児遺棄で有罪判決:障害者と犯罪と私たちからの支援
<知的障害者でも犯罪者は犯罪者。しかし、私たちの支援で、悲劇を防ぐことはできるはず。>
■赤ん坊をトイレに生み落とし遺棄 した軽度知的障害の被告に有罪判決
被告は罪を犯したとして、有罪判決が出ました。ただし、「適切な対応を取るのが難しく、周囲から十分な支援を受けられなかった面もある」として、執行猶予となりました。
■罪を犯す障害者
知的障害者や精神疾患があるからといって、犯罪者なるわけではありません。知的な障害があっても、順法意識がとても高く、社会に適応している人もたくさんいます。
しかしその一方、刑務所に入っている人の4人に1人には知的障害があるとも言われています。
ドラマに出てくる犯罪者は、しばしば社会的地位が高く、巧みな犯罪計画を練りますが、実際の受刑者たちは違います。
■累犯障害者
私たちが目をつぶっていたこの問題に光を当てたのが、元衆院議員である山本譲司氏の著作「累犯障害者」でした(2009年、新潮文庫)。
この本の中には、犯行発覚の2001年当時「レッサーパンダ帽の男」と呼ばれた、女子短大生刺殺事件の加害者なども登場します。
被害は極めて深刻です。事件報道の当初は、血も涙もない極悪人として報道されたように思います。しかし、彼には知的障害と発達障害がありました。
軽微な犯罪を繰り返し、前科もあり、頼りになる支援者もいないまま、女性に馬鹿にされたと誤解した末の犯行でした。この事件では、障害はあるものの完全責任能力があると判断され、無期懲役の判決がでました。
障害があっても、犯罪者は犯罪者です。責任能力があれば、制裁を受けるべきです。しかし、もしも大きな犯罪を犯す前に、障害者として適切な支援を受けていれば、悲劇は防げていたかもしれません。
■弱者としての犯罪者
鑑別所、少年院、少年刑務所、刑務所。それぞれ、訪問したことがあります。所内には、国立大学を卒業した人もいますが、読み書きも満足にできない人もいます。
障害の問題と恵まれない環境の問題が絡んで、適切な支援を受けないままに人生を送ってきた人達が大勢います。
生活保護も、労災も、理解していない人がいます。言葉は知っていても、どのように手続きをしたら良いかがわかりません。手伝ってくれる人もいません。
一生懸命働いていたのに、雇い主に良いように扱われ、労働者としての権利も守られず、貧困の中で犯罪を繰り返してきた人もいます。
刑務所だけが安住の地だと言う人もいます。
■私たちからの支援を
障害があっても、人間関係が上手で、人に好かれやすく、また家族環境に恵まれている人たちもいます。
知的障害者の親たちらによって作られた「手をつなぐ育成会」の方々とお話しすると、本当に素晴らしい人たちだと思います。
自分の子供たちの働く場を作るために、親たちが奔走し、地域に作業所を作るような人たちもいます。各地域の、全国の障害を持った人たちのために、日々奮闘しています。
知的障害者による「スペシャルオリンピックス」に参加する選手や家族たちも、素晴らしい人たちです。
<スペシャルオリンピックス:And you?:知的障害者のスポーツ大会、そしてあなたは>
けれども、このような環境に恵まれていない人たちもいます。
国は現在、刑務所などの矯正施設から退所したものの、障害や高齢のために生活が困難な人たちを福祉支援につなげるための「地域生活定着支援センター」を、全国各地で設置し始めています。
少しずつ、改善は進んでいます。しかし、すべてを法律や行政でまかなうことはできません。私たち一人ひとりの支援が必要ではないでしょうか。
障害者を支援し、障害者を支援する人々を支援したいと思います。
犯罪者を安易にかばうことはできません。被害者は苦しんでいます。しかし、孤立している障害者を支援することが、犯罪防止になり、被害防止にもなることでしょう。
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