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早慶戦で殊勲の佐藤健次、ワールドカップフランス大会での日本代表入り諦めない【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
会見中の佐藤(筆者撮影)

 関東大学対抗戦Aの早稲田大学対慶應義塾大学が、11月23日、東京・秩父宮ラグビー場で「早慶戦100周年」と銘打ちおこなわれ、早稲田大学が19―13で勝った。

 相手のロングキック、ハイパントに苦しんだ前半こそ0―10とリードされたが、キックの種類や接点での姿勢を修正した後半に逆転した。

 プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたのは、早稲田大学のフッカーで2年の佐藤健次。ラインアウトからのモールを経てのトライを2本、記録していた。

「(試合中の)修正力は、今後に繋がる」

 試合後は記者会見に登壇し、その後のミックスゾーンでも談話を残している。桐蔭学園高校時代に主将として全国大会2連覇を成し遂げた佐藤は、1年時までナンバーエイトでプレーも将来の選択肢を見越してフッカーに転じている。

 身長177センチ、体重109センチのサイズでスピード、パワーを有し、防御をかわしながら前に出る技能も持ち味とする。

 さかのぼって6日。埼玉・熊谷ラグビー場で帝京大学に17―49で敗れた。昨季、大学日本一に輝いた巨躯ぞろいのチームに、フッカーの見せ場であるスクラムでも苦しんでいた。

 対面で3年生の江良颯が3トライを決めるなど活躍したことについて、帝京大学戦直後の佐藤はこう語っていた。

「江良選手は大学で一番いいフッカーだと思っているので、きょうは江良選手に勝って、チームを勝たせる選手になると思って試合に臨んだんですけど…。結果的にモールからのトライ、フィールドのトライ、ひとつひとつのコリジョン(衝突)のところ、アタック、ディフェンス、スクラムワークと、まだまだ遠い存在だとこの試合でわかった。いままでに満足していたわけではないですけど、自分が思っているより、まだまだ先のところにいたので、チームとしてもそうですけど、個人としても気持ちを入れ替えて…。いままでやってきたことがゼロにはならないので、新しい自分の強み、修正点を見つけ、今年中には対等かそれ以上になれればと思います」

 かくして迎えた慶應義塾大学戦を経て、悔しかった思いを肥やしにしている旨を強調した。

 以下、共同会見およびミックスゾーンでの一問一答の一部(編集箇所あり)。

——帝京大学戦。改めて。

「悔しかったです! 負けず嫌いなんで」

――同級生で帝京大学の青木恵斗選手は、試合後、声をかけなかったと。

「僕、そういうの、すぐ顔に出ちゃうんで。来たら普通に『強すぎ』とか言うんですけど。ただ、この帝京大戦後の(冬の大学選手権決勝までの)9週間、僕は変わるんだと。フォワードでミーティングをした時も言いました。

(ミーティングは帝京大戦後の練習再開後)夜9時くらいから始めて、12時超えるくらいまで。本音で話し合おう、上っ面(の話)はいいからと。ここで、フォワードのなかでワンパックになれたと思います。あのミーティングをやったことで、いいフォワードになった。フォワードが変われば、チームが変わる。接点ひとつひとつで引いちゃいけない、と。

『僕はこの9週間、全部このチームに賭けるから、皆も賭けて。ここで変われなかったら2年生はあと2年間、3年生はあと1年間、1年生はあと3年間、ずっとがんばれん。ここは、僕たちが変わるチャンスだから』

自分たちのなかで覚悟を決めてやったのはよかったと思います。

 やはり、(帝京大学に)よくない負け方をしてしまって…。僕のなかでは9週間、チームで一番、練習の雰囲気づくりにこだわると決めました。練習中に声を出しますし、ただひとりが喋るんじゃなく、全員が巻き込みながら雰囲気を作ろうとフォーカスしていて。それはきょうのアップでもできたと思っていて。試合中もそう意識できました。スキル的なところというより、チームの柱となるように、声でチームのレベルアップにつながるように取り組んでいました。

 何がチームに足りていないか、と考えた時に…。

 吉村紘さん(副将)、相良昌彦さん(主将)、岡﨑颯馬さんといった喋れる人が喋るというチームで、その3人がうまく言ったら乗るのはうまい。ただ、しんどくなった時に全員がシュンとなってしまうところがあった。それならば、練習中から全員を巻き込んでやりやすい雰囲気を作ったほうが『荒ぶる』(早稲田大学が日本一になった時のみ熱唱する)を取るのに近づけると思ったので、そこを意識しています」

——新ポジションでの手応えは。

「フッカーになるために(必要な)体重を増やしても走力的にも身体のキレ的に1年生のころと変わらずにできている。そこで他のフッカーと差別化していきたい。モールの後ろからのピール(ボールを持って飛び出す動き)は8番(ナンバーエイト)にはなかったことなので、楽しめています。ただ、スクラム、ラインアウトのスキルの向上は、これから上に行くにつれてさらに必要。今日の結果を1回、忘れて、反省点を修正したいです。

 フッカーとしてのフィールドワークのところで、帝京大学戦前に大田尾さんと2人で話す時間があって。その内容を意識しているというか、準備で心掛けていたところです。

 アタックでは細かいフットワークのところ。ディフェンスでは僕のテーマでもある、アタック、ディフェンスともに立っている時間を長くする、ということを(言われた)。

 アタックであれば『相手が3枚でタックルに来ているのに、僕が立っている』など、無暗に寝る時間を少なくするというヒントをもらった。それでディフェンスがしやすくなったし、少し余裕ができてアタックができている。2人で話す時間が有意義だったと思います」

 収穫と課題を可視化している。成長への意欲が際立つ青年は、早期の日本代表入りも目指している。2023年のワールドカップフランス大会を目指す現体制の日本代表は、大学生の招聘には消極的。それでも、大学生が立候補してはいけないわけではない。

 佐藤は言う。

「日本代表の正フッカーを目指している。(現代表が)大学の試合を観ているかはわからないですけど、アピールしていきたい。(この秋)代表の選考を辞退された堀江翔太さん(ワールドカップ3大会連続出場中)は目指さなきゃいけない存在ですし、僕自身、フッカーのスキルももっと磨いていかなきゃいけない。海外では19、20歳で代表に入る選手は普通にいる。そういう選手にも負けないように頑張っていけたらいいなと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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