エルニーニョ現象の今年は、台風の発生数が平年より少ない
エルニーニョ現象
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域東部の海面水温が平年より0.5度以上高くなり、その状態が1年程度続く現象です。
逆に、同じ海域で海面水温が平年より0.5度以上低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生し、ともに、日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられています。
今年、令和5年(2023年)は、春まで2年半も続いていたラニーニャ現象が終わり、すぐにエルニーニョ現象が始まっています(図1)。
それも、平成26年(2014年)から平成28年(2016年)にかけて発生した非常に強いエルニーニョ現象(スーパーエルニーニョ現象)並みの、エルニーニョ現象となることが考えられています。
エルニーニョ現象が発生すると、偏西風が日本付近で北に蛇行し、暖かい空気が列島を覆いやすくなるため、暖冬になる傾向があります。
実際、8年前の2015年の冬は暖冬で、12月の新潟県湯沢町のスキー場は、草が生い茂ったゲレンデとなっていました。
気象庁が10月24日に発表した3か月予報では、寒気の影響が弱いため、北日本の気温は平年並みか高く、東・西日本と沖縄・奄美では高いとなっています(図2)。
また、降水量は、低気圧などの影響を受けやすいため、東日本太平洋側と西日本では平年並みか多い予報となっています。
また、雪の降る量も、雪国を中心に平年と比べて少ない予想となっています。
台風は去年と今年で様変わり
エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、世界中の異常な天候の要因となるだけでなく、台風の発生数や発生海域が変わるとされています。
気象庁ホームページでは、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象と台風との関係は表のようにまとめています(表1)。
昨年、令和4年(2022年)はラニーニャ現象の最中でしたが、台風の発生数はほぼ平年並みの25個で、発生位置は北西にずれて発生していました(図3)。
このため、日本近海で発生する台風が多くなり、台風が発生するとすぐに日本に影響したということが多々ありました。
エルニーニョ現象が発生した令和5年(2023年)は、現時点までに台風は16個ですが、発生位置は平年より南東にずれて発生していそうです(図4)。
平年であれば10月末までに21~22個発生していますので、今年は台風の発生数が少ないということができます(表2)。
そして、今年は台風接近数も、台風上陸数も少ない年ということができそうです。
台風の発生が少ない年
気象庁は、昭和26年(1951年)以降の台風について統計をとっていますが、それによると、10月末までで一番少なかったのは平成2年(2010年)の14個です(表3)。
現在、日本の南海上には、台風のタマゴである熱帯低気圧がなく、その熱帯低気圧のもととなる積乱雲の塊もありません(タイトル画像)。
このため、すぐに台風が発生する可能性が小さく、令和5年(2023年)は10月までの台風発生数が16個のままで、昭和58年(1983年)などと並んで、2位タイの少なさとなりそうです。
また、昭和26年(1951年)以降に、11月から12月に発生した台風の平均は3.5個、一番少ないのは、平成22年(2010年)の0個、一番多いのが令和元年(2019年)などの7個です(図5)。
仮に、11月~12月の台風発生数が過去最多の7個の場合でも、令和5年(2023年)の台風発生数は23個と、平年より少なくなります。
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。
図1、図3、図4、図5、表1、表3の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図2、表2の出典:気象庁ホームページ。